はじめに
「もう、この痛みと一生付き合っていくしかないんですね…」
私の治療院のベッドで、長年腰痛に苦しむ患者さんが、諦めたようにそう呟きました。
その言葉は、治療家である私の胸に、鋭い棘のように突き刺さりました。当時の私は、最高の治療技術を手に入れた、という自負があったからです。
柔道整復師、鍼灸師として独立して以来、私は、もっと効果的に痛みを取り除ける治療法はないかと、全国各地のセミナーに足を運び、何百万円という自己投資を続けてきました。患者さんの期待に応えたい、一人でも多くの人を痛みから解放したい。その一心で、休日を返上して学び続ける日々でした。
そして、ついに私は、これ以上ないと思えるほどの、衝撃的な施術法に出会うことができたのです。
それは「活法(かっぽう)」。柔術の裏技として、日本古来より受け継がれてきた伝説的な回復術でした。
活法は、単なるマッサージや整体とは次元が違います。そこには、人間科学とでも言うべき、深く精緻な学理と術理がありました。体の構造、神経の働き、さらには心の状態までをも考慮に入れ、最小限の刺激で、最大限の変化を引き出す。これまで手も足も出なかったような難しい症状でさえ、劇的に改善させることが可能になったのです。
私は夢中になりました。これで、もうどんな痛みも怖くない。どんな患者さんも救える。そう確信しました。
活法の理論の一つに、「脳の記憶」という考え方があります。
人間の体には、常に安定した状態を保とうとする働きがあります。そして、その働きは肉体だけでなく、「記憶」にも作用します。
どういうことか。
例えば、悪い姿勢や体の歪みが長く続くと、脳は次第にその「不調な状態」を「これが普通の状態だ」と記憶してしまうのです。一度そうなってしまうと、いくら外からマッサージをしても、矯正をしても、脳は元の「不調な状態」に体を戻そうとします。これが、痛みが再発する大きな原因の一つだったのです。
活法は、この脳の「勘違い」を解き放つことができます。
誤解を恐れずに言えば、「脳のリセット療法」とでも言うべきアプローチです。
パソコンやスマートフォンが、原因不明のバグでうまく動かなくなった時、再起動やリセットをかけると、また正常に動き出すことがありますよね。人間の体も全く同じで、この脳の勘違いをリセットしてあげることで、本来持っている正しい体の働きを取り戻すことができるのです。
この技術を手に入れたことで、私の治療は飛躍的に進化しました。「先生、魔法みたいだ!」「あんなに長年苦しんだ痛みが嘘のようになくなった!」と、患者さんから驚きと喜びの声をいただくことが、何よりのやりがいでした。
しかし、最高の武器を手に入れたはずの私を、新たな、そしてより深い壁が待ち受けていました。
あれほど劇的に改善したはずの患者さんが、数週間後、あるいは数日後には、また同じ症状を訴えて私の前に現れるのです。
「先生のところに来ると本当に楽になるんです。でも、仕事が忙しくなったり、疲れが溜まったりすると、すぐに元に戻ってしまう。私の体、もうダメなんですかね…」
活法をもってしても、また「もぐら叩き」が始まってしまったのです。
一体、何が足りないんだ?
脳のリセットは、確かにできている。しかし、なぜまた「不調な状態」に戻ってしまうのか。
その答えは、患者さん自身の「生活」の中にありました。
どれだけ私が完璧に体をリセットしても、患者さんが治療院のドアを一歩出れば、そこには体を歪ませ、脳に不調を記憶させてしまう「原因」が溢れているのです。
長時間同じ姿勢でいるデスクワーク。体を冷やす食生活。睡眠不足。ストレス。運動不足…。
これらの「土台」が変わらない限り、いくら優れた治療を施しても、それは、穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるようなものだったのです。
私は、ようやく気づきました。
真の根本治療とは、治療院のベッドの上だけで完結するものではない。患者さん一人ひとりが、自らの生活の中で「体を壊す習慣」を「体を整える習慣」に変えていくこと。そのサポートまですることこそが、治療家としての私の本当の使命なのだと。
そんな葛藤の最中に、私の人生を根底から揺るがす出来事が、立て続けに起こりました。
家族のがんが教えてくれた「予防」という視点
ある日、父が胃がんの告知を受けました。
治療家として、私はまたしても無力感を突きつけられました。
「父さんの体なら、私が何とかできるかもしれない」
そんな淡い期待は、すぐに打ち砕かれました。私は持てる知識と技術を総動員し、西洋医学ではカバーしきれない部分を東洋医学や活法で補おうと、必死で父の治療にあたりました。
しかし、がんは私の知識をあざ笑うかのように、日に日に活力を失っていく。父の姿を見るたびに、私の心は張り裂けそうでした。
一番近くにいる家族の健康さえ守れない。そんな私に、患者さんの体を治す資格などあるのだろうか。悔しさと、絶望と、自分の無力さに対する怒りが、ぐちゃぐちゃになって胸に渦巻きました。
幸いにも、父は腕利きの外科医による手術が成功し、一命をとりとめました。しかし、私の試練は終わりませんでした。数年後、今度は母に大腸がんが見つかったのです。
またか。なぜ、私の家族ばかりが。
二度にわたる家族のがん闘病は、私に治療家として、一人の人間として、決定的な気づきを与えてくれました。
「痛みや症状が出てから治す」のでは、もう遅いのではないか?
「もぐら叩き」のような治療を繰り返している間に、体の中ではもっと深刻な問題が進行しているのではないか?
本当の意味で人を救うということは、そもそも「病気にならない体」をつくる手伝いをすることではないのか?
この二つの大きな悲しみと絶望が、私の治療家としての人生を180度変える、大きな転換点となったのです。
「カラダ適正化」こそが、人生の質を決める
私は接骨院・鍼灸院の代表として17年、延べ8万人以上の方々の体と向き合ってきました。その中で、ある“事実”が、人生や仕事におけるパフォーマンスに、そして何より「幸福感」に大きく関係していることに気づきました。
その事実とは、「慢性的な体の不調」です。
実は、驚くべきことに、現代の日本人の多くが、何らかの体調不良を抱えながら生きています。2016年にOECD(経済協力開発機構)が行った調査では、「自分は健康だ」と自信を持って答えられた日本人は、わずか3人に1人。これは、先進35カ国の中で、ワースト3位という衝撃的な結果でした。つまり、日本人の約7割が、体のどこかに不調を感じているということなのです。
・いつも肩が凝っていて、ガチガチだ
・長年の腰痛が、何をしても治らない
・ぐっすり眠ったはずなのに、朝から疲れがとれない
・若い頃に比べて、明らかに体力が落ちた
・寝つきが悪く、夜中に何度も目が覚める
・日中、ずっと体が重くてダルい
こうした症状のせいで、「やる気が起きない」「集中力が続かない」「新しいことに挑戦する気力がない」…そう感じている方は、決して少なくないはずです。
「病気」と診断されるほどではないけれど、確実に日々のパフォーマンスを蝕み、人生の輝きを奪っていく、静かなる侵略者。それが「慢性的な不調」の正体です。この気の重くなるような現実が、先ほどの統計データに表れているのです。
こうした現状を、私は治療の現場で毎日、目の当たりにしてきました。そして、父と母の経験を通じて、この問題を放置することの恐ろしさを、誰よりも痛感しています。
だからこそ、私は声を大にして言いたいのです。
「病気になってからでは遅い。自分の体は、自分で守る時代だ」と。
この本でお伝えしていくのは、そのための具体的な方法論です。私はそれを「カラダ適正化」と呼んでいます。
カラダ適正化とは、科学的な知見と、古来からの知恵に基づき、自分自身の体を深く理解し、食事・運動・生活習慣を最適化することで、肉体・精神・頭脳のパフォーマンスを最大限に引き出すためのアプローチです。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、心配はいりません。
これは、一部の特別な人だけができるものではなく、誰もが今日から始められる、人生を最高に楽しむための「体の使い方マニュアル」なのです。
あなたは、どちらの未来を選びますか?
ここで、少し考えてみてください。いわば、究極の選択です。
【選択肢1】
なんとなく続く不調を放置し、やがて何らかの病気にかかる。高額な医療費を払い続けながら、痛みや不安に怯える日々。パフォーマンスは下がり続け、やりたいこともできなくなる、心身ともに不自由な未来。
【選択肢2】
今、この瞬間から、自分の体に意識を向け、少しだけ時間とお金を「未来の健康」のために投資する。自分にとっての「健康の正解」を見つけ出し、病気とは無縁で、心身ともにエネルギーに満ちあふれた、ハイパフォーマンスな未来。
当然、「選択肢2」の生き方を選びたいですよね。
でも、現実には、多くの人が無意識のうちに「選択肢1」への道を歩んでしまっているのではないでしょうか。
「人生100年時代」と言われますが、「平均寿命」と「健康寿命」はまったくの別物です。健康に生きられないのなら、ただ長生きすることに、どれほどの意味があるでしょう。
日本の医療費は年々増え続け、いまや40兆円を超えています。国民1人当たりに換算すると、年間で約33万円。75歳以上では、なんと年間約94万円もの医療費がかかっているのです。不健康な人が増えれば増えるほど、儲かる業界がある。そんな悲しい構造も、この現状を後押ししているのかもしれません。
ですが、私たちの人生は、そのためにあるのではありません。
ここで、みなさんに知っておいてほしい、一つの希望があります。それは、現代において「老化・肥満・病気」の多くは、予防可能だということです。
高血圧、糖尿病、脂質異常症といった「生活習慣病」は、その名の通り、日々の習慣を見直すことで防ぐことができます。日本人の2人に1人がかかると言われる「がん」でさえ、今や「運命的に避けられない病」ではなく、「日々の心がけ次第でリスクを下げられる病気」として認識され始めています。
ほんの少しの意識と実践を怠ったために、将来、家族に私のような辛い思いをさせたり、自分自身が苦しんだりするのは、あまりにも悲しいことではないでしょうか。
私の父と母は、幸いにも今、元気に暮らしてくれています。しかし、私はもう二度と、あんな思いはしたくない。そして、私が診ている患者さんや、この本を手に取ってくださったあなたにも、絶対にしてほしくないのです。
自分の健康は、自分でつくる。
そのために、私は治療家として学び、実践し、体系化してきた「カラダ適正化」のすべてを、この一冊に注ぎ込みました。
カラダのコンディションが上がれば、心に余裕が生まれ、エネルギーが満ちてきます。新しいことに挑戦したくなる。もっと上を目指せる。常に自分の限界を突破しながら、最高のパフォーマンスを発揮する「最高の自分」になれるのです。
これは決して大げさな話ではありません。
心と体の健康こそが、すべての土台です。その土台さえしっかりしていれば、仕事も、家庭も、趣味も、すべてがより豊かで実りあるものになります。その結果として、病気の苦しみとは無縁の「健康長寿」が待っているのです。
人の体は、一人ひとり違います。だから、健康に対する答えも一つではありません。
この本は、いわば「カラダ適正化の事典」です。
すべてを完璧に実践する必要はありません。まずは、今あなたが抱えている不調に効きそうなもの、読んでみて「面白そうだな」と興味を持ったものから、気軽に試してみてください。
何よりも大切なのは、日々の意識と、それを「続けること」です。
そして、続けるために、難しすぎると感じたり、ストレスになったりするものは、遠慮なくスキップしてください。あなたが楽しみながら、無理なく続けられるものを取り入れてもらうだけで、体は必ず応えてくれます。
「健康」という、何物にも代えがたい資本を手に入れる。
それによって、常に最高のパフォーマンスを発揮し、大切な人たちと笑い合いながら、元気で長生きしていく。
この本が、あなたが「心から笑える自由なカラダ」を手に入れ、最高の人生を歩み出す、そのきっかけとなることを、心から願っています。
新保直人
第1部 なぜ「カラダ適正化」が必要なのか?
「健康なくして、本当の成功はない」という事実
私が治療家として独立し、日々たくさんの患者さんと向き合う中で、成功している経営者や、各分野で高いパフォーマンスを発揮している方々と接する機会が増えていきました。彼らと話していて気づくのは、驚くほど「健康」に対する意識が高い、ということです。
かつての日本では、「身を粉にして働くこと」が美徳とされ、睡眠時間を削り、家庭を犠牲にしてでも仕事に打ち込む姿が「成功者の象徴」のように語られていた時代がありました。しかし、本当にトップレベルで活躍し続けている人たちは、今やそんな考え方はしません。
「健康という土台なくして、真の成功はありえない」
彼らは、自分自身の心と体を最高の状態に保つことが、最高の仕事をするための最低条件だと知っているのです。自分を犠牲にしても、生産性は上がりません。たとえ一時的に成功できたとしても、それは長続きしない。本当の意味で生産性を上げ、永続的に成功し続けるためには、「自分の体の健康」という揺るぎない土台を築かなければならない。そんな意識が、もはや常識となっています。
もちろん、街を見渡せば、不健康な生活習慣を送っている人はたくさんいます。エナジードリンクをがぶ飲みして気合を入れ、夜遅くまで暴飲食を繰り返す。そんな働き方をしている人もいるでしょう。
しかし、私が知る限り、長期的に見て本当に「うまくいっている人」は、みな例外なく健康管理を徹底しています。彼らは、科学や最新のテクノロジーに対する情報感度が高く、それを自分の体で試す実践力にも優れています。
「これが体に良い」という情報や科学的根拠(エビデンス)を目にしたら、まずは自分の体で試してみる。ポジティブな変化が感じられれば続け、そうでなければすぐにやめて、また別の方法を試す。
この試行錯誤を繰り返しながら、自分だけの「健康の正解」を探り当て、肉体、精神、頭脳のパフォーマンスを常に最高の状態に保とうとする。
この一連のライフスタイルこそ、私が提唱する「カラダ適正化」なのです。
シリコンバレーやニューヨークといった流行の最先端を行く都市では、こうした「カラダ適正化」を実践する人々が急増していると言います。彼らは、自分の体をハッキングするかのように、科学的アプローチで心身をアップグレードしているのです。
これは、遠い海外の話ではありません。私の治療院に来られる患者さんの中にも、この「健康格差」はハッキリと表れています。健康に投資し、常にエネルギッシュな方もいれば、慢性的な不調に悩まされ、仕事もプライベートも楽しめずにいる方もいる。その差は、年齢とともに、ますます残酷なまでに開いていくのです。
私を襲った燃え尽き症候群
偉そうなことを言っている私ですが、かつては健康を犠牲にして働く「負け組」の典型でした。
治療家として独立した当初、私は文字通り馬車馬のように働きました。「一日でも早く、一人前の治療家として認められたい」「一人でも多くの患者さんを救いたい」その一心で、朝から晩まで身を粉にして働きました。
しかし、その代償は、静かに、しかし確実に私の体を蝕んでいました。
一番の悩みは、ひどい睡眠障害でした。夜、ベッドに入ってもなかなか寝付けず、ようやく眠りについても浅い眠りを繰り返し、夜中に何度も目が覚めてしまう。そして朝は、鉛のように重い体を引きずるようにして起き上がる。そんな毎日でした。
夜になると、得体の知れない疲労感が全身を襲い、ソファに倒れ込むようにして動けなくなることもしばしばでした。加えて、まだ30代前半だというのに白髪が目立ち始め、顔には常に吹き出ものができている。健康診断の結果も、毎年「要観察」のオンパレード。散々な状態でした。
患者さんの前ではエネルギッシュに振る舞い、痛みを取り除くことに全力を注いでいるつもりでした。しかし、今思えば、当時の私を支えていたのは、健やかなエネルギーではなく、「なにくそ!」という反骨精神や、「絶対に治してやる」という意地だけだったように思います。
おかげさまで、仕事は少しずつ軌道に乗り始めました。「質の高い治療院をつくる」という、かねてからの夢は叶えられましたが、私の心と体は、何とも言えない疲労感や倦怠感に、ずっと支配されていました。
今、専門的な視点で振り返ると、あれは「燃え尽き症候群(バーンアウト)」に近い状態だったのでしょう。そして、その根底には、副腎から分泌されるストレス対抗ホルモン「コルチゾール」が枯渇してしまう「副腎疲労」があったのだと思います。(これについては、第3部で詳しく解説します)
「こんな不調を抱えたままでは、自分の可能性を最大限に生かせているとは言えないのではないか?」
「どうすれば、この最悪のコンディションから抜け出して、もっと高いパフォーマンスを発揮できるのだろう?」
成功の階段を上っているはずなのに、私の頭の中は、そんな焦りと不安でいっぱいでした。
家族のがんが教えてくれた「病気になってからでは遅い」という真実
ちょうどその頃です。私の人生を根底から揺るがす出来事が、立て続けに起こりました。
「はじめに」でもお話しした、父の胃がん、そして母の大腸がんです。
父のがんが見つかったときには、治療家としての無力感に打ちひしがれながらも、私は必死で情報を探しました。藁にもすがる思いで、あらゆる情報を探りました。
その中で、ステージⅣのがんを克服した「がんサバイバー」と呼ばれる人たちの体験談に、いくつも出会いました。たった一つや二つではありません。何百という実例がそこにはありました。その事実は、暗闇の中に差し込んだ一筋の光のようでした。「人の体は、いつからでも変われるんだ」と、私は衝撃を受けました。
しかし、希望の光が見えた一方で、私は同時に、冷徹な現実も突きつけられました。
「病気になってからでは、打てる手が限られすぎる」
「何よりも『予防』が重要なんだ」
父は、幸運にも、担当医の先生の治療と、大学病院での手術が功を奏し、父は今も元気に暮らしています。
ですが、もし発見がもっと遅れていたら? もし腕の良い医師に出会えていなかったら? そう思うと、今でも背筋が凍る思いです。
そして、追い打ちをかけるように発覚した母の大腸がん。
二つの大きな経験を通して、「ハイパフォーマンスを維持するには、健康を意識し、実践することが不可欠だ」という私の信念は、揺るぎないものになりました。
そして、私はついに、自分自身の心と体に向き合い、「カラダ適正化」に本格的に取り組むことを決意したのです。
それは、私自身のパフォーマンスを上げるためだけではありませんでした。
もう二度と、家族のことであんな思いをしないために。
そして、私が治療家として得た知識と経験を、今度は母をはじめ、大切な家族のために役立てたい。そんな強い思いが、私を突き動かしたのです。
その甲斐あってか、母も私の勧める食事や生活習慣を素直に実践してくれ、70代後半になる今も、驚くほど元気に暮らしています。時には私と一緒に旅行に出かけ、仲間と元気に趣味を楽しむ。そんな母の姿を見ていると、人生の質(クオリティオブライフ)を左右するのは、実年齢よりも「体の健康度」なのだと、改めて痛感させられます。
あなたも、同窓会で久しぶりに会った友人が、めっきり老け込んでいてショックを受けた、なんて経験はありませんか?
今後、50歳、60歳、70歳と年齢を重ねるにつれて、この「健康度による人生の質の差」は、個人の間で歴然としたものになっていくでしょう。
何歳になっても、自分の意志で、やりたいことをやりたい時にできる。行きたい場所に行きたい時に行ける。そんな自由な肉体と、しなやかな精神、そしてクリアな頭脳を保つために。
私はこれからも、治療家として、そして一人の人間として、「カラダ適正化」を追求し続けていきたいと思っています。
誰もが「疲れ知らずのハイパフォーマー」になれる
「カラダ適正化」に取り組み始めた頃の私は、とにかく「体に良い」と聞いたものは、片っ端から試していました。動物性食品を一切とらないヴィーガンになってみたり、酵素ジュースだけで数日間過ごすファスティング(断食)をやってみたり、ヨガの合宿に参加してみたり、漢方を試したり、糖質を完全にカットするダイエットを実践したり……。
その中で、自分の体の状態を客観的なデータで知ることの重要性に気づき、第3部で紹介するような各種の生体検査を受けるようにもなりました。知れば知るほど、自分の体の課題が見えてきます。そして、細胞レベルで起こっている問題一つひとつに、まるでパズルを解くように対処していく。そんな感覚で、サプリメントや食事法を取り入れていきました。
このように、自分の体を使って様々な「ハック(工夫)」を実験するうちに、次第に私にとって最適な食習慣や生活習慣が、少しずつ形づくられていきました。
その結果、どうなったか。
あれほど私を悩ませていた、鉛のような疲れや倦怠感とは、完全に無縁の体になっていたのです。
例えば、呼吸法のおかげで体は驚くほど柔軟になり、かつては職業病だと諦めていた肩こりや腰痛といった体の痛みは、一切感じなくなりました。ここ数年は、風邪ひとつ引いていません。私が病院に行くのは、歯の定期検査くらいなものです。
見た目にも、明らかな変化が表れました。
出ていたお腹は引っ込み、ほどよく筋肉がつきました。以前は悩みの種だった吹き出ものも、今はまったくできなくなり、肌のツヤが良くなったと褒められることも増えました。
さらに、ポジティブな変化はメンタル面にも起こりました。
以前の私は、将来に対する「これからどうなるんだろう」「何かあったらどうしよう」という、根拠のない不安を常に抱えていました。そして、それを無理やり気合で抑え込んで、仕事のエネルギーに変えていたのです。
それが、いつの間にか、「どうにかなるだろう」「何かあっても、何とかしてやろう」「大丈夫だ」という、揺るぎない自信に変わっていました。不安を無理やり抑え込むストレスフルな状態から、不安そのものが消え去り、常に前向きな努力ができるノーストレスな状態へ。
だから今、私は物怖じせずに、色々な新しいことにチャレンジできます。
一言でいうと、心身と頭脳のエネルギーレベルが、別次元にまで底上げされた感じです。仕事もプライベートも、いまだかつてないほど充実していると、胸を張って言えます。
そんな私の今の目標は、「120歳まで、自分の足で歩き、自分の頭で考え、自分の人生を楽しみ尽くすこと」です。
決して冗談で言っているのではありません。
時代は、もはや老化に抗う「アンチエイジング」ではありません。科学の力で、年齢を逆行させる「リバースエイジング」へとシフトしつつあるのです。私自身が実感している効果や、世界の最新の研究を見ても、それは明らかです。
となれば、もしかしたら「寿命」という概念そのものが、未来にはなくなる日が来るのではないか。私は本気でそう思っています。
医療に革命を起こす「カラダ適正化」というムーブメント
本書の冒頭で、「カラダ適正化」とは、科学的な知見と古来からの知恵に基づき、自分自身の体を深く理解し、食事・運動・生活習慣を最適化することで、肉体・精神・頭脳のパフォーマンスを最大限に引き出すためのアプローチだとお伝えしました。
これは、言い換えれば、心身の健康を他人任せにせず、自分自身が主体となって、自分の体をつくり上げていくという、新しい生き方の提案です。
そのためには、ある程度の知識が必要です。ただ闇雲に「健康に良い」とされていることを試すのではなく、人間の体のメカニズムや栄養学に関する基礎知識に基づいて、自分で自分の体をマネジメントする。
そういう意味で、「カラダ適正化」は「自分で自分の健康をコントロールするための、実践的な生命科学」とも言えるでしょう。
かつて、コンピューターハッカーたちは、自宅のガレージで様々な技術革新を生み出し、世界を変えるソフトウェアをつくり出しました。彼らのエネルギッシュな好奇心と創造力、そして挑戦が、今のデジタル社会の礎を築きました。
それと同じことが、今まさに、ライフサイエンス(生命科学)の分野で起ころうとしています。
アメリカでは、科学の知識を身につけた人々が、自宅のキッチンやガレージで実験を行い、画期的な健康法を編み出し、自らの体でその効果を検証する、といったことが行われているそうです。
もちろん、そこまで専門的で挑戦的なことを、誰もができるわけではありません。
しかし、できる限り正しい知識を身につけ、科学的な根拠に基づいた方法を自分の体で試し、自分にとっての「健康の正解」を探っていくという形であれば、誰でも、今日からすぐに始められるはずです。
クオリティオブライフ(人生の質)を向上させるために、心身の健康を追い求める。そのために、必要最低限の生理学や栄養学の知識を身につけ、自らが得た情報を積極的に日常生活に取り入れる。
少し難しく聞こえたかもしれませんが、やることはシンプルです。
例えば、腸内環境を整えるために、少しだけ食生活を見直してみる。睡眠の重要性を理解し、ぐっすり眠れるための習慣を取り入れてみる。
こうして自分の肉体と精神と頭脳を最適化し、人生そのものをアップグレードしていく。その行いのすべてが、「カラダ適正化」なのです。
3つのアプローチで、健康の「自分だけの正解」を探る
「カラダ適正化」という言葉は、まだ聞き慣れないかもしれません。そこで、この本における「カラダ適正化」の定義を、もう少し具体的にお話ししておきたいと思います。私は、3つの重要なアプローチがあると考えています。
【カラダ適正化の定義1】
客観的なデータで「今の自分の体」を知り、戦略を立てる
人の体は千差万別です。あなたにとって良い方法が、必ずしも他の人にとっても良いとは限りません。
そこでまず重要になるのが、「今の自分の体の状態を、客観的に知る」ことです。
例えば、将来的な病気のリスクがわかるとされる「テロメア」(第2部で詳しく解説します)の長さはどれくらいか。どんな有害金属が体に溜まっているのか。生命を維持するために不可欠な栄養素のうち、今の自分には何が足りていないのか。
幸いなことに、現代では、自分の体内で「何が起こっているのか」を、データという目に見える形で把握できるようになってきています。これらの情報をもとに、どんな方法を取り入れるべきか、自らの意志で選び、戦略を立てることが、カラダ適正化の第一歩です。
【カラダ適正化の定義2】
科学的根拠(エビデンス)のある手法を取り入れる
第二の定義は、科学的根拠、つまり科学的な裏付けのある手法を取り入れるということです。
世の中に溢れる「健康法」の中には、科学的根拠に乏しい、昔からの言い伝えのようなものも少なくありません。もちろん、おばあちゃんの知恵袋的なものが全て悪いわけではありませんが、「カラダ適正化」では、それらとは一線を画します。
本書で紹介する方法は、化学実験、臨床実験、疫学調査などのデータによって、その有効性が検証されているものが中心です。そして、「科学的裏付けありき」ということは、常に最新の、信頼できる情報にアクセスしようと努める姿勢も大切になります。
【カラダ適正化の定義3】
「最高の自分」を目指し、パフォーマンスを最適化する
そもそも、人は何のために健康になるのでしょうか。
今ある病気や不調を治すため。将来の病気のリスクを減らすため。これらはもちろん非常に重要です。しかし、「カラダ適正化」が目指すのは、単に「病気ではない状態」ではありません。
カラダ適正化とは、心身の健康というアプローチから「最高の自分自身」を目指すことです。
様々な方法を取り入れることで、あなたが本来持っている力を最大限に発揮できるように心身をアップグレードし、仕事でもプライベートでも、最高のパフォーマンスを発揮し続ける。
最先端のテクノロジーや科学の知見を取り入れるのも、すべては「病気にならない」という守りのためだけではなく、人生そのものの質を向上させるという、攻めのためなのです。
なぜ、今すぐ「カラダ適正化」を始めるべきなのか?
「でも、日本では国民皆保険があるから、病気になっても安く治療してもらえるし、そこまでしなくても…」
そう思った方もいるかもしれません。確かに、アメリカのように医療費が原因で自己破産する、というケースは日本では稀でしょう。しかし、本当にそうでしょうか?
日本の医療制度も、決して盤石ではありません。
社会保険料は年々増加し、高齢者の医療費負担割合も引き上げられています。いつ、私たちが今よりもずっと高額な医療費を支払うことになるか、誰にもわかりません。
また、皆さんが加入している民間の医療保険。その掛け金は、いわば「将来、自分が病気になること」を前提に、毎月お金を払っているのと同じです。だとしたら、そもそも病気にならないように努力すれば、それは必要のない出費と言えるのではないでしょうか。
最近、「最もリターンの大きい投資は、自己投資である」とよく言われます。資格の勉強をする、スキルアップセミナーに参加する、本をたくさん読む。素晴らしい自己投資です。
しかし、それらの投資がいつ、どれくらいのリターンを生むかは、誰にもわかりません。明日かもしれないし、5年後かもしれない。
それに引き換え、「健康」に対する投資は、すぐに、そして確実にリターンを実感できます。
これからご紹介する方法の多くは、3週間も続ければ、何らかの変化が体に現れ始めます。そして、「自分には合わないな」と感じたら、すぐに別の方法を試すことができます。人は、結果が見えると続けたくなるものです。だから、健康への投資は、今すぐ始めやすく、かつ続けやすい、最も確実な自己投資なのです。
想像してみてください。
もし、医者から「1年後に重い病気で動けなくなります。でも、100万円払えば、100歳まで元気に生きられます」と言われたら、どうしますか?
きっと、多くの人が何としてでも100万円を工面しようとするはずです。
今から「カラダ適正化」にお金と時間を費やすのは、その100万円を、少しずつ分割で支払っていくようなものです。例えば、質の良い食事を摂るために、月の食費が数千円高くなったとしても、それは「将来の健康寿命」を買うための投資だと考えれば、決して高くはないはずです。
カラダ適正化とは、今のあなたのパフォーマンスと、将来のあなたの健康寿命を「買う」という行為なのです。
「はじめに」でも触れたように、日本人の約7割が、何らかの不調を抱えています。今すぐ死ぬわけではないけれど、絶好調とは程遠い。そんな「未病」の状態を放置することで、どれだけの可能性が失われていることか。
健康とは、「病気ではない状態」を指すのではありません。
健康とは、常に行動力があり、物事を前向きに考えられる、「心身ともにポジティブで、エネルギーに満ちあふれた状態」のことです。
「病気じゃないから大丈夫」ではありません。「何となく不調」というのは、病気ではないけれど、健康でもない。つまり、あなたのパフォーマンスが、本来あるべきレベルよりも確実に下がっている、ということなのです。
日本は世界有数の長寿国ですが、ただ長く生きればいいというものではありません。病気を抱え、痛みや不安とともに、病院通いをしながら生きる人生は、本当に幸せでしょうか。
健康でないことで、人生の充実度は、確実に、そして格段に下がってしまいます。
カラダ適正化によって、そんな未来を大きく変えられるとしたら。
これは、あなたにとって、決して縁遠い話ではないはずです。
さあ、「今、ここ」から始めよう
「カラダ適正化」は、単なる根拠のない健康法ではありません。古くから経験的に伝承されてきた「おばあちゃんの知恵」的なものとも違います。それは、臨床データや科学的知見に基づいた、極めて有益な「情報」なのです。
例えば、本書で紹介する各種の生体検査は、その最たるものでしょう。
血液や尿、唾液などを科学的に分析し、今の自分の体に何を補うべきか、あるいは何を排出するべきかを特定する。そして、専門家と相談の上で、足りないものは食事やサプリメントで補い、余計なものはデトックス(解毒)を促す。
その対策をしばらく続けて、再度、同じ検査を受けてビフォー&アフターを確認する。そこでまた新たな課題が見つかれば、さらに次の手を考える。
このように、科学的な情報をもとに、様々な方法を自分の体で試していくことで、あなただけの「健康の正解」を探っていく。このプロセスこそが、カラダ適正化の醍醐味です。
日本でも、少しずつ環境は変わりつつあります。意識さえすれば、オーガニックな食材や、添加物を使わない加工食品を手に入れることは、以前よりずっと簡単になりました。予防医学に力を入れるクリニックや、腕の良い治療家も増えています。
大切なのは、誰かが何かをしてくれるのを待つのではなく、あなた自身が「今、ここ」で、できることから始めることです。
私の目標は「120歳まで元気で長生きすること」ですが、あなたの目標は、もっと身近なもので構いません。
「朝、スッキリ目覚められるようになりたい」
「夕方まで集中力が続く体になりたい」
「長年の肩こりから解放されたい」
「子どもや孫と、元気に走り回って遊びたい」
どんな目標であれ、その達成のために「カラダ適正化」は、あなたの最も力強い味方になってくれるはずです。
第2部 健康寿命の鍵を握る「細胞」の秘密
すべての基本は「細胞の健康」にある
これから第3部で、肉体、精神、頭脳のパフォーマンスを最適化するための、45の具体的な「カラダ適正化」の方法をご紹介していきます。
その内容は、食生活の改善から、運動習慣、睡眠の質を高める方法まで、多岐にわたります。取り組み方も、得られるメリットも様々ですが、実は、そのすべてのメリットは、たった一つの言葉に集約されます。
それは、「細胞を健康にすること」です。
私たちの体は、約37兆個もの細胞が集まってできています。皮膚も、内臓も、筋肉も、骨も、脳も、すべては細胞という、目に見えないほど小さな「部品」の集合体なのです。
想像してみてください。精密な機械があったとして、その部品の一つひとつがサビついていたり、歪んでいたりしたら、その機械は正常に動くでしょうか? きっと、すぐに故障してしまうでしょう。
私たちの体も、それとまったく同じです。
一つひとつの細胞を元気に、ピカピカに保つこと。それが、体全体の健康、ひいては病気になりにくい体、疲れにくい体をつくるための、最も根本的なアプローチなのです。
そして近年、この細胞の中に、私たちの「生命に関する、ある重要な物質」が含まれていることが、研究によって明らかになってきました。その物質の状態が、「将来、どれくらい病気にかかりやすいか」や「どれくらい健康に長生きできるか」を、大きく左右しているというのです。
あなたの寿命を左右する「テロメア」とは?
「テロメア」という言葉を、聞いたことがあるでしょうか。
これが、先ほどお話しした「生命に関する、ある重要な物質」の正体です。
少しだけ、専門的な話にお付き合いください。
私たちの細胞の中には、「染色体」という、ヒモのような形をした物質があります。この染色体には、私たちの体の設計図である「遺伝子」が記録されています。
テロメアとは、この染色体の両端にあって、大切な遺伝子情報を守っている「保護キャップ」のようなものです。
靴ひもの両端についている、プラスチックのキャップを想像してもらうと、分かりやすいかもしれません。あのキャップがあるおかげで、靴ひもはほつれずに、その役割を果たすことができますよね。もしキャップが取れてしまったら、ひもはどんどんほつれて、ボロボロになってしまいます。
テロメアも、それと全く同じ役割を担っています。テロメアが、命の設計図である遺伝子を、様々なダメージから守ってくれているのです。
そして、このテロメアには、非常に重要な特徴があります。
それは、細胞が分裂するたびに、少しずつ短くなっていく、ということです。
私たちの体では、常に古い細胞が新しい細胞に入れ替わっています。そのたびに細胞は分裂を繰り返すのですが、その分裂の過程で、テロメアはまるでロウソクが燃えて短くなるように、少しずつ、少しずつ短くなっていきます。
そして、テロメアがある一定の長さまで短くなってしまうと、細胞はそれ以上分裂することができなくなります。これが、いわゆる「細胞の老化」です。細胞が新しくなれなくなれば、当然、私たちの体も老化していきます。
つまり、テロメアの長さは、私たちの「生物学的な年齢」や「寿命の回数券」のようなものだと言えるのです。生まれたときに一定の長さを持っているテロメアが、短くなり、尽きてしまったときが、生命の終わりを意味するのではないか、と研究者の間では考えられています。
テロメアを縮める「3つの大敵」から体を守れ
「細胞分裂のたびに短くなるなら、老化は避けられないじゃないか」
そう思われたかもしれません。確かに、加齢とともにテロメアが短くなるのは、ある程度は仕方のないことです。
しかし、問題は、私たちの日常生活の中に、このテロメアの短縮スピードを、恐ろしく加速させてしまう要因が潜んでいるということです。
つまり、同じ年齢の人でも、生活習慣によってテロメアの長さは全く異なり、それが「見た目の若々しさ」や「病気へのかかりやすさ」の差となって表れるのです。
テロメアを縮めてしまう「大敵」は、主に3つあるとされています。
この3つの敵から、いかに自分の体を守るか。それが、カラダ適正化の核であり、健康長寿を達成するための最大の鍵となります。
【大敵1】糖化(インスリン抵抗性)〜 細胞の「コゲつき」
一つ目の敵は、「糖化」です。これは、体の中で余った「糖」が、タンパク質と結びついて、AGEs(終末糖化産物)という悪玉物質に変化する現象のこと。よく「細胞のコゲ」と表現されます。
パンをトースターで焼くと、こんがりと茶色く焦げますよね。あれと同じようなことが、私たちの体の中でも起こっているのです。
糖化の直接的な引き金となるのが、血糖値の乱高下です。
とくに、精製された白砂糖や、白米、白いパンといった「白い炭水化物」をたくさん食べると、血糖値はジェットコースターのように急上昇します。すると、すい臓から「インスリン」というホルモンが大量に分泌され、今度は血糖値を急降下させます。
この乱高下が毎日繰り返されると、次第にインスリンが効きにくい体質になってしまいます。これを「インスリン抵抗性」と呼びます。インスリンが効かなくなると、血液中に常に糖がダブついた状態になり、全身で「糖化」が進んでしまうのです。
この糖化によって生まれたAGEsは、まるでベトベトした接着剤のように、全身の細胞にこびりつきます。皮膚のコラーゲンに付けばシミやシワ、たるみの原因になり、血管に付けば動脈硬化を、骨に付けば骨粗しょう症を引き起こします。そして、このAGEsが、テロメアを傷つけ、その短縮を早めてしまうのです。
ある衝撃的な研究データがあります。甘いジュースを毎日600ml(ペットボトル1本強)飲む人は、飲まない人に比べて、テロメアの長さで換算すると、なんと4.6年分も老化が進んでいることがわかったそうです。たかがジュース、と侮ってはいけません。糖の過剰摂取は、確実にあなたの寿命を削っているのです。
【大敵2】酸化(酸化ストレス)〜 細胞の「サビつき」
二つ目の敵は、「酸化」です。これは、体内で発生する「活性酸素」が細胞を傷つける現象のことで、「細胞のサビ」とも呼ばれます。
鉄が雨ざらしになると、サビてボロボロになりますよね。あれと同じことが、私たちの細胞にも起こります。
活性酸素は、私たちが呼吸で取り込んだ酸素を使ってエネルギーを作り出す際に、必ず発生する副産物です。適量であれば、体内に侵入した細菌を殺菌してくれるなど、良い働きもします。
しかし、過度なストレス、睡眠不足、喫煙、大気汚染、食品添加物など、現代人の生活は、この活性酸素を過剰に発生させる要因に満ちあふれています。体には本来、活性酸素を除去する機能(抗酸化作用)が備わっていますが、その処理能力を超えてしまうと、余った活性酸素が暴走し、細胞膜や遺伝子を片っ端から攻撃し始めます。
もちろん、その攻撃の矛先はテロメアにも向けられます。酸化によって傷つけられたテロメアは、その短縮スピードを速めてしまうのです。この「酸化」もまた、がんや動脈硬化、アルツハイマー病など、あらゆる病気や老化の根源と考えられています。
【大敵3】炎症 〜 細胞の「火事」
三つ目の敵は、「炎症」です。ケガをしたとき、その部分が赤く腫れて熱を持つことがありますよね。あれが「急性炎症」です。
しかし、もっと怖いのは、体の中でじわじわと、自覚症状なく広がり続ける「慢性炎症」です。これは「細胞の火事(ボヤ)」のようなもので、気づかないうちに全身の細胞を焼き尽くし、様々な病気の引き金となります。
実は、先ほどお話しした「糖化」と「酸化」も、この慢性炎症の原因となります。AGEsや活性酸素によって細胞が傷つけられると、そこから炎症を引き起こす物質が放出されるのです。
さらに厄介なことに、テロメアが短縮すること自体も、全身に炎症反応を引き起こすきっかけになってしまうことがわかっています。
つまり、
(糖化・酸化) → テロメア短縮 → (慢性炎症) → さらにテロメア短縮 → さらに慢性炎症…
という、恐ろしい負のスパイラルに陥ってしまうのです。
この悪循環を断ち切らない限り、老化と病気への道を、ただひたすら転がり落ちていくことになってしまいます。
テロメアを守るための、たった一つのシンプルな答え
糖化、酸化、炎症。
この恐ろしい「3つの大敵」から細胞とテロメアを守り、健康寿命を延ばすには、一体どうすればいいのでしょうか。
その答えは、驚くほどシンプルです。
それは、「食べるものを変えること」です。
私たちの体は、私たちが食べたものでできています。3つの大敵を招き入れるも、追い出すも、すべてはあなたの毎日の「選択」にかかっているのです。
具体的に、何をすればいいのか。基本的な考え方はこうです。
1.「3つの大敵を招き入れる食べ物」を、できるだけ避ける。
- 白砂糖や、それを使ったお菓子、ジュース類を断つ。
→ これだけで、血糖値の乱高下を防ぎ、「糖化」と「炎症」のリスクを大幅に減らせます。 - 白米、白いパン、うどん、パスタなどの「白い炭水化物」を食べすぎない。
→ これらも血糖値を急上昇させやすい「糖質の塊」です。完全に断つ必要はありませんが、「主食」という考え方を一度リセットし、量を減らす意識が大切です。
2.「3つの大敵を追い出してくれる食べ物」を、積極的に摂る。
- 色とりどりの野菜、きのこ類、海藻類をたっぷり食べる。
→ これらに含まれるビタミン、ミネラル、そして「フィトケミカル」と呼ばれる植物由来の成分には、強力な抗酸化作用があります。細胞をサビつきから守ってくれる、最強のディフェンス部隊です。 - 青魚(サバ、イワシ、サンマなど)、アマニ油、エゴマ油を摂る。
→ これらに豊富に含まれる「オメガ3系脂肪酸」には、体の中の火事を消してくれる、強力な抗炎症作用があります。 - 発酵食品(納豆、味噌、ぬか漬け、キムチなど)を食べる。
→ 腸内環境を整えることは、全身の炎症を抑え、免疫力を正常に保つために不可欠です。
いかがでしょうか。
「あれもダメ、これもダメ」と考えるのではなく、「何を減らし、何を増やすか」という視点で、日々の食事を見直してみる。
たったそれだけのことで、あなたの体の中では、テロメアを守るための戦いが、有利に進み始めるのです。
ある研究では、遺伝子操作で慢性炎症を起こしたマウスに、抗酸化作用や抗炎症作用のある物質を与えたところ、短くなっていたテロメアに回復が見られた、という報告もあります。
つまり、私たちの努力次第で、テロメアの短縮スピードを緩やかにし、場合によってはその長さを維持、回復させることさえ可能かもしれないのです。
自分のテロメア年齢、知ってみませんか?
ここまでテロメアの話を聞いて、「じゃあ、自分のテロメアの長さって、どれくらいなんだろう?」と気になった方もいるかもしれません。
実は、少し費用はかかりますが、簡単な血液検査で、あなたの「テロメア年齢(生物学的な年齢)」を知ることができます。
「テロメアテスト」で検索すると、検査を提供している医療機関が見つかるはずです。費用は数万円ほどかかりますが、自分の「寿命の回数券」が今どれくらい残っているのか、実年齢と比べて進んでいるのか、それとも若いのかを知ることは、今後のカラダ適正化を進める上で、非常に強力なモチベーションになります。
私自身も、数年前にこのテストを受けました。
当時、実年齢は37歳。結果は…「テロメア年齢38歳」。
たった1歳の差ですが、実年齢よりも老化が進んでいるという結果は、正直、ショックでした。しかし、この客観的なデータがあったからこそ、「本気で自分の体を変えなければ」と、腹を括ることができたのです。
このテロメアテストは、いわば「未来の健康診断」です。
病気になってから受ける検査ではなく、病気になる前に、自分の老化の進行度と、将来のリスクを知るための検査。
もしあなたが、本気で自分の体と向き合いたいと思うなら、一度、受けてみることを強くお勧めします。
さあ、テロメアについての基本的な知識は、これで十分です。
いよいよ次の第3部では、この「細胞の健康」を合言葉に、あなたのパフォーマンスを劇的に向上させるための、45の具体的な「カラダ適正化」の方法を、一つひとつ詳しくご紹介していきます。
まずは、あなたが実践しやすそうなもの、興味を持ったものからで構いません。
細胞レベルから若返り、120歳まで元気に活躍できるほどの健康な体を、ぜひ、私と一緒に手に入れていきましょう。
第3部 今日からできる「カラダ適正化」実践ガイド
さあ、ここからはいよいよ、あなたの肉体、精神、頭脳を最高の状態へと導くための、具体的な「カラダ適正化」の実践方法を45個、ご紹介していきます。
この章は、いわば「カラダ適正化の事典」です。
最初からすべてを完璧にこなそうとする必要は、まったくありません。パラパラとページをめくりながら、今のあなたが抱えている悩みを解決してくれそうなもの、あるいは「なんだか面白そうだな」と、単純に興味を惹かれたものから、気軽に試してみてください。
カラダ適正化を成功させる5つの原則
本格的な実践に入る前に、より効果的に、そしてストレスなく続けていただくための「5つの原則」をお伝えします。この原則を心に留めておくだけで、挫折する可能性がぐっと低くなるはずです。
【原則1】まずは3週間、続けてみる
人の習慣が変わるのには、ある程度の時間が必要です。食生活や運動習慣を変えても、すぐに劇的な変化が起こるわけではありません。まずは「3週間」を目安に続けてみてください。その間に、あなたの体は少しずつ変わり始め、小さな変化に気づけるようになります。もちろん、明らかに体調が悪くなった場合は、無理せずすぐに中止してください。
【原則2】簡単な「記録」をつける
体の変化を客観的に捉えるために、簡単な記録をつけることをお勧めします。「体が軽くなった」「よく眠れるようになった」「肌の調子がいい」など、スマホのメモ機能や手帳に、一言書き留めるだけで構いません。記録は、あなたの努力を「見える化」し、続けるためのモチベーションになります。
【原則3】完璧を目指さず、ストレスなく続ける
「カラダ適正化」で最も避けたいのは、実践することがストレスになってしまうことです。ストレスは、第2部でお話しした「3つの大敵」を増やす元凶です。100%完璧を目指す必要はありません。「まずは50%から」「8割できれば上出来」くらいの、ゆるい気持ちで始めてみましょう。「続けること」が、何よりも大切です。
【原則4】悪いものを「置き換える」発想を持つ
「あれを食べてはいけない」と禁止するばかりでは、食事が楽しくなくなってしまいます。大切なのは、「置き換える」という発想です。例えば、「白米」を「玄米」に、「スナック菓子」を「ナッツ」に、「ジュース」を「無糖のハーブティー」に。これなら、我慢する感覚なく、食生活の質を向上させることができます。
【原則5】メリットとデメリットを天秤にかける
食べ物の中には、良い面(メリット)と悪い面(デメリット)の両方を持つものがあります。例えば、大豆は良質なタンパク源ですが、摂りすぎるとホルモンバランスに影響を与える可能性も指摘されています。一つの情報に振り回されず、「デメリットを上回るメリットがあるか?」という視点で、冷静に判断するバランス感覚も養っていきましょう。
I. 自分のカラダを知る 〜 最適な戦略を立てるための羅針盤
「カラダ適正化」を始めるにあたって、最も重要な第一歩。それは、「今の自分の体の状態を、客観的に知ること」です。
私たちは、毎日鏡で自分の顔を見て、「今日は調子が良さそうだな」とか「少し疲れているかな」と感じることはできます。しかし、体の中で何が起こっているのかは、外から見ただけではわかりません。
・体の中に、どんな毒素が溜まっているのか?
・実は、毎日食べている“健康に良いはずの食品”が、不調の原因になっていないか?
・生命活動に不可欠な栄養素のうち、何が足りていないのか?
・遺伝的に、どんな病気にかかりやすく、どんな体質を持っているのか?
これらを知らずに、やみくもに健康法を試すのは、まるで地図も羅針盤も持たずに、大海原へ航海に出るようなものです。
幸い、現代の科学技術は、私たちの体を内側から「見える化」することを可能にしました。これからご紹介する検査は、あなたのカラダ適正化の旅路を、最短距離でゴールへと導いてくれる、強力な羅針盤となるはずです。
カラダ適正化 01. 遺伝子検査
〜 生まれ持った「体の設計図」を読み解く
「なぜ、あの人はあんなに食べても太らないんだろう?」
「どうして、自分だけ肌が荒れやすいんだろう?」
そんな風に思ったことはありませんか?
その答えは、あなたと他の人の「遺伝子」が違うからです。
遺伝子とは、私たちの体の「設計図」そのものです。肌の色や髪質といった見た目だけでなく、体がどれくらい丈夫か、どんな病気になりやすいか、どんな食事が体質に合っているか、どんなケアが肌に適しているかなど、私たちの体の特性の多くは、この設計図によって、生まれながらにある程度決まっています。
この「生まれ持った体の特性」を、唾液を採取するだけで手軽に調べられるのが、遺伝子検査です。
一昔前までは、大学の研究室レベルでしか行えなかった遺伝子解析が、ここ10年ほどで技術が劇的に進歩したおかげで、今では数万円程度の費用で、誰でも受けられるようになりました。
検査キットを通販などで取り寄せ、自宅で唾液を採取して検査機関に送るだけ。約1ヶ月後には、数百項目にも及ぶ、あなただけの「体の取扱説明書」が手に入るのです。
◆この検査でわかること
- テロメアの長さの傾向:あなたの生物学的な老化スピードがわかります。
- 肥満タイプ:糖質で太りやすいか、脂質で太りやすいかなど、自分に合ったダイエット法が見つかります。
- 肌タイプ:シミができやすいか、シワができやすいかなど、効果的なスキンケアのヒントが得られます。
- 病気のリスク:がんや生活習慣病など、特定疾患へのかかりやすさがわかります。
- 体質:アルコールの分解能力、カフェインの感受性など、様々な体質が明らかになります。
- 祖先のルーツ:あなたの祖先が、世界のどの地域から来たのか、なんていう興味深い情報もわかります。
◆治療家としての視点
私自身も、この遺伝子検査を受けたことで、大きな気づきがありました。
一時期、私はストイックな糖質制限に取り組んでいたのですが、どうも体のパワーが出ない、力が入らないという感覚が続いていました。そんな時、遺伝子検査を受けたところ、なんと「炭水化物の代謝が比較的得意で、エネルギー源として一定量の炭水化物を必要とする体質」であることが判明したのです。
まさに目から鱗でした。
「良かれ」と思ってやっていたことが、実は自分の体の設計図には合っていなかった。それ以来、私は良質な炭水化物(玄米など)を1日1回、適量摂るように食生活を修正しました。すると、以前のようなパワー不足感は嘘のように消え、一日中エネルギッシュに活動できるようになったのです。
もし遺伝子検査を受けていなければ、私は「なんだか調子が悪いな…」と思いながら、間違った努力を延々と続けていたかもしれません。
もちろん、遺伝子検査の結果があなたの運命をすべて決めるわけではありません。病気のリスクが高いと出たからといって、必ずその病気になるわけではないのです。むしろ、「自分にはこういう傾向がある」ということを事前に知ることで、効果的な予防策を講じることができる。そこに、遺伝子検査を受ける最大の価値があります。
あなただけの「体の設計図」を手に入れることは、これからの人生100年時代を、健康に、賢く生き抜くための、最強の武器となるはずです。
カラダ適正化 02. 酸化ストレス検査
〜 あなたの体の「サビつき度」はどれくらい?
第2部で、老化や病気の大きな原因として、体の「サビつき」、すなわち「酸化」についてお話ししたのを覚えていますか?
酸化とは、体内で発生する「活性酸素」という物質が、正常な細胞を傷つけてしまう現象のことです。この酸化ダメージがどれくらい蓄積しているか、つまり、あなたの体の「サビつき度」を調べるのが、酸化ストレス検査です。
活性酸素は、呼吸をする限り必ず体内で発生します。しかし、ストレス、喫煙、大気汚染、紫外線、食品添加物などによって過剰に発生すると、体の抗酸化システムが追いつかなくなり、細胞はじわじわとサビついていってしまいます。
この細胞のサビこそが、
- シミ、シワ、たるみといった肌の老化
- 動脈硬化、高血圧といった血管の老化
- がん、アルツハイマー病、糖尿病など様々な病気
の引き金となる、非常に厄介な存在なのです。
酸化ストレス検査は、専門の医療機関で簡単な血液検査や尿検査を受けることで、あなたの体が今、活性酸素によってどれくらいダメージを受けているか、そして、そのダメージに対抗する力(抗酸化力)がどれくらいあるのかを、数値で知ることができます。
◆この検査でわかること
- 活性酸素による細胞のダメージ度(体のサビつき度)
- 活性酸素から体を守る抗酸化力のレベル
- 酸化ストレスが原因で起こりうる将来的な病気のリスク
◆治療家としての視点
私の治療院に来られる患者さんの中にも、「特に悪いところはないはずなのに、いつも体がだるい」「疲れが全然とれない」と訴える方がたくさんいます。そうした方の多くは、自覚がないまま、体内で酸化ストレスが非常に高いレベルになっているケースが少なくありません。
この検査で「酸化ストレスが強い」という結果が出た場合、それはあなたの体が「助けて!」と悲鳴を上げているサインです。
対策は、大きく分けて二つ。
一つは、活性酸素の発生源を減らすこと。ストレスを溜めない工夫をする(瞑想や趣味の時間など)、睡眠の質を上げる、タバコをやめる、加工食品を避ける、といった生活習慣の見直しです。
もう一つは、体の抗酸化力を高めること。
抗酸化作用の強い、色の濃い野菜(ブロッコリー、パプリカ、ほうれん草など)や果物(ベリー類など)を積極的に食べること。そして、必要に応じて、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、グルタチオンといった抗酸化作用のあるサプリメントを、専門家のアドバイスのもとで活用することも有効です。
あなたの体の「サビ」は、放置しておけばどんどん進行し、やがて取り返しのつかない事態を招きます。手遅れになる前に、一度、自分のサビつき度をチェックしてみてはいかがでしょうか。
カラダ適正化 03. 唾液コルチゾール検査
〜 あなたの「がんばりすぎ度」を測る
「朝、起きるのが地獄のようにつらい」
「午前中は頭がボーッとして、やる気が出ない」
「夕方になると急に元気になるけれど、夜は目が冴えて眠れない」
もし、こんな症状に心当たりがあるなら、あなたの体の中にある、とても重要な臓器が疲れ果てているのかもしれません。その臓器とは、「副腎」です。
副腎は、腎臓の上に乗っかっている、クルミほどの大きさの小さな臓器ですが、私たちの生命維持に欠かせない、50種類以上ものホルモンを分泌しています。
その中でも特に重要なのが、ストレスに対抗するために分泌される「コルチゾール」というホルモンです。コルチゾールは、私たちがストレスを感じた時に、血糖値や血圧を上げて、体がストレスと戦える状態(臨戦態勢)にしてくれる、いわば「天然のステロイド」です。
このコルチゾールの分泌量は、1日の中で決まったリズム(日内変動)があり、通常は「朝に最も高く、夜に向かって徐々に低く」なっていきます。朝、シャキッと目覚めて活動できるのも、夜、自然に眠くなるのも、このコルチゾールの正常なリズムのおかげなのです。
しかし、長期間にわたって強いストレスにさらされ続けると、副腎はコルチゾールを作り出すために、休みなく働き続けることになります。その結果、やがて副腎は疲れ果ててしまい、十分な量のコルチゾールを分泌できなくなってしまうのです。
この状態が、「副腎疲労」です。
副腎疲労に陥ると、コルチゾールの日内変動リズムが狂ってしまいます。朝、本来高くなるはずのコルチゾールが分泌されず、逆に夜になってもダラダラと分泌され続ける。これが、冒頭で挙げたような、原因不明の倦怠感や睡眠障害を引き起こす正体です。
この、あなたの「がんばりすぎ度」、つまり副腎の疲労度を測ることができるのが、唾液コルチゾール検査です。1日のうちに数回、唾液を採取するだけで、あなたのコルチゾールの分泌リズムが正常かどうかを調べることができます。
◆この検査でわかること
- あなたが日頃感じているストレスのレベル
- ストレスに対抗する副腎の疲労度
- 原因不明の倦怠感、うつ症状、不眠などの根本的な原因
◆治療家としての視点
現代社会は、まさに「ストレス社会」です。仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、情報過多…。多くの人が、自覚している以上に副腎を酷使しています。私が過去に経験した「燃え尽き症候群」も、間違いなくこの副腎疲労が根底にありました。
この検査で副腎疲労と診断された場合、必要なのは「気合」や「根性」ではありません。徹底的に副腎を休ませてあげることです。
具体的には、
・カフェインや砂糖といった、副腎を刺激するものを控える。
・夜更かしをやめ、質の良い睡眠を確保する。
・ビタミンC、ビタミンB群、マグネシウムなど、コルチゾールの生成に必要な栄養素を、食事やサプリメントで十分に補給する。
といった対策が必要になります。専門の医療機関では、より詳細な栄養療法を行ってくれるところもあります。
「最近、どうも疲れやすくて…」と感じているなら、それは心が弱いからでも、怠けているからでもありません。ただ、あなたの副腎が、あなたの頑張りに応えようと、必死に働きすぎて疲れているだけなのかもしれません。
一度、その小さな英雄を労ってあげるために、検査を受けてみることをお勧めします。
カラダ適正化 04. オリゴスキャン
〜 見えない毒「有害金属」の蓄積度を3分で知る
私たちの身の回りには、目に見えない「毒」が溢れています。その代表格が、「有害金属」です。
水銀、鉛、カドミウム、アルミニウム、ヒ素…。これらの名前を聞いて、良いイメージを持つ人はいないでしょう。これらの有害金属は、排気ガス、水道水、大型魚、農薬、歯の詰め物(アマルガム)、調理器具(アルミ鍋など)といった、ごくありふれたものに含まれ、知らず知らずのうちに私たちの体内に侵入し、蓄積されていきます。
体には本来、肝臓や腎臓などを通じて毒素を排出する機能が備わっています。しかし、現代社会では、体内に取り込む有害物質の量が、体の処理能力をはるかに上回ってしまっているのです。
そして、排出されずに体内に溜まった有害金属は、血液に乗って全身を巡り、様々な臓器や組織に沈着して、深刻な健康被害を引き起こします。
・水銀 → イライラ、動脈硬化、脱毛、手の震え
・鉛 → うつ、疲労感、貧血、学習能力の低下
・カドミウム → 高血圧、腎障害、骨粗しょう症
・アルミニウム → 記憶障害、筋肉のこわばり
・ヒ素 → 皮膚障害、下痢、便秘
このように、原因不明だと思っていた不調が、実は体内に蓄積された有害金属の仕業だった、というケースは決して少なくありません。
そこでぜひ受けていただきたいのが、オリゴスキャンという検査です。
これは、特殊な光を手のひらに当てるだけで、たった3分ほどで体内の有害金属の蓄積度と、必須ミネラルのバランスを測定できる、画期的な検査機器です。
従来の有害金属検査は、血液や尿、髪の毛などを採取し、結果が出るまでに数週間かかるのが一般的でした。しかし、オリゴスキャンなら、痛みも時間もほとんどかけることなく、その場で自分の体の汚染度を知ることができるのです。
◆この検査でわかること
- 14項目の有害金属の体内蓄積度
- 生命活動に不可欠な20項目のミネラルバランス
- ミネラルの過不足からわかる、体の健康状態
◆治療家としての視点
健康な体をつくるためには、体に良いものを「入れる(足し算)」ことばかりに目が行きがちですが、それ以前に、体に溜まった悪いものを「出す(引き算)」ことが、何よりも重要です。
汚れたコップに、いくら綺麗な水(栄養)を注いでも、中の水は汚れたままですよね。まずはコップを綺麗に洗い、汚れを取り除く(デトックスする)ことが先決です。
オリゴスキャンは、あなたの体にどんな「汚れ」が溜まっているのかを特定し、効果的なデトックス戦略を立てるための、最初のステップとなります。
例えば、私の患者さんで、長年原因不明の疲労感に悩まされていた方がいました。オリゴスキャンを受けたところ、水銀の数値が非常に高く出ていました。詳しく話を聞くと、マグロなど大型の魚が大好きで、頻繁に食べていたそうです。さらに、過去に治療した歯の詰め物に、水銀を含むアマルガムが使われていることもわかりました。
そこで、まずは大型魚の摂取を控えること、そして専門の歯科医でアマルガムを除去すること、さらに、水銀の排出を助けるセレンや亜鉛といったミネラル、そしてデトックス作用のあるサプリメント(グルタチオンなど)を摂取するように指導しました。
数ヶ月後、彼の疲労感は劇的に改善し、「まるで体が生まれ変わったようだ」と、大変喜んでいました。
あなたを悩ませている不調も、もしかしたら、見えない毒のせいかもしれません。オリゴスキャンは、その「犯人」を特定するための、強力な捜査ツールなのです。
カラダ適正化 05. 遅延型フードアレルギー検査
〜 その不調、大好きな「あの食べ物」が原因かも?
「健康のために、毎日ヨーグルトを食べています」
「卵は栄養満点だから、1日に2個は欠かしません」
良かれと思って続けているその食習慣が、実はあなたの不調の引き金になっているとしたら…?
特定の食べ物を食べた直後に、じんましんが出たり、呼吸が苦しくなったりする。こうした即時型のアレルギーは、原因が分かりやすいため、多くの人が自覚しています。
しかし、もっと厄介なのは、反応が出るまでに数時間から数日かかり、しかも慢性的な症状として現れる「遅延型フードアレルギー」です。
この遅延型アレルギーが引き起こす症状は、驚くほど多岐にわたります。
・消化器系の症状:便秘、下痢、腹部膨満感
・皮膚の症状:アトピー性皮膚炎、ニキビ、原因不明の湿疹
・全身の症状:慢性疲労、頭痛、肩こり、関節痛、冷え性、むくみ
・精神・神経系の症状:集中力低下、イライラ、不安感、うつ症状、不眠
いかがでしょうか。
あなたが「体質だから」「ストレスのせいだ」と諦めていたその症状、もしかしたら遅延型フードアレルギーが関係しているかもしれません。
この、気づかれにくいアレルギーの原因を特定するのが、遅延型フードアレルギー検査です。少量の血液を採るだけで、日本人がよく口にする96種類(またはそれ以上)の食品に対するアレルギー反応の強さを、詳細に調べることができます。
◆この検査でわかること
- 慢性的な身体症状や精神症状の原因となっている可能性のある食品
- 自分では気づいていない、潜在的なアレルギーの有無
◆治療家としての視点
この検査の面白いところは、「健康に良いから」「大好きだから」という理由で、頻繁に食べている食品に、強いアレルギー反応が出ることが非常に多いという点です。
私自身もこの検査を受けたところ、なんと牛乳、トウモロコシ、エンドウ豆、大麦といった、ごく一般的な食品に高い反応が出て、大変驚きました。
また、以前担当した患者さんで、長年うつ症状と不眠に悩んでいた方がいました。何をしても改善せず、心療内科に通っても薬が増えるばかり。藁にもすがる思いでこの検査を受けたところ、なんと彼女が毎日欠かさず食べていた「卵」と「乳製品」に、最も強いアレルギー反応が見つかったのです。
半信半疑ながらも、彼女は卵と乳製品を食事から完全に除去してみました。すると、2週間ほど経った頃から、あれほどひどかった気分の落ち込みが和らぎ、夜も少しずつ眠れるようになってきたのです。3ヶ月後には、ほとんどの症状が改善し、心療内科の薬も必要なくなりました。
彼女は言いました。「信じられない。私の人生を狂わせていた犯人が、毎朝食べていた目玉焼きとヨーグルトだったなんて…」
もちろん、すべての不調が食べ物のせいだというわけではありません。しかし、もしあなたが、何をしても改善しない慢性的な不調に悩んでいるのなら、一度、この検査を受けてみる価値は十分にあります。
あなたの体を静かに蝕んでいる「犯人」は、意外にも、あなたの食卓の一番身近なところに潜んでいるのかもしれないのです。
カラダ適正化 06. 腸内フローラ検査
〜 あなたの腸は「お花畑」? それとも「ゴミ溜め」?
「腸は第二の脳である」
近年、健康に関心のある人の間では、もはや常識となりつつある言葉です。
大腸は、単に便をつくって排泄するだけの器官ではありません。実は、私たちの心と体の健康を根底から支える、超重要な役割を担っています。
・免疫力の司令塔:全身の免疫細胞の約7割が腸に集中しており、病原菌から体を守る最前線です。
・栄養素の生成:ビタミンB群やビタミンKなど、体に必要な栄養素を合成しています。
・幸せホルモンの製造工場:精神の安定や幸福感に関わる「セロトニン」の、なんと9割以上が腸でつくられています。
・デトックスの最終関門:体内の老廃物や毒素を便として排泄する、最大の解毒器官です。
このように、腸のコンディションは、全身の健康、ひいてはメンタルの状態にまで、直接的に影響を及ぼします。
そして、その腸のコンディションを決定づけているのが、腸内に棲む100兆個以上もの「腸内細菌」たちです。多種多様な細菌が、まるで植物が群生するお花畑(フローラ)のように腸の壁にびっしりと生息していることから、その生態系は「腸内フローラ」と呼ばれています。
この腸内フローラのバランスを調べることができるのが、腸内フローラ検査です。
腸内細菌は、大きく分けて3つのグループに分類されます。
・善玉菌:体に良い働きをする菌(ビフィズス菌、乳酸菌など)。
・悪玉菌:体に悪い働きをする菌(ウェルシュ菌など)。
・日和見菌:善玉菌と悪玉菌のうち、優勢なほうに味方する菌。
健康な人の腸内では、これらの菌が「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」という黄金バランスで保たれていると言われています。
腸内フローラ検査は、便を少量採取して送るだけで、あなたの腸内にどんな菌が、どれくらいの割合で棲んでいるのか、そして、そのバランスが理想的な状態かどうかを詳細に分析してくれます。
◆この検査でわかること
- 善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランス
- 太りやすい菌、やせやすい菌など、体質に関わる菌の割合
- あなたの腸内年齢
- あなたに合った食事や生活習慣のアドバイス
◆治療家としての視点
食生活の欧米化やストレス、抗生物質の乱用などにより、現代人の多くは腸内フローラのバランスが乱れ、悪玉菌が優勢な状態になっていると言われています。
腸内環境が悪化すると、便秘や下痢といった直接的な不調はもちろん、肌荒れ、アレルギー、肥満、生活習慣病、さらにはうつ病や認知症のリスクまで高まることが、近年の研究で次々と明らかになっています。
逆に言えば、腸内フローラを黄金バランスに整えることさえできれば、心と体の多くの不調を、根本から改善できる可能性があるのです。
この検査を受ければ、あなたは自分だけの「腸の取扱説明書」を手に入れることができます。「自分にはビフィズス菌が足りないから、ヨーグルトやサプリで補おう」「食物繊維が不足しているから、海藻やきのこを積極的に食べよう」といったように、具体的かつ効果的な「腸活」を始めることができるのです。
あなたの腸は、あなたを健康に導く「お花畑」でしょうか? それとも、不調を生み出す「ゴミ溜め」になってしまっているでしょうか?
一度、その中を覗いてみることをお勧めします。
カラダ適正化 07. 栄養分析プログラム
〜 あなたの体に本当に「足りていない栄養素」は何か?
「バランスの良い食事を心がけているから、栄養は足りているはず」
そう思っている方は、非常に多いのではないでしょうか。しかし、その「はず」は、大きな勘違いかもしれません。
飽食の時代と言われる現代の日本で、深刻な問題となっているのが「質的栄養失調(隠れ栄養失調)」です。カロリーは十分に摂れているのに、体に必要なビタミンやミネラルといった微量栄養素が、慢性的に不足している状態を指します。
なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。
その原因は、加工食品や外食の普及、そして野菜自体の栄養価の低下などが挙げられます。昔と同じ量の野菜を食べても、そこに含まれるビタミンやミネラルの量は、数十年前の半分以下になっている、というデータもあるほどです。
ビタミンやミネラルは、私たちの体の中で、歯車を動かす「潤滑油」のような役割を担っています。
・食べたものをエネルギーに変える
・ホルモンや神経伝達物質をつくる
・細胞をダメージから守る
・骨や血液をつくる
こうした、生命を維持するための数えきれないほどの化学反応は、ビタミンやミネラルという「潤滑油」なしには、スムーズに進みません。
この、あなたの体にどんな「潤滑油」が、どれくらい足りていないのかを、血液検査によって詳細に分析するのが、栄養分析プログラム(オーソモレキュラー検査など)です。
◆この検査でわかること
- タンパク質、脂質、糖質の代謝状態
- 各種ビタミン(B群、C、D、Eなど)の過不足
- 各種ミネラル(鉄、亜鉛、マグネシウムなど)の過不足
- あなたの体に合った栄養素の種類と量
◆治療家としての視点
通常の健康診断でも血液検査は行いますが、そこで見ているのは、あくまで「病気かどうか」を判断するための基準値です。一方、栄養分析プログラムが見ているのは、「体が最適な状態で機能しているか」という、より高いレベルでの基準値です。
例えば、多くの女性が悩まされている「貧血」。健康診断の基準値では「正常」と判断されても、最適な状態から見れば、実は深刻な「鉄欠乏」に陥っているケースが非常に多くあります。
鉄が不足すると、酸素を運ぶヘモグロビンがつくれないため、全身が酸欠状態になります。その結果、
・疲れやすい、だるい
・めまい、立ちくらみ
・頭痛、肩こり
・気分の落ち込み、イライラ
といった、様々な不定愁訴が現れるのです。
また、「亜鉛」は、新しい細胞をつくるために不可欠なミネラルで、免疫機能や味覚を正常に保つ働きもあります。不足すると、風邪をひきやすくなったり、肌荒れや抜け毛が増えたり、味がしなくなったりします。
「マグネシウム」は、体内の300種類以上もの酵素を助ける働きがあり、「天然の精神安定剤」とも呼ばれます。不足すると、足がつりやすくなったり、イライラしたり、眠りが浅くなったりします。
このように、特定の栄養素が不足するだけで、私たちの心と体には、様々な不調が現れます。
栄養分析プログラムを受ければ、やみくもにサプリメントを飲むのではなく、今のあなたの体に本当に必要な栄養素を、ピンポイントで、かつ最適な量で補うことができます。
それは、あなたの体のパフォーマンスを最大限に引き出すための、最も確実で、最も効率的な方法と言えるでしょう。
カラダ適正化 08. がん・認知症リスク検査
〜 目に見えない病の「芽」を超早期に発見する
「がん」と「認知症」。
この二つの病気は、私たちの人生の質(クオリティオブライフ)を著しく低下させる、二大疾患と言えるでしょう。
「日本人の2人に1人が、生涯で一度はがんになる」
「65歳以上の高齢者の、約7人に1人が認知症」
これは、もはや他人事ではない、私たち自身の問題です。
これらの病気は、有効な治療法が限られており、一度発症・進行してしまうと、元の健康な状態に戻ることは極めて困難です。
だからこそ、何よりも重要になるのが「超早期発見」と「予防」です。
幸い、近年の医療技術の進歩により、従来の方法では見つけることができなかったほど初期段階の、いわば「病気の芽」を、簡単な血液検査で発見できるようになってきました。
それが、マイクロRNAという物質を調べる、最新のリスク検査です。
少し専門的になりますが、マイクロRNAとは、私たちの細胞の中にある、遺伝子の働きを調節する小さな物質です。そして、がん細胞や、アルツハイマー病の原因となる細胞は、正常な細胞とは異なる、特殊なマイクロRNAを血液中に放出することがわかってきました。
この検査は、血液中に含まれるこの特殊なマイクロRNAの種類と量を調べることで、自覚症状が全くない、画像診断でも見つけられないような超早期の段階で、がんや認知症の発症リスクを判定するというものです。
◆この検査でわかること
- 現在、体内にがん細胞が存在するリスク(複数のがん種に対応)
- 将来、アルツハイマー型認知症を発症するリスク
- 病気になる前の「未病」の段階での体の異常
◆治療家としての視点
この検査の画期的な点は、「病気を診断する」のではなく、「病気になるリスクを予測する」という点にあります。
従来のCTやMRIといった画像診断で見つかるがんは、すでにある程度の大きさになった「育ったがん」です。しかし、このリスク検査で見つけられるのは、まだ細胞レベルの「がんの芽」。
「芽」の段階で発見できれば、私たちは大きなアドバンテージを得ることができます。
手術や抗がん剤といった体に大きな負担をかける治療が必要になる前に、
・食生活を徹底的に見直す
・デトックス(解毒)を促す
・免疫力を高める
・抗酸化・抗炎症作用のあるサプリメントを摂る
といった、本書で紹介するような「カラダ適正化」のアプローチによって、がんの芽が育つのを防ぎ、場合によっては消し去ることさえ期待できるのです。
これは、従来の「病気になってから治す」という受け身の医療から、「病気にならない体をつくる」という攻めの予防医療への、大きなパラダイムシフトと言えるでしょう。
もちろん、この検査でリスクが高いと判定されたからといって、過度に恐れる必要はありません。むしろ、それは「あなたの生活習慣、今すぐ見直した方がいいですよ」という、体からの早期警告サインです。
そのサインを真摯に受け止め、行動を変えることができれば、あなたは最悪の未来を回避し、健康な未来を自らの手でつかみ取ることができるのです。
カラダ適正化 09. 神経伝達物質テスト
〜 あなたの「やる気」と「集中力」の源泉を知る
「どうもやる気が出ない…」
「仕事に集中できない…」
「理由もなく気分が落ち込む…」
「ささいなことでイライラしてしまう…」
こうした心の不調は、あなたの「性格」や「気合」の問題だと思っていませんか?
実は、その原因の多くは、脳内で働く「神経伝達物質」のバランスの乱れにあるのかもしれません。
神経伝達物質とは、脳の中にある無数の神経細胞の間で、情報をやり取りするために使われる化学物質のことです。私たちの思考、感情、行動、意欲、記憶といった、精神活動のすべてが、この神経伝達物質の絶妙な連携プレーによってコントロールされています。
いわば、脳というオーケストラを指揮する「指揮者」のような存在です。
代表的な神経伝達物質には、以下のようなものがあります。
・ドーパミン:快感、意欲、学習能力を司る。「やる気ホルモン」。
・セロトニン:精神の安定、幸福感を司る。「幸せホルモン」。不足すると、うつや不安を引き起こす。
・ノルアドレナリン:覚醒、集中、緊張を司る。適度な量はパフォーマンスを高めるが、過剰になると不安や恐怖を感じやすくなる。
・GABA(ギャバ):興奮を鎮め、リラックスさせる。ブレーキ役。
これらの神経伝達物質が、適切なタイミングで、適切な量だけ分泌されることで、私たちの心は健康な状態に保たれています。しかし、ストレスや不規則な生活、栄養不足などによって、このバランスが崩れてしまうと、オーケストラの演奏が乱れるように、心にも様々な不調が現れてくるのです。
この、あなたの脳内の「指揮者」たちの働きぶりを、尿検査によって調べることができるのが、神経伝達物質テストです。
◆この検査でわかること
- 主要な神経伝達物質の分泌バランス
- やる気が出ない、集中できない、気分が落ち込むといった精神的な不調の根本原因
- あなたに必要な栄養素や生活習慣の改善点
◆治療家としての視点
この検査が教えてくれる、非常に重要な事実があります。それは、心の不調は、食事で改善できる可能性がある、ということです。
なぜなら、これらの神経伝達物質の「原材料」となっているのは、私たちが食事から摂るアミノ酸(タンパク質)やビタミン、ミネラルだからです。
例えば、
・幸せホルモン「セロトニン」の材料は、「トリプトファン」という必須アミノ酸。
・やる気ホルモン「ドーパミン」の材料は、「チロシン」というアミノ酸。
そして、これらのアミノ酸から神経伝達物質を合成する過程では、ビタミンB群や鉄、亜鉛といった補酵素が不可欠です。
つまり、タンパク質やビタミン、ミネラルが不足していると、脳は十分な神経伝達物質をつくることができず、結果として心の不調につながってしまうのです。
この検査を受ければ、あなたの脳がどんな「材料」を欲しているのかが、明確になります。
「セロトニンが不足しているから、トリプトファンが豊富な赤身肉や魚、大豆製品を増やそう」
「ドーパミンが少ないから、チロシンを含むチーズやナッツを摂ろう」
「合成を助けるビタミンB群のサプリメントを活用しよう」
といったように、科学的根拠に基づいた、効果的なメンタルケアを始めることができます。
「心の病」は、もはや特別なものではなく、誰にでも起こりうる時代です。しかし、その多くは「脳の栄養失調」が原因かもしれません。
薬に頼る前に、まずはあなたの脳に、正しい栄養を与えてあげることから始めてみませんか。
II. 食生活を最適化する 〜 体の内側からつくり変える
私たちの体は、私たちが食べたものでできています。
この、当たり前のようで、多くの人が忘れがちな事実こそ、「カラダ適正化」の最も重要な核となる部分です。
どれだけ優れた治療を受けても、どれだけ高級なサプリメントを飲んでも、日々の食生活が乱れていては、まるで穴の空いたバケツに水を注ぐようなもの。効果は半減し、根本的な改善には至りません。
しかし、逆に言えば、食生活を変えるだけで、私たちの体は劇的に変わる可能性があるのです。
この章では、「何を断ち、何を選ぶか」という視点から、あなたの細胞を内側から若返らせ、最高のパフォーマンスを引き出すための、具体的な食事術をご紹介します。
大切なのは、「我慢」や「禁止」ではありません。「より良いものに置き換える」という、賢く、楽しい選択です。
さあ、あなたの体をつくり変える、美食の旅を始めましょう。
カラダ適正化 10. トランス脂肪酸フリー
〜 細胞を壊す「最悪の油」を食卓から追放する
油(脂質)と聞くと、「太る」「体に悪い」というイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。
脂質は、糖質、タンパク質と並ぶ三大栄養素の一つであり、私たちの体を動かす重要なエネルギー源です。それだけでなく、約37兆個ある全ての細胞の膜や、体の機能を調整するホルモンの材料になるという、極めて重要な役割を担っています。
つまり、
・良い油を摂れば、しなやかで機能性の高い、健康な細胞膜やホルモンがつくられる。
・悪い油を摂れば、硬くてもろく、機能不全な細胞膜やホルモンがつくられてしまう。
日頃どんな油を選ぶかで、あなたの健康度も、老化のスピードも、大きく左右されるのです。
そして、数ある油の中でも、「絶対に避けるべき、最悪の油」と断言できるのが、「トランス脂肪酸」です。
トランス脂肪酸は、液体の植物油に水素を添加して、無理やり固形や半固形にした「不自然な油」です。常温で固まり、酸化しにくいため、コストを抑えたい食品メーカーにとっては非常に使い勝手が良く、様々な加工食品に広く使われています。
しかし、この不自然な油は、私たちの体にとっては「プラスチックを食べているようなもの」とまで言われ、数々の健康被害をもたらすことが明らかになっています。
特に、血液中の悪玉(LDL)コレステロールを増やし、善玉(HDL)コレステロールを減らすことで、心筋梗塞や狭心症といった心疾患のリスクを著しく高めることは、世界の医学界ではもはや常識です。
そのため、アメリカをはじめとする多くの先進国では、トランス脂肪酸の使用が厳しく規制、あるいは禁止されています。しかし、残念ながら日本では、いまだに野放し状態です。私たちは、自分の知識で自分の身を守るしかありません。
◆トランス脂肪酸が多く含まれる食品
・マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング
・上記を原材料に使った、パン、ケーキ、クッキー、ドーナツ、ビスケットなど
・フライドポテト、チキンナゲットなどの揚げ物
・市販のカレールウやシチュールウ、インスタントラーメン
パッケージの原材料表示を見て、「マーガリン」「ショートニング」「植物油脂」「加工油脂」といった表記があれば、トランス脂肪酸が含まれている可能性が高いと考えてください。
◆治療家としての視点
かつて、「バターよりもマーガリンの方がヘルシー」と言われていた時代がありましたが、これは完全に過去の話です。マーガリンが持つトランス脂肪酸のリスクを考えれば、天然のバターの方がはるかに安全です。
選ぶなら、牧草だけを食べて自然な環境で育った牛の乳から作られた「グラスフェッドバター」や、そのバターをさらに精製して純粋な油にした「ギー」が最適です。これらは、体に良い脂肪酸やビタミンが豊富で、炎症を抑える効果も期待できます。
サラダにかけるドレッシングも、市販品には質の悪い油が使われていることが多いため、自分で作るのが一番です。良質なエキストラバージンオリーブオイルに、塩、コショウ、レモン汁や良質な酢を加えるだけで、最高のドレッシングが完成します。
油は、私たちの体を構成する最も基本的な材料の一つです。
コンビニの菓子パンやファストフードで、あなたの細胞を傷つけるのは今日で終わりにしましょう。質の良い油を選ぶことは、未来の健康への、最も確実な投資なのです。
カラダ適正化 11. シュガーフリー
〜「甘いワナ」から抜け出し、老化のアクセルを止める
もし、あなたが今すぐ始められる、最も効果的なアンチエイジング法は何かと聞かれたら、私は迷わずこう答えます。
「砂糖をやめることです」と。
特に、サトウキビからミネラルなどの栄養素を根こそぎ取り除いて、甘味成分だけを抽出した「白砂糖」は、専門家の間では「百害あって一利なし」と言われるほど、私たちの体に深刻なダメージを与えます。
白砂糖が体に入ると、何が起こるのか。
第2部でお話しした「糖化(細胞のコゲ)」を、もう一度思い出してください。
①白砂糖を摂取すると、血糖値がジェットコースターのように急上昇する。
②すい臓が慌てて大量のインスリンを分泌し、今度は血糖値を急降下させる。
③この血糖値の乱高下は、脳に強いストレスを与え、イライラや気分の落ち込みを引き起こす。また、強烈な空腹感を生み出し、「もっと甘いものが欲しい」という依存状態(シュガーハイ)をつくり出す。
④処理しきれずに血中に余った糖は、体中のタンパク質と結びついて、老化促進物質「AGEs(終末糖化産物)」に変化する。
⑤AGEsは、皮膚のコラーゲンを破壊してシミやシワをつくり、血管を硬くして動脈硬化を進め、脳に蓄積して認知症のリスクを高める。
つまり、白砂糖は、あなたの体を内側から「焦がし」、心と体の両面から老化のアクセルを全力で踏み込む、恐ろしい存在なのです。
◆「隠れ砂糖」にもご用心!
「甘いお菓子は控えているから大丈夫」と思っている方も、油断は禁物です。
私たちが日常的に口にする、様々な加工食品には、驚くほどの「隠れ砂糖」が含まれています。
・清涼飲料水、スポーツドリンク、栄養ドリンク
・調味料(ケチャップ、ソース、焼肉のタレ、めんつゆなど)
・加工食品(ハム、ソーセージ、ちくわなど)
・惣菜、弁当
・乳酸菌飲料、飲むヨーグルト
原材料表示にある「果糖ぶどう糖液糖」「ぶどう糖果糖液糖」「異性化糖」といった表記は、トウモロコシなどを原料に作られた人工的な甘味料で、白砂糖以上に血糖値を上げやすく、肝臓にも負担をかけると言われています。
◆治療家としての視点
「甘いものがやめられない」という方は、意志が弱いからではありません。それは、血糖値の乱高下によって引き起こされる、脳の「依存症」なのです。
この悪循環から抜け出すには、まず3週間、意識的に砂糖を断ってみてください。最初の数日は、禁断症状のように甘いものが欲しくなるかもしれませんが、そこを乗り越えれば、味覚がリセットされ、野菜や果物本来の自然な甘みを「おいしい」と感じられるようになります。そして何より、体が軽くなり、頭がスッキリする感覚を、はっきりと実感できるはずです。
甘みが欲しい時は、白砂糖や人工甘味料ではなく、栄養価が高く血糖値の上昇が緩やかな「マヌカハニー」や「天然のメープルシロップ」、「羅漢果(らかんか)」などを、少量使うようにしましょう。
甘いものは、日常的に摂るものではなく、「たまのご褒美」としての特別な嗜好品と位置づけること。
それだけで、あなたの老化時計の針は、確実にゆっくりと進み始めるのです。
カラダ適正化 12. 糖質制限
〜「主食」という思い込みを捨て、脂肪を燃やす体になる
「シュガーフリー」と並んで、現代人のカラダ適正化に欠かせないのが、「糖質制限」です。
糖質とは、砂糖だけでなく、ご飯、パン、麺類、イモ類などに多く含まれる炭水化物の一部です。これらは体内でブドウ糖に分解され、重要なエネルギー源となります。
しかし、現代人の食生活は、明らかに「糖質過多」です。
朝はパン、昼はラーメン、夜は白米と、三食すべてが糖質中心という方も少なくないでしょう。
農耕が始まるはるか昔、私たちの祖先である狩猟採集民は、穀物などを口にすることはほとんどありませんでした。人間の体は、そもそも大量の糖質を処理するようには設計されていないのです。
糖質を過剰に摂取すると、どうなるか。
シュガーフリーの項でもお話ししたように、血糖値の乱高下を引き起こし、「糖化」や「炎症」の原因となるだけでなく、余った糖は、インスリンの働きによって、ことごとく「中性脂肪」として体内に溜め込まれていきます。
これが、肥満の直接的な原因です。
そして、肥満は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂肪肝、動脈硬化といった、命に関わる「生活習慣病ドミノ」の、最初の1ピースなのです。
この負の連鎖を断ち切るために有効なのが、糖質を多く含む食品の摂取を、意識的に制限する「糖質制限」です。
◆糖質制限の基本的な考え方
糖質制限と聞くと、「炭水化物を完全にゼロにする」といった、ストイックなイメージを持つ方がいるかもしれません。しかし、そこまでする必要はありません。大切なのは、「主食」という概念を一度捨てることです。
これまで「ご飯(パン)+おかず」だった食事を、「おかずが主役」と考え、糖質は「添え物」程度に減らす。これだけでも、体は大きく変わります。
【STEP 1】まずは「夜だけ」主食を抜いてみる
夕食のご飯やパンを抜くだけでも、睡眠中の血糖値が安定し、脂肪が燃焼されやすくなります。翌朝の目覚めがスッキリする、体が軽くなるといった効果も実感しやすいでしょう。
【STEP 2】「白い炭水化物」を「茶色い炭水化物」に置き換える
白米、白いパン、うどんといった精製された炭水化物は、食物繊維やビタミン、ミネラルが削ぎ落とされた「糖質の塊」です。これらを、食物繊維が豊富な玄米、全粒粉パン、十割そばなどに置き換えるだけで、血糖値の上昇は格段に緩やかになります。
【STEP 3】自分に合った「適正糖質量」を見つける
完全に糖質をカットすると、かえってパワーが出なくなってしまう人もいます(遺伝子検査の項で触れた、かつての私のように)。1日1回は玄米を少量食べる、トレーニング前だけは糖質を摂るなど、自分の体調や活動量と相談しながら、ベストな量を探っていきましょう。
◆治療家としての視点
糖質制限を始めると、私たちの体は、エネルギー源を「糖」に頼るモードから、「脂肪」を燃やすモードへと切り替わっていきます。これは、体内に「ケトン体」という物質が生成されるためです。
このケトン体は、非常にクリーンで効率の良いエネルギー源であり、特に脳の働きを活性化させる効果があることがわかっています。糖質制限を実践した人から、「頭が冴えわたるようになった」「集中力が格段に上がった」という声が多く聞かれるのは、このためです。
また、ケトン体には強力な抗酸化作用や抗炎症作用もあり、老化や病気の予防にもつながります。
糖質は、決して「悪」ではありません。しかし、現代人が摂っている量は、明らかに「過剰」です。
あなたも「主食」という呪縛から自由になり、眠っている脂肪燃焼能力と、脳のポテンシャルを最大限に引き出してみませんか。
カラダ適正化 13. グルテンフリー
〜 なんとなくの不調は、「小麦」が原因かもしれない
パン、パスタ、ラーメン、うどん、ピザ、ケーキ、クッキー…。
私たちの食生活は、驚くほど多くの「小麦製品」で溢れています。
しかし近年、この小麦に含まれる「グルテン」というタンパク質が、様々な体調不良を引き起こす原因となっている可能性が、世界中で指摘されています。
グルテンとは、小麦粉に水を加えてこねることで生まれる、粘り気や弾力のもととなる成分です。パンのふっくらとした食感や、うどんのコシは、このグルテンのおかげです。
しかし、このグルテンは、一部の人にとっては消化しにくい「異物」であり、腸の粘膜に炎症を引き起こすことがわかってきました。プロテニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ選手が、グルテンフリーの食事法を実践して劇的にパフォーマンスを向上させた話は、あまりにも有名です。
グルテンが引き起こす不調で、最も重篤なものは「セリアック病」という自己免疫疾患ですが、そこまでいかなくても、グルテンに対して軽度な不耐性を持つ人は、非常に多いと考えられています。
◆グルテン不耐性が引き起こす可能性のある症状
・お腹の不調:腹痛、下痢、便秘、お腹の張り(ガス)
・脳の不調:頭痛、集中力低下、頭がぼーっとする(ブレインフォグ)
・メンタルの不調:気分の落ち込み、イライラ、不安感
・皮膚の不調:ニキビ、アトピー性皮膚炎、湿疹
・全身の不調:慢性的な疲労感、関節痛、筋肉痛
これらの症状は、小麦を食べてからすぐに出るわけではなく、数時間から数日経ってから現れるため、まさか小麦が原因だとは気づきにくいのが特徴です。
この、原因不明の「なんとなく不調」から抜け出すための食事法が、グルテンフリーです。
◆グルテンフリーを上手に続けるコツ
「パンもパスタも食べられないなんて、無理!」
そう思われたかもしれません。しかし、心配はいりません。最近では、グルテンフリーを実践する人が増えたおかげで、美味しくて便利な代替品がたくさん登場しています。
【コツ1】「置き換え」の発想を持つ
・小麦粉のパスタ → 米粉パスタ、玄米パスタ、とうもろこし粉パスタ
・うどん、ラーメン → ビーフン、フォー、十割そば
・パン → 米粉パン
・天ぷらやフライの衣 → 米粉、片栗粉
・ホワイトソースやカレールウ → 米粉で手作りする
「食べてはいけない」ではなく、「これで代用できる」と考えるだけで、ストレスなく続けることができます。
【コツ2】まずは「2週間」試してみる
本当にグルテンが自分の体に合わないのかどうかを確かめるために、まずは2週間、徹底的に小麦製品を断ってみてください。もし、これまで悩まされていた不調が嘘のように軽くなったら、あなたにとってグルテンは「毒」だった可能性が高いでしょう。その体の変化を一度実感すれば、もう積極的に食べたいとは思わなくなるはずです。
◆治療家としての視点
グルテンが引き起こす腸の炎症は、「リーキーガット(腸漏れ)症候群」という、より深刻な問題につながる可能性があります。
これは、腸の粘膜に穴が空き、そこから未消化の食べ物や毒素、細菌などが血液中に漏れ出してしまう状態です。
血液中に漏れ出した異物は、全身を巡って様々な場所で炎症を起こし、アレルギー疾患や自己免疫疾患、さらには精神疾患のリスクまで高めることがわかっています。
グルテンフリーは、単に体調を良くするためだけでなく、こうした深刻な病気から身を守るための、非常に重要な予防策でもあるのです。
毎朝食べているパンを、一度、ご飯と味噌汁に変えてみる。それだけの小さな一歩が、あなたの人生を大きく変えるかもしれません。
カラダ適正化 14. カゼイン・乳糖フリー
〜「牛乳は体に良い」という神話を疑ってみる
牛乳、ヨーグルト、チーズ…。
これらは、カルシウムが豊富で「健康に良い食品」の代表格として、長年親しまれてきました。しかし、その「常識」は、現代の栄養学では覆されつつあります。
実は、牛乳に含まれる2つの成分が、多くの日本人にとって、不調の原因となっている可能性があるのです。
【原因1】カゼイン
牛乳に含まれるタンパク質の約8割を占めるのが、「カゼイン」です。このカゼインは、非常に分子が大きく、人間にとっては消化しにくいタンパク質です。
未消化のカゼインは、グルテンと同様に腸の粘膜に炎症を引き起こし、「リーキーガット」の原因となります。また、アレルギー反応を引き起こしやすく、鼻炎や喘息、アトピー性皮膚炎といった症状を悪化させることも指摘されています。
さらに、カゼインが分解される過程で生まれる「カソモルフィン」という物質には、モルヒネに似た作用があり、脳に快感を与え、依存性を生み出すとも言われています。「牛乳やチーズがやめられない」という方は、このカソモルフィンの影響を受けているのかもしれません。
【原因2】乳糖(ラクトース)
牛乳に含まれる糖質が「乳糖」です。乳糖を分解するためには、「ラクターゼ」という消化酵素が必要ですが、実は、日本人の多くは、成人するとこのラクターゼの活性が低下、あるいは失われてしまいます。これを「乳糖不耐症」と言います。
乳糖不耐症の人が牛乳を飲むと、分解されなかった乳糖がそのまま大腸に届き、悪玉菌のエサとなって異常発酵を起こします。その結果、お腹がゴロゴロしたり、ガスが溜まったり、下痢をしたりするのです。
こうした明確な症状がなくても、自覚のないまま腸に負担をかけ続けている人は、非常に多いと考えられています。
◆牛乳の「質」の問題
現代の一般的な乳牛は、狭い牛舎に押し込められ、病気を防ぐための抗生物質や、成長を早めるためのホルモン剤、そして遺伝子組み換えの飼料を与えられて育っているケースが少なくありません。こうした化学物質は、牛乳にも含まれ、間接的に私たちの体に入ってきてしまいます。
◆牛乳の代わりになるものは?
カゼイン、乳糖、そして酪農環境の問題。こうした三重のリスクを考えると、私は牛の乳製品を避けることをお勧めします。
では、牛乳の代わりに何を選べばいいのでしょうか。
・植物性ミルク:アーモンドミルク、ココナッツミルク、オーツミルクなどが代替品となります。選ぶ際は、砂糖や添加物が含まれていない、シンプルな原材料のものを選びましょう。
・ヤギ乳製品:ヤギの乳(ゴートミルク)は、牛乳に比べてカゼインの量が少なく、脂肪球も小さいため、消化しやすいという特徴があります。また、ヤギは比較的自然な環境で育てられていることが多く、化学物質のリスクも低いと考えられます。フェタチーズやゴートヨーグルトなどもお勧めです。
「骨のためにカルシウムを」と考えるなら、牛乳よりも、小魚、海藻、緑黄色野菜、大豆製品などから摂る方が、はるかに効率的で安全です。
長年信じてきた「牛乳神話」から一度離れて、自分の体に本当に合った選択をしてみませんか。
現在、乳製品をとると、35疾患を患うリスクがあると報告されています。
カラダ適正化 15. 中鎖脂肪酸
〜 脳と体を活性化する「奇跡のオイル」を味方につける
油は太る、はもう古い。
良い油は、むしろ健康とダイエットの強い味方になる、というお話をしてきました。
その中でも、特に積極的に摂りたい「スーパーオイル」が、ココナッツオイルやMCTオイルに豊富に含まれる「中鎖脂肪酸」です。
一般的な植物油や動物の脂に含まれる「長鎖脂肪酸」に比べて、中鎖脂肪酸は、その名の通り、分子の鎖の長さが半分くらいしかありません。この「短さ」が、驚くべき健康効果の秘密なのです。
◆中鎖脂肪酸の3大メリット
【メリット1】脂肪になりにくく、速攻でエネルギーになる!
長鎖脂肪酸は、体内で分解・吸収されるまでに時間がかかり、エネルギーとして使われなかった分は、脂肪として蓄積されやすいという特徴があります。
一方、中鎖脂肪酸は、肝臓に直接運ばれて、約4倍の速さで分解され、すぐにエネルギーに変換されます。つまり、体脂肪として蓄積されにくい、「太りにくい油」なのです。
【メリット2】脳の最高のエネルギー源「ケトン体」をつくり出す!
中鎖脂肪酸は、肝臓で分解される過程で「ケトン体」という物質を大量に生成します。
脳のエネルギー源はブドウ糖だけ、と思われがちですが、実はこのケトン体も、脳にとって非常に優れたエネルギー源となります。
むしろ、ブドウ糖のように血糖値を乱高下させることがないため、脳にとってはより安定した、クリーンなエネルギーと言えます。
ケトン体をエネルギーとして使える「ケトン体質」になると、
・集中力や記憶力が向上する
・頭がクリアになり、思考が冴える
といった、脳のパフォーマンス向上効果が期待できます。
アルツハイマー型認知症の予防・改善効果についても、世界中で研究が進められています。
【メリット3】強力な抗炎症・抗菌作用
中鎖脂肪酸に含まれる「ラウリン酸」や「カプリル酸」には、体内の炎症を抑えたり、悪玉菌やウイルス、カビ(カンジダ菌など)の増殖を抑制したりする、強力な作用があることがわかっています。
腸内環境を整え、免疫力を高める助けにもなってくれるのです。
◆中鎖脂肪酸の上手な摂り方
・普段の調理油をココナッツオイルに:炒め物や揚げ物など、加熱料理に使う油をココナッツオイルに変えてみましょう。甘い香りが気になる方は、香りのないタイプも市販されています。
・飲み物に加える:コーヒーや紅茶、スムージーなどに、小さじ1杯程度のMCTオイル(中鎖脂肪酸だけを抽出したオイル)を加えるのが、最も手軽で効率的な方法です。後述する「パフォーマンスを上げる朝のコーヒー」は、このMCTオイルを活用したものです。
中鎖脂肪酸は、まさに「脳と体を最適化する」ための奇跡のオイルです。
あなたの食生活に、この賢いエネルギー源を取り入れて、眠っているポテンシャルを最大限に引き出しましょう。
カラダ適正化 16. 良質な動物性脂肪
〜「クリーンな肉」を選べば、肉は最高の栄養源になる
「肉の脂は、体に悪い」
「コレステロールが上がるから、肉は控えるべき」
長年、動物性の脂肪は健康の敵のように扱われてきました。しかし、近年の研究では、その常識は大きく見直されています。
むしろ、質の悪い植物油(トランス脂肪酸や、酸化したオメガ6系脂肪酸)を摂るくらいなら、質の良い動物性脂肪を摂る方が、はるかに健康的であるというエビデンスが、次々と報告されているのです。
問題は、動物性脂肪そのものではなく、その「質」にあります。
あなたがスーパーで安く手に入れることができる肉は、一体どんな環境で、何を食べて育った動物のものでしょうか?
・狭いケージに押し込められ、ストレスフルな環境
・病気を防ぐための、大量の抗生物質の投与
・早く太らせるための、成長ホルモン剤の使用
・コストを抑えるための、遺伝子組み換えのトウモロコシや大豆を主原料とする飼料
こうした環境で育った家畜の肉には、様々な化学物質が残留しており、その脂肪にも炎症を引き起こす物質が多く含まれています。私たちが本当に避けるべきは、こうした「汚染された肉(ダーティーミート)」なのです。
では、どんな肉を選べばいいのでしょうか。
答えは、動物が本来あるべき姿で、自然なものを食べて育った「クリーンな肉」を選ぶことです。
◆選ぶべき「クリーンな肉」の例
・グラスフェッドビーフ(牧草牛):その名の通り、広大な牧草地で放牧され、牧草(grass)だけを食べて育った牛の肉です。穀物で育った牛に比べて、炎症を抑えるオメガ3系脂肪酸や、抗酸化作用のあるビタミン類が豊富に含まれています。
・平飼いの鶏肉・鶏卵:ケージではなく、地面を自由に歩き回れる環境(平飼い)で育った鶏の肉や卵です。ストレスが少なく、エサにもこだわっている場合が多いため、質が高いと言えます。
・ジビエ(野生鳥獣肉):シカやイノシシなど、自然界で育った野生動物の肉です。高タンパク・低脂肪で、鉄分やミネラルが非常に豊富。まさに究極のクリーンミートと言えるでしょう。
◆治療家としての視点
良質な肉は、私たちの体をつくる上で欠かせない、最高の栄養源です。
・筋肉、骨、皮膚、髪、ホルモンなどの材料となる良質なタンパク質
・エネルギー代謝に不可欠なビタミンB群
・血液の材料となるヘム鉄(植物性の鉄より吸収率が格段に高い)
・やる気や免疫力を高める亜鉛
これらを効率よく摂取できる、完璧な食材なのです。
特に、疲れやすい、気力がわかない、風邪をひきやすいといった不調を抱えている方は、タンパク質や鉄分が不足している可能性が高いです。
もちろん、クリーンな肉は、一般的な肉に比べて価格は高くなります。しかし、それは、質の悪い肉を食べ続けることで将来的に支払うことになるであろう、高額な医療費への「先行投資」だと考えてみてください。
これからは、「何の肉を食べるか」だけでなく、「どんな育ち方をした肉を食べるか」という視点を持つこと。それが、真の健康への第一歩です。
カラダ適正化 17. 細胞にいい油
〜 炎症を抑える「オメガ3」を積極的に摂る
私たちの体の中では、常に「火事(炎症)」と「消火(抗炎症)」の戦いが繰り広げられています。この戦いのバランスが崩れ、「火事」が優勢になってしまうと、慢性炎症が全身に広がり、老化や様々な病気を引き起こします。
この戦いの行方を左右する、重要な鍵を握っているのが、私たちが食事から摂る「油(脂肪酸)」の種類です。
特に重要なのが、体内でつくることができない「必須脂肪酸」である、「オメガ6系脂肪酸」と「オメガ3系脂肪酸」のバランスです。
・オメガ6系脂肪酸:体内で「火事を起こす(炎症促進)」働きを持つ。
・オメガ3系脂肪酸:体内で「火事を消す(炎症抑制)」働きを持つ。
この二つは、車のアクセルとブレーキのように、互いに相反する働きをしています。どちらも体に必要なものですが、重要なのはそのバランスです。専門家の間では、理想的な摂取バランスは「オメガ6:オメガ3 = 4:1 以下」と言われています。
しかし、現代人の食生活は、このバランスが「20:1」あるいはそれ以上にまで、極端にオメガ6に偏ってしまっているのです。
なぜなら、
・オメガ6系脂肪酸は、大豆油、コーン油、サラダ油、ごま油といった、安価で大量生産される植物油や、スナック菓子、加工食品に非常に多く含まれている。
・オメガ3系脂肪酸は、青魚、アマニ油、エゴマ油、クルミといった、限られた食品にしか含まれていない。
からです。
つまり、意識しなければ、私たちは体の中で常に「火事」を燃え盛らせるような食事をしている、ということ。これが、現代人にアレルギーや生活習慣病、うつ病などが増えている、大きな原因の一つだと考えられています。
この燃え盛る火事を消し、体を健康な状態に戻すためには、以下の2つのアプローチが必要です。
1.「オメガ6系脂肪酸」の摂取を減らす
・炒め物や揚げ物に使う油を、サラダ油やごま油から、熱に強いオリーブオイルやココナッツオイル、米油などに変える。
・スナック菓子やカップ麺、スーパーの惣菜といった加工食品をできるだけ避ける。
2.「オメガ3系脂肪酸」の摂取を増やす
・サバ、イワシ、サンマ、アジといった青魚を、週に2〜3回は食卓に乗せる。(※養殖魚はオメガ6の割合が高いため、なるべく天然ものを選ぶ)
・熱に弱いアマニ油やエゴマ油を、サラダのドレッシングや、納豆、スープなどに、毎日小さじ1杯程度かけて食べる。(※必ず遮光瓶に入った、冷蔵保存のものを選ぶ)
・間食にクルミやチアシードを取り入れる。
・質の良いフィッシュオイルサプリメントを活用する。
◆治療家としての視点
オメガ3系脂肪酸は、炎症を抑えるだけでなく、
・血液をサラサラにして、動脈硬化や心筋梗塞を予防する
・脳の神経細胞の材料となり、記憶力や集中力を高める
・アレルギー症状(アトピー、花粉症など)を緩和する
・気分を安定させ、うつ症状を軽減する
といった、数多くの素晴らしい効果が報告されています。
油を選ぶことは、体の中の「火消し役」を雇うか、「火付け役」を雇うかを選ぶことと同じです。
今日から、あなたの食卓に優秀な「火消し隊」を常駐させ、細胞レベルからの健康を手に入れましょう。
カラダ適正化 18. スーパーフード
〜 古代の知恵が凝縮された「天然のサプリメント」
「スーパーフード」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
明確な定義はありませんが、一般的に、
・栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い
・ある特定の栄養・健康成分が突出して多く含まれる
・料理の食材としての用途と、健康食品としての用途をあわせもつ
といった食品のことを指します。
まさに、自然界が生み出した「天然のサプリメント」と言えるでしょう。
スーパーフードの多くは、何千年もの昔から、過酷な自然環境に暮らす人々によって、滋養強壮や病気の治療のために食されてきた、歴史と実績のあるものばかりです。
現代科学によってその驚くべき効果が次々と証明され、健康意識の高い人々の間で、世界的なブームとなっています。
ここでは、数あるスーパーフードの中から、特に効果が期待でき、比較的手に入りやすいものをいくつかご紹介します。
◆目的別・おすすめスーパーフード
【腸内環境を整え、デトックスしたいなら】
・チアシード:ゴマのような見た目の種子。水分を含むとゼリー状に膨らみ、満腹感を得やすい。水溶性・不溶性の両方の食物繊維が豊富で、腸内環境を整え、便通を改善する効果が期待できます。オメガ3脂肪酸も豊富。
・スピルリナ:30億年以上前に誕生したとされる藻の一種。タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など50種類以上もの栄養素を含みます。特に、葉緑素(クロロフィル)が豊富で、体内の有害物質を吸着して排出するデトックス効果が高いと言われています。
【老化を防ぎ、美肌を目指すなら(抗酸化)】
・アサイー:アマゾン原産のヤシ科の果実。抗酸化作用の強いポリフェノール(特にアントシアニン)の含有量が、食品の中でもトップクラス。鉄分やカルシウムも豊富で、貧血予防にも。
・ゴジベリー(クコの実):杏仁豆腐の上に乗っている赤い実。ビタミンC、βカロテン、ゼアキサンチンといった抗酸化物質が豊富で、「食べる日焼け止め」とも呼ばれます。眼精疲労の回復にも効果的。
・カカオ:チョコレートの原料。カカオポリフェノールには強力な抗酸化作用があり、動脈硬化予防や血圧低下、ストレス軽減などの効果が報告されています。砂糖の少ない、カカオ含有量70%以上のダークチョコレートを選びましょう。
【エネルギーを高め、活力を得たいなら】
・マカ:アンデス山脈の過酷な環境で育つ、カブのような植物。必須アミノ酸やビタミン、ミネラルが豊富で、滋養強壮、疲労回復、ホルモンバランスの調整などの効果で知られます。
・ヘンプシード(麻の実):必須アミノ酸をすべて含む良質なタンパク質と、理想的なバランスの必須脂肪酸(オメガ6とオメガ3)が特徴。筋肉の維持や疲労回復をサポートします。
◆スーパーフードの上手な摂り方
多くはパウダー状や乾燥した状態で販売されています。
・スムージーやヨーグルト、オートミールに混ぜる
・サラダやスープにトッピングする
といった方法で、手軽に毎日の食事に取り入れることができます。
◆治療家としての視点
私が特にお勧めしたいスーパーフードは、「モリンガ」です。
「奇跡の木」とも呼ばれるモリンガは、インドの伝統医学アーユルヴェーダでも古くから重宝されてきました。ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ポリフェノールなど、90種類以上もの栄養素を含み、そのバランスも非常に優れています。
特に、抗酸化作用と抗炎症作用が強く、デトックス効果も高いため、「総合的な健康レベルを底上げしたい」という方には、まさにうってつけのスーパーフードです。私はパウダー状のものを、毎朝のスムージーに加えています。
スーパーフードは、あくまで食事の補助として活用するものです。しかし、その一さじが、あなたの体に足りなかった「最後のピース」を埋め、驚くべき変化をもたらしてくれるかもしれません。
カラダ適正化 19. ボーンブロス
〜 手作りの「飲む美容液」で、腸と肌を修復する
「ボーンブロス」と聞くと、何か特別な料理のように聞こえるかもしれませんが、その正体は、牛や鶏、魚の「骨(ボーン)」をコトコト煮込んでとった「出汁(ブロス)」、つまり「ガラスープ」のことです。
世界中の伝統的な家庭料理で、昔からごく普通につくられてきた、このシンプルなスープ。実は近年、その驚くべき健康・美容効果が科学的に見直され、「飲む美容液」「究極の腸活スープ」として、再び脚光を浴びています。
骨を長時間煮込むことで、骨や骨髄、そして骨についている軟骨や結合組織から、現代人が不足しがちな栄養素が、スープの中にたっぷりと溶け出します。
◆ボーンブロスに溶け出す、魔法の栄養素
・コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン:肌のハリや潤いを保ち、関節の動きを滑らかにする成分。サプリメントで摂るより、はるかに体に吸収されやすい形で摂取できます。
・アミノ酸(グリシン、プロリン、グルタミンなど):筋肉や臓器の修復、デトックス、そして後述する「腸の粘膜」を修復するために不可欠な材料です。
・ミネラル(カルシウム、マグネシウム、リンなど):骨や歯を丈夫にし、神経の働きを正常に保つために必要な栄養素です。
◆ボーンブロスが「リーキーガット」を癒す
ボーンブロスがもたらす最大の恩恵は、「リーキーガット(腸漏れ)症候群」の改善が期待できることです。
リーキーガットとは、ストレスや食生活の乱れなどによって腸の粘膜が傷つき、バリア機能が壊れてしまった状態のこと。腸壁に隙間ができてしまい、そこから未消化の食べ物や毒素が血液中に漏れ出して、全身でアレルギーや炎症を引き起こします。
アトピー性皮膚炎や花粉症、原因不明の疲労感、自己免疫疾患といった、現代人を悩ませる不調の多くは、このリーキーガットが根底にあると考えられています。
ボーンブロスに豊富に含まれるコラーゲンやグルタミンといった成分は、この傷ついた腸の粘膜を修復し、強化するための、最高の「補修材」となります。腸の穴を塞ぎ、バリア機能を回復させることで、全身の炎症を鎮め、様々な不調を根本から改善へと導いてくれるのです。
◆ボシンプるなボーンブロスの作り方
作り方は、驚くほど簡単です。
①質の良い骨(グラスフェッドビーフの牛骨、平飼い鶏の鶏ガラ、天然魚のアラなど)を用意する。
②大きな鍋に骨と、かぶるくらいの水を入れ、少量の酢(骨からミネラルを引き出すため)を加える。
③沸騰したらアクを取り、あとは蓋をして、弱火でひたすらコトコト煮込む。(鶏ガラなら4時間〜、牛骨なら8時間〜が目安)
④骨を取り除き、スープを濾せば完成。冷蔵庫で保存し、飲む際に温めて、良質な塩で味を調えます。
◆治療家としての視点
ボーンブロスは、栄養価が高いだけでなく、消化に負担がかからないため、食欲がない時や、体調が優れない時の栄養補給にも最適です。
また、固形物を摂らない「ファスティング(断食)」を行う際に、ボーンブロスを飲むことで、空腹感を和らげながら、腸を休ませ、修復することができます。
市販の顆粒だしやコンソメには、化学調味料や質の悪い添加物が含まれていることが多いため、ぜひ一度、ご家庭で手作りしてみてください。
あなたの体を内側から温め、癒し、再生してくれる、滋味深い黄金のスープ。その効果に、きっと驚くはずです。
カラダ適正化 20. 腸活食事術
〜「育菌」と「守菌」で、最強の腸内フローラをつくる
腸内環境、すなわち「腸内フローラ」を整えることが、心と体の健康の鍵であることは、もはや疑いのようのない事実です。
では、具体的に、どうすれば理想的な腸内フローラ(善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7)をつくり、維持することができるのでしょうか。
そのための食事術のキーワードは、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」です。
1.プロバイオティクス 〜 良い菌を「直接」摂り入れる
プロバイオティクスとは、体に良い影響を与える微生物、つまり「善玉菌」そのもの、またはそれを含む食品のことです。
腸内に優秀な善玉菌部隊を送り込み、腸内フローラのバランスを直接的に改善しようというアプローチです。
◆プロバイオティクスが豊富な食品
・発酵食品:ヨーグルト、チーズ、納豆、味噌、醤油、ぬか漬け、キムチ、ザワークラウト(キャベツの酢漬け)、コンブチャ(紅茶キノコ)など。
これらの食品には、乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌、麹菌といった、多種多様な善玉菌が生きたまま含まれています。
【選ぶ際の注意点】
・ヨーグルト:砂糖が添加されていないプレーンなものを選びましょう。できれば牛乳由来ではなく、ヤギ乳や豆乳、ココナッツミルクなどで作られたものがお勧めです。
・味噌、醤油:伝統的な製法で、じっくりと時間をかけて発酵・熟成させたものを選びましょう。安価なものは、アルコールや添加物で発酵を止めている場合があります。
・キムチ:本来、乳酸発酵させて作るものですが、市販品の多くは、調味液に漬けただけの「キムチ風浅漬け」です。原材料表示を見て、「発酵」の記載があるものや、酸味のある本格的なものを選びましょう。
2.プレバイオティクス 〜 自分の腸にいる良い菌を「育てる」
プレバイオティクスとは、腸内にすでに棲んでいる善玉菌の「エサ」となり、その増殖を助ける食品成分のことです。
外から菌を補うだけでなく、自分の腸にもともといる「マイ善玉菌」を元気に育てて、数を増やそうというアプローチです。
◆プレバイオティクスが豊富な食品
・水溶性食物繊維:ゴボウ、ニンジン、オクラ、アボカド、海藻類(ワカメ、昆布)、きのこ類、大麦、オートミールなど。水に溶けてゲル状になり、善玉菌のエサとなるだけでなく、便を柔らかくして排出しやすくする働きもあります。
・オリゴ糖:玉ねぎ、ネギ、ニンニク、アスパラガス、バナナ、大豆など。消化されずに大腸まで届き、ビフィズス菌などの善玉菌のエサとなります。
◆治療家としての視点
「腸活」というと、ヨーグルトや乳酸菌飲料を一生懸命摂る、というイメージが強いかもしれません。しかし、外から摂った菌が、自分の腸に定着するとは限りません。
そこで重要になるのが、「プロバイオティクス(摂る)」と「プレバイオティクス(育てる)」を、両方同時に行うことです。
例えば、
・ヨーグルトに、バナナやオリゴ糖シロップを加える。
・納豆に、メカブやオクラを混ぜる。
・味噌汁に、ワカメやゴボウ、きのこをたっぷり入れる。
このように、善玉菌とそのエサをセットで摂ることで、腸活の効果は飛躍的に高まります。
また、腸内細菌の種類は、人それぞれ異なります。一つの食品に偏らず、できるだけ多種多様な発酵食品や食物繊維を摂ることで、あなたの腸内フローラはより豊かで、たくましいものになっていくでしょう。
あなたの腸内にいる100兆個の小さな仲間たちに、最高の食事を提供してあげましょう。そうすれば、彼らは必ず、最高の健康という形でお返しをしてくれるはずです。
カラダ適正化 21. ホールフード(一物全体食)
〜 食べ物の「いのち」を丸ごといただく
「野菜や果物は、皮ごと食べた方が栄養がある」
「玄米は、白米よりも体にいい」
こんな話を、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
これは、科学的にも真実です。
・リンゴの皮には、強力な抗酸化作用を持つポリフェノールが、果肉の何倍も含まれている。
・大根の皮には、ビタミンCや食物繊維が豊富。
・お米の栄養素(ビタミン、ミネラル、食物繊維)のほとんどは、糠(ぬか)や胚芽(はいが)に集中しており、それらを削ぎ落とした白米は、単なる「糖質の塊」になってしまう。
このように、私たちが普段、何気なく捨ててしまっている皮や根、葉といった部分にこそ、植物が自らの身を守り、成長するための「生命力」が凝縮されているのです。
この、自然の恵みを余すところなく、「丸ごと(ホール)」いただくという食の考え方が、「ホールフード(一物全体食)」です。
しかし、ここで一つ、大きな問題があります。
それは、現代の一般的な農産物には、「残留農薬」のリスクがあるということです。
農薬は、雨風に流されないように、作物の表面、つまり皮の部分に最も多く付着しています。水で洗っても、完全に取り除くことは困難です。
もし、農薬まみれの野菜や果物を皮ごと食べたら、栄養を摂るどころか、有害な化学物質を一緒に体に取り込んでしまうことになりかねません。
だからこそ、ホールフードを実践する上での大前提となるのが、「安全な食材を選ぶ」ということです。
◆ホールフードのための食材選び
・無農薬・有機栽培(オーガニック)の野菜や果物を選ぶ:化学肥料や農薬を使わずに育てられたものなら、安心して皮ごと食べられます。
・玄米や全粒粉を選ぶ:白米を玄米に、白いパンを全粒粉パンに変えることは、ホールフードの最も簡単な実践法です。こちらも、できるだけ無農薬のものを選びましょう。
・魚も丸ごと:小魚(しらす、煮干しなど)を丸ごと食べることで、骨に含まれるカルシウムやミネラルを効率よく摂取できます。
◆治療家としての視点
ホールフードは、単に栄養価が高いというだけでなく、もう一つ重要なメリットがあります。それは、「消化吸収が穏やかになる」ということです。
皮や胚芽に含まれる食物繊維は、糖の吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇を防いでくれます。これは、第2部でお話しした「糖化」を防ぎ、生活習慣病を予防する上で、非常に重要です。
また、よく噛まなければ食べられないため、自然と咀嚼回数が増えます。よく噛むことは、
・唾液の分泌を促し、消化を助ける。
・満腹中枢を刺激し、食べ過ぎを防ぐ。
・脳の血流を増やし、認知機能を高める。
といった、多くのメリットをもたらします。
少し値段は張るかもしれませんが、無農薬の安全な食材を選ぶことは、「農薬を体に入れない」というデトックスと、「食べ物の生命力を丸ごといただく」という栄養補給を、同時に叶えてくれる、最高の健康投資です。
私たちは、他の動植物の「いのち」をいただくことで、自らの「いのち」を繋いでいます。
その「いのち」に感謝し、余すところなく丸ごといただく。ホールフードとは、そんな生命の根源に立ち返る、最も自然で、最も理にかなった食事法なのです。
カラダ適正化 22. 地中海食
〜 世界が認めた「健康長寿食」の黄金ルール
世界には、他の地域に比べて、健康で長生きな人々が暮らす「ブルーゾーン」と呼ばれる場所がいくつか存在します。その中でも、イタリアのサルデーニャ島やギリシャのイカリア島といった、地中海沿岸の地域は特に有名です。
彼らの健康長寿の秘訣は、その伝統的な食生活にあるとして、世界中の研究者から注目を集めています。その食文化を体系化したものが、「地中海食」です。2010年には、ユネスコの無形文化遺産にも登録されました。
地中海食は、単なる食事法ではなく、心身ともに豊かに生きるための、ライフスタイルそのものと言えます。
◆地中海食の7つの黄金ルール
【ルール1】良質なオリーブオイルをふんだんに使う
地中海食の最大の特徴は、調理に使う油のほとんどがエキストラバージンオリーブオイルであることです。オリーブオイルに豊富な「オレイン酸」は、悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化や心疾患を予防する効果があります。また、ポリフェノールなどの抗酸化物質も豊富です。
【ルール2】野菜、果物、豆類、ナッツ類を毎日たっぷり食べる
季節の新鮮な野菜や果物を、毎日、山のように食べます。これらは、抗酸化作用のあるビタミンやフィトケミカル、そして腸内環境を整える食物繊維の宝庫です。レンズ豆やひよこ豆などの豆類、クルミやアーモンドなどのナッツ類も、重要なタンパク源・脂質源として日常的に食されます。
【ルール3】主食は全粒穀物
パンやパスタも食べますが、精製された白いものではなく、食物繊維やミネラルが豊富な全粒粉のものが中心です。
【ルール4】魚介類を頻繁に食べる
肉よりも、イワシやサバといった近海で獲れる青魚をよく食べます。これにより、炎症を抑えるオメガ3系脂肪酸を十分に摂取しています。
【ルール5】乳製品は、ヨーグルトやチーズを適度に
牛乳をそのまま飲む習慣はあまりなく、発酵食品であるヨーグルト(特にギリシャヨーグルト)やチーズ(特にフェタチーズなどヤギや羊の乳から作られたもの)を適量、楽しみます。
【ルール6】肉や卵は、控えめに
赤身肉(牛肉や豚肉)を食べる頻度は、月に数回程度と、非常に少ないのが特徴です。鶏肉や卵は、それよりは少し多く食べます。
【ルール7】食事は、家族や仲間と楽しく!
これが、最も重要なルールかもしれません。地中海地域の人々は、食事を単なる栄養補給とは考えていません。家族や友人と食卓を囲み、ワインを片手に(適量です)、語らい、笑い合う。この「共食」の文化が、ストレスを和らげ、心を満たし、人生を豊かにしているのです。
◆治療家としての視点
地中海食は、まさに、これまでこの本でお話ししてきた「カラダ適正化」の食事術を、すべて網羅したような、理想的な食事スタイルです。
・良質な油(オメガ9、オメガ3)が中心
・抗酸化、抗炎症作用のある食品が豊富
・腸内環境を整える発酵食品と食物繊維をしっかり摂取
・血糖値を上げにくい低糖質な食事構成
私たち日本人が、この地中海食を完全に真似する必要はありません。しかし、そのエッセンスは、大いに参考にすることができます。
・調理油をオリーブオイルに変えてみる
・白米に豆や雑穀を混ぜてみる
・肉料理を減らし、魚料理を増やしてみる
・食事の時間は、テレビやスマホを消して、家族との会話を楽しんでみる
こうした小さな工夫を積み重ねることが、あなたを地中海の人々のような、健康で幸せな長寿へと導いてくれるでしょう。
カラダ適正化 23. 正しい水分補給
〜 命の源「水」で、細胞を内側から洗い流す
「人間の体の約60%は水でできている」
これは、誰もが知っている事実です。しかし、その「水」の重要性を、私たちは本当に理解しているでしょうか。
体内の水は、単に体を満たしているだけではありません。
・血液として、酸素や栄養素を全身の細胞に届け、老廃物を回収する。
・リンパ液として、免疫機能やデトックスを担う。
・細胞内液として、細胞の形を保ち、生命活動を支える。
このように、水は、私たちの命を維持するための、最も根源的なインフラなのです。
このインフラが滞り、水分が不足すると、私たちの体には様々なトラブルが発生します。
・血液がドロドロになり、血流が悪化。肩こり、冷え性、むくみの原因に。
・老廃物や毒素が体内に溜まりやすくなる。
・細胞が乾燥し、肌のシワやたるみ、機能低下を招く。
・脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まる。
たかが水、と侮ってはいけません。正しい水分補給は、最も簡単で、最も安価な、最高のデトックス法であり、アンチエイジング法なのです。
◆1日にどれくらい飲めばいい?
1日に必要な水分量は、年齢や体重、活動量によって異なりますが、一般的な目安としては「1.5リットル〜2リットル」と言われています。
汗をかく運動をした日や、夏場は、それ以上にこまめな補給が必要です。
◆正しい水の飲み方 5つのルール
【ルール1】「喉が渇く前」に飲む
「喉が渇いた」と感じた時には、すでに体は水分不足の状態に陥っています。そうなる前に、意識的に、こまめに飲む習慣をつけましょう。
【ルール2】「一気飲み」ではなく「ちびちび飲み」
一度に大量の水を飲んでも、体は吸収しきれず、すぐに尿として排出されてしまいます。コップ1杯程度の量を、1〜2時間おきに、ちびちびと飲むのが最も効率的です。
【ルール3】「冷水」ではなく「常温」か「白湯」で
冷たい水は、内臓を冷やし、胃腸の働きや代謝を低下させてしまいます。特に、朝一番に飲む水は、体を内側から温めてくれる「白湯」が最適です。
【ルール4】飲むべきは「水」。ジュースやお茶では代わりにならない
コーヒーやお茶には利尿作用があり、かえって水分を排出してしまいます。ジュースやスポーツドリンクは、糖分の摂りすぎにつながります。水分補給の基本は、あくまでも「真水」です。
【ルール5】「食事中」は飲みすぎない
食事中に水をがぶがぶ飲むと、消化に必要な胃液が薄まり、消化不良の原因となります。食事中は、口を湿らせる程度に留めましょう。
◆治療家としての視点
どんな水を選ぶかも、非常に重要です。水道水には、消毒のための塩素や、水道管からの不純物が含まれている可能性があります。
できれば、有害物質をしっかりと除去してくれる、高性能な浄水器を設置することをお勧めします。
また、私は、細胞のサビ(酸化)を防ぐ助けとなると言われる「水素水」や「還元水」を、日常的に飲むようにしています。
私たちの体は、常に新しい水で満たされ、洗い流されることを必要としています。
体内の水を、よどんだ川から、清らかな湧水へと変えてあげること。
それが、細胞レベルから若返るための、第一歩です。
カラダ適正化 24. パフォーマンスを上げる朝のコーヒー
〜 脳を覚醒させ、脂肪燃焼を加速する「完全無欠」の一杯
日本でもベストセラーとなった『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』という本をご存知でしょうか。
著者のデイヴ・アスプリー氏が、自らの体を実験台にして編み出した食事法の中で、その象徴として紹介されているのが、「完全無欠コーヒー(原書名:Bulletproof Coffee)」です。
これは、朝食の代わりに、「良質なコーヒー」に「グラスフェッドバター」と「MCTオイル」を加えて、ミキサーで撹拌したものです。
「朝からコーヒーにバターとオイル? カロリーが高くて太りそう…」
そう思われるかもしれませんが、この一杯には、あなたの午前中のパフォーマンスを劇的に引き上げ、体を脂肪燃焼モードに変える、驚くべき秘密が隠されています。
◆完全無欠コーヒーが「完全無欠」である3つの理由
【理由1】良質な脂質が、安定したエネルギーを供給する
このコーヒーの主役は、バターとMCTオイルという「良質な脂質」です。
脂質は、糖質のように血糖値を急上昇させることがないため、インスリンの分泌を刺激しません。そのため、午前中、血糖値が安定した状態が続き、眠気や空腹感に襲われることなく、高い集中力を維持することができます。
【理由2】MCTオイルが、脳を最高の状態に保つ
MCTオイル(中鎖脂肪酸)は、速やかに肝臓で分解され、脳の最高のエネルギー源である「ケトン体」を生成します。これにより、脳は冴えわたり、思考がクリアになります。まさに、脳のガソリンをハイオクに入れ替えるようなものです。
【理由3】カフェインとポリフェノールが、体を守り、活性化する
コーヒーに含まれるカフェインには、脳の炎症を防ぎ、覚醒作用や集中力を高める効果があります。また、クロロゲン酸などのポリフェノールには、強力な抗酸化作用があり、細胞の老化を防いでくれます。さらに、腸内の善玉菌を増やし、ダイエットを助ける効果も報告されています。
このように、3つの材料がもたらす相乗効果によって、完全無欠コーヒーは、
・脳のパフォーマンスを最大化する
・空腹感なく、午前中の集中力を維持する
・体を脂肪燃焼モード(ケトン体質)に切り替える
という、まさに「完全無欠」な効果を発揮するのです。
◆完全無欠コーヒーの作り方と注意点
①質の良いコーヒー豆を用意する。(カビ毒のリスクが少ない、高品質な豆を選ぶ)
②淹れたてのホットコーヒー(200ml程度)をミキサーに入れる。
③グラスフェッドバター(またはギー)を大さじ1杯加える。
④MCTオイルを小さじ1杯〜大さじ1杯加える。(※最初は少量から始め、お腹がゆるくならないか様子を見る)
⑤オイルが完全に混ざり合い、ラテのように乳化するまで、ミキサーで10〜20秒ほど撹拌する。
【注意点】
・必ずミキサーで撹拌してください。スプーンで混ぜるだけではオイルが分離し、本来の効果が得られません。
・朝食は、このコーヒーだけにします。何か固形物を一緒に食べてしまうと、インスリンが分泌され、脂肪燃焼モードが止まってしまいます。
◆治療家としての視点
私は、牛乳に含まれるカゼインや乳糖のリスクを避けるため、バターの代わりに、それらが除去された「ギー」を使うことをお勧めしています。
ギーは、インドの伝統医学アーユルヴェーダでは「黄金のオイル」と呼ばれ、古くから珍重されてきました。腸内環境を整える「酪酸」も豊富で、より健康効果が高いと言えます。
朝の忙しい時間に、固形の朝食を準備し、食べる必要がなくなるため、時間の節約にもなります。
最高の頭脳と、脂肪を燃やす体を手に入れるための一杯。
あなたも、この「飲むブレインフード」で、最高の1日をスタートさせてみませんか。
カラダ適正化 25. 太らない間食
〜 空腹は我慢しない!「賢く食べる」が正解
「ダイエット中だから、間食は絶対にダメ!」
そう思って、お腹がグーグー鳴るのを必死に我慢していませんか?
実は、その「我慢」が、かえってあなたを太らせる原因になっているかもしれません。
強い空腹感のまま次の食事を迎えると、血糖値が急激に上がりやすいご飯やパンなどの糖質をドカ食いしてしまったり、早食いになって食べ過ぎてしまったりしがちです。
その結果、血糖値はジェットコースターのように乱高下し、余った糖は脂肪として蓄えられ、さらに次の空腹感を呼ぶ…という、最悪の悪循環に陥ってしまうのです。
結論から言いましょう。
小腹が空いたら、我慢せずに間食をした方がいい。
ただし、そこには「何を選ぶか」という、賢い選択が必要です。
「太らない間食」の絶対的なルールは、「血糖値を急激に上げないものを選ぶ」ことです。
クッキー、ケーキ、スナック菓子、菓子パン、甘いジュースといった、砂糖と精製された炭水化物でできたものは、最悪の選択です。これらは、血糖値を一気に跳ね上げ、あなたを「肥満スパイラル」へと誘います。
選ぶべきは、血糖値の上昇が緩やかで、腹持ちの良い、タンパク質や良質な脂質が豊富な食品です。
◆治療家が選ぶ「太らない間食」ベスト5
【1位】ナッツ類
アーモンド、クルミ、マカダミアナッツなどは、良質な脂質、タンパク質、食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富な、まさに「天然のサプリメント」。よく噛むことで満腹感も得られます。ただし、カロリーは高めなので、手のひらに軽く一杯程度(20粒前後)が適量です。塩や油で加工されていない、素焼きの無塩タイプを選びましょう。
【2位】ハイカカオチョコレート
カカオ含有量70%以上のダークチョコレートは、抗酸化作用の強いカカオポリフェノールの宝庫。少量で満足感が得られ、ストレスを和らげる効果も期待できます。2〜3かけらを、ゆっくりと味わって食べましょう。
【3位】ゆで卵
卵は、必須アミノ酸をすべて含む、完全栄養食品。タンパク質が豊富で腹持ちが良く、ビタミンやミネラルもバランス良く含まれています。コンビニでも手軽に手に入る、優秀な間食です。
【4位】チーズ
プロセスチーズではなく、原材料が「生乳」と「食塩」だけの、ナチュラルチーズを選びましょう。タンパク質と脂質が主成分なので、血糖値はほとんど上がりません。特に、ハードタイプのチーズはよく噛む必要があり、満足感も高いです。
【5位】ギリシャヨーグルト(無糖)
通常のヨーグルトから水分(ホエイ)を取り除いたもので、タンパク質が2倍近く凝縮されています。クリーミーで食べ応えがあり、少量でも満足できます。必ず砂糖が添加されていない、無糖タイプを選びましょう。
◆治療家としての視点
賢い間食を挟むことで、次の食事でのドカ食いや早食いを防ぎ、1日を通した血糖値の安定につながります。結果的に、1日の総摂取カロリーは抑えられ、脂肪がつきにくい体質へと変わっていくのです。
どうしても甘いものが食べたくなった時は、プロテインパウダー(無糖・無添加のもの)を、無調整豆乳やアーモンドミルクで割って飲むのもお勧めです。タンパク質を補給しながら、甘いものへの欲求も満たすことができます。
空腹は、敵ではありません。体がエネルギーを欲している、正常なサインです。
そのサインに、賢く、質の良い食べ物で応えてあげること。
それが、ストレスなく続けられる、本当のダイエットなのです。
III. 日常習慣を最適化する 〜 健康長寿のベースを整える
どんなに食生活に気をつけても、日々の生活習慣が乱れていては、その効果は半減してしまいます。
私たちの体は、食事だけでなく、睡眠、運動、そして心の状態といった、生活のあらゆる側面から影響を受けている、非常に繊細なシステムだからです。
・夜、ぐっすり眠れていますか?
・日中、体を動かしていますか?
・心と頭を休ませる時間を、持てていますか?
この章では、あなたのパフォーマンスを根底から支え、健康長寿の揺るぎない土台を築くための、「新しい日常習慣」をご提案します。
食生活の改善が「体の内側からのアプローチ」だとすれば、これからお話しするのは「体の外側からのアプローチ」です。
この両輪がうまく噛み合った時、あなたの体は、いまだかつてないほどの、最高のコンディションに到達するはずです。
カラダ適正化 26. 瞑想
〜 1日5分の「脳の休息」で、パフォーマンスを最大化する
「瞑想」と聞くと、何か宗教的で、スピリチュアルなものを想像するかもしれません。
しかし、現代における瞑想は、科学的な効果が認められた、最高の「脳のトレーニング法」であり、究極の「ストレス解消法」として、世界中のエグゼクティブやトップアスリートたちが、日常的に実践しています。
アップル創業者のスティーブ・ジョブズや、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、元メジャーリーガーのイチロー選手など、各界の超一流たちが瞑想を習慣にしていたことは、有名な話です。
なぜ、彼らは忙しい合間を縫って、瞑想の時間を確保するのでしょうか。
それは、瞑想がもたらす、計り知れないメリットを知っているからです。
◆科学が証明した、瞑想の驚くべき効果
・ストレス軽減:ストレスホルモン「コルチゾール」の分泌を抑制し、精神的な安定をもたらす。
・集中力アップ:注意散漫になりがちな脳を鍛え、一つの物事に深く集中する力を高める。
・創造性の向上:雑念を取り払い、脳をクリアな状態にすることで、新しいアイデアが生まれやすくなる。
・記憶力の改善:脳の記憶を司る「海馬」の密度を高めることが報告されている。
・免疫力アップ:ストレス軽減や自律神経の安定により、免疫機能が向上する。
・睡眠の質の向上:心と体をリラックスさせ、スムーズな入眠を促す。
・幸福感の増大:幸せホルモン「セロトニン」の分泌を促し、ポジティブな感情を高める。
まさに、心・体・頭脳のすべてに、ポジティブな影響を与える万能ツールなのです。
◆誰でもできる、基本的な瞑想のやり方
瞑想に、難しいルールはありません。大切なのは、「今、この瞬間の、自分の呼吸に意識を集中する」ことだけです。
①楽な姿勢で座る:あぐらでも、椅子に座っていても構いません。背筋を軽く伸ばし、手は膝の上に置きます。
②軽く目を閉じる:完全に閉じても、半眼でもOKです。
③呼吸に意識を向ける:「鼻から息を吸って、口(または鼻)からゆっくり吐く」という、自分の呼吸の流れを、ただ静かに観察します。
④雑念が浮かんでもOK:「お腹すいたな」「あの仕事どうしよう」など、色々な考えが浮かんできますが、それを無理に打ち消そうとせず、「あ、今、こんなことを考えているな」と客観的に気づいて、またそっと呼吸に意識を戻します。
⑤まずは5分から:最初は5分でも構いません。慣れてきたら、10分、15分と、少しずつ時間を延ばしていきましょう。
◆治療家としての視点
現代人の脳は、常にスマートフォンやパソコンから流れ込む膨大な情報にさらされ、休む暇もなく働き続けています。これは、パソコンのメモリを常に使いっぱなしにしているようなもので、脳は慢性的な「情報疲労」を起こしています。
その結果、集中力が続かなくなったり、イライラしやすくなったり、物事をネガティブに捉えがちになったりするのです。
瞑想は、この酷使された脳を、強制的にシャットダウンし、休息させてあげるための、最も効果的な方法です。
例えるなら、脳の「再起動」。
パソコンも、再起動すると動きがスムーズになりますよね。それと同じように、瞑想によって脳の雑音(ノイズ)をリセットすることで、本来のクリアでパワフルな働きを取り戻すことができるのです。
私は、毎朝、仕事の前に15分間の瞑想を習慣にしています。これにより、頭の中が整理され、その日1日を、穏やかで集中した状態でスタートすることができます。
アプリなどを使えば、ガイド付きで手軽に始めることもできます。
1日たった5分。その静かな時間が、あなたの人生の質を、劇的に変えるかもしれません。
カラダ適正化 27. 熟睡習慣
〜 睡眠は、最強の「メンテナンス時間」である
「睡眠時間を削って、仕事や勉強に打ち込む」
かつては、そんな「ショートスリーパー」がもてはやされた時代もありました。
しかし、最新の科学は、それが最も愚かで、最も非効率的な行為であることを証明しています。
睡眠は、単に体を休ませるための時間ではありません。
それは、日中の活動で傷ついた心と体を修復し、翌日へのエネルギーを充電するための、最も重要な「メンテナンス時間」なのです。
私たちが眠っている間、体内では、驚くべきことが起こっています。
・成長ホルモンの分泌:脳や体の細胞を修復し、新陳代謝を促進する「若返りホルモン」が大量に分泌される。
・脳のクリーニング:脳内に溜まった老廃物(アミロイドβなど、アルツハイマー病の原因物質)が、脳脊髄液によって洗い流される。
・記憶の整理・定着:日中に学んだことや経験したことが、脳内で整理され、長期記憶として定着する。
・免疫システムの再構築:免疫細胞が活性化し、病気への抵抗力が高まる。
つまり、質の良い睡眠をとらないということは、これらの重要なメンテナンスをすべて放棄しているのと同じこと。それは、車をオイル交換もせずに走り続けるようなもので、いずれ心と体に深刻な不調をきたすのは、火を見るより明らかなのです。
では、どうすれば「質の良い睡眠」を手に入れることができるのでしょうか。
その鍵は、「メラトニン」と「セロトニン」という、二つのホルモンが握っています。
・メラトニン:夜になると分泌され、自然な眠りを誘う「睡眠ホルモン」。
・セロトニン:日中に分泌され、精神を安定させる「幸せホルモン」。そして、このセロトニンが、夜になるとメラトニンの材料となる。
つまり、夜ぐっすり眠るためには、日中にセロトニンを十分に分泌させておく必要があるのです。
◆最高の睡眠を手に入れるための7つの習慣
【習慣1】朝、太陽の光を浴びる
朝起きたら、まずカーテンを開けて、15分ほど太陽の光を浴びましょう。光の刺激が、体内時計をリセットし、セロトニンの分泌を促します。
【習慣2】日中に、リズム運動を行う
ウォーキング、ジョギング、サイクリングといった、一定のリズムを繰り返す運動は、セロトニンの分泌をさらに高めます。
【習慣3】寝る1〜2時間前に、ぬるめのお風呂に浸かる
38〜40℃くらいのぬるめのお湯に15分ほど浸かると、体の深部体温が一旦上がり、その後、急激に下がることで、自然な眠気が訪れます。
【習慣4】夜は、部屋の照明を暖色系の暗めにする
寝る前に、煌々とした白い光(特にLEDや蛍光灯)を浴びると、メラトニンの分泌が抑制されてしまいます。間接照明などを活用し、リラックスできる空間を演出しましょう。
【習慣5】寝る前のスマホ・PCは、厳禁!
スマホやPCの画面から発せられる「ブルーライト」は、太陽光に近く、脳を覚醒させてしまいます。メラトニン分泌を妨げる最大の敵です。少なくとも、寝る1時間前には電源を切りましょう。
【習慣6】寝室は「睡眠のためだけ」の神聖な場所にする
寝室で仕事や食事をするのはやめましょう。脳が「寝室=活動する場所」と認識してしまい、寝つきが悪くなります。温度(夏は26℃前後、冬は20℃前後)と湿度(50%前後)も快適に保ちましょう。
【習慣7】最適な睡眠時間を見つける
必要な睡眠時間には個人差がありますが、多くの研究で、7時間〜8時間の睡眠をとっている人が、最も死亡率が低く、健康であることが報告されています。これを一つの目安に、日中の眠気やパフォーマンスで、自分に合った時間を見つけましょう。
◆治療家としての視点
「眠れない」と悩む方の多くは、日中の過ごし方に問題があるケースがほとんどです。夜の睡眠は、朝起きた瞬間から始まっています。
上記の習慣を一つでも取り入れるだけで、あなたの睡眠の質は、きっと見違えるほど向上するはずです。
睡眠は、コストゼロでできる、最高の自己投資です。
明日の最高のパフォーマンスは、今夜の眠りにかかっているのです。
カラダ適正化 28. デジタルデトックス
〜「つながりすぎ」から脳と体を解放する
スマートフォン、パソコン、タブレット…。
私たちの生活は、もはやこれらのデジタルデバイスなしでは成り立ちません。仕事のツールとして、コミュニケーション手段として、情報収集の窓口として、なくてはならない便利な存在です。
しかし、その「便利さ」と引き換えに、私たちは、心と体の健康を静かに、しかし確実に蝕まれていることに、気づいているでしょうか。
夜、ベッドに入ってからも、SNSのチェックや動画鑑賞がやめられない。
食事中も、仕事のメールが気になってスマホを手放せない。
常に誰かとつながっていないと、不安になる。
もし、一つでも心当たりがあるなら、あなたは「デジタル依存」に陥っているかもしれません。そして、その依存が、あなたの脳と体に、主に2つの深刻なダメージを与えています。
【ダメージ1】ブルーライトによる、睡眠と眼への攻撃
スマホやPCの画面から発せられる「ブルーライト」は、非常にエネルギーの強い光です。
夜にこの光を浴び続けると、脳は「まだ昼だ」と勘違いし、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を強力に抑制してしまいます。その結果、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりするのです。
また、ブルーライトは目の網膜にまで直接届き、眼精疲労やドライアイはもちろん、長期的には、加齢黄斑変性といった、失明につながる病気のリスクを高めることも懸念されています。
【ダメージ2】電磁波による、見えないストレス
デジタルデバイスやWi-Fiルーターなどからは、常に「電磁波」が放出されています。
電磁波が人体に与える影響については、まだ研究途上の部分もありますが、世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は、携帯電話の電磁波を「発がん性があるかもしれない(グループ2B)」ものとして分類しています。
その他にも、頭痛、めまい、疲労感、睡眠障害、集中力低下といった、様々な不調との関連を指摘する専門家も少なくありません。
私たちは、こうした目に見えない脅威に、四六時中さらされているのです。
この「つながりすぎ」の状態から、意識的に心と体を解放してあげること。それが「デジタルデトックス」です。
◆今日からできる、3つのデジタルデトックス
【1】「寝室」を、デジタルフリーゾーンにする
最も簡単で、最も効果的な方法です。寝室にスマホやタブレットを持ち込むのを、今日からやめましょう。目覚ましは、昔ながらの目覚まし時計を使います。
これだけで、睡眠の質は劇的に改善し、電磁波からの被曝も減らすことができます。夜間はWi-Fiルーターの電源を切るのも、有効な対策です。
【2】「食事中」は、スマホを置く
食事は、食べ物の味や香りを楽しみ、体に必要な栄養を補給するための大切な時間です。スマホを見ながらの「ながら食べ」は、消化に悪いだけでなく、食事への感謝や満足感を低下させます。家族や仲間との会話を楽しみましょう。
【3】「デジタルオフタイム」を意識的につくる
「通勤中の電車の中では、本を読む」「休日の午前中は、スマホの電源を切って散歩に行く」など、1日の中で、意識的にデジタルデバイスから離れる時間をつくりましょう。
最初はそわそわするかもしれませんが、次第に、情報から解放された心の静けさや、目の前の現実世界への集中力が高まるのを感じられるはずです。
◆治療家としての視点
デジタルデトックスは、何も、山奥に籠って仙人のような生活をしろ、という話ではありません。
現代社会において、デジタルデバイスを完全に排除することは不可能です。だからこそ、「賢く付き合う」という視点が重要になります。
日中にブルーライトを浴びる際は、PC用のブルーライトカットメガネを着用したり、スマホの画面設定をナイトモード(暖色系)にしたりするだけでも、目や脳への負担を軽減できます。
便利なテクノロジーの「奴隷」になるのではなく、「主人」として、それを賢く使いこなす。
意識的に「オフライン」の時間を持つことが、結果的に「オンライン」でのあなたのパフォーマンスを、最大限に高めてくれるのです。
カラダ適正化 29. パワーナップ(戦略的昼寝)
〜 15分の仮眠が、午後の生産性を劇的に変える
ランチの後、強烈な眠気に襲われて、仕事が全く手につかなくなる…。
多くのビジネスパーソンが、そんな経験をしているのではないでしょうか。
この午後のパフォーマンス低下を防ぎ、脳をリフレッシュさせるための、最も効果的な方法。それが、15〜20分程度の短い仮眠、「パワーナップ」です。
「昼寝なんて、サボっているみたいで罪悪感がある」
そう思う方もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
パワーナップは、科学的根拠に基づいた、極めて合理的な「脳のメンテナンス術」なのです。
NASA(アメリカ航空宇宙局)が行った有名な実験では、パイロットに26分間の仮眠をとらせたところ、なんと認知能力が34%、注意力が54%も向上したという結果が出ています。
この驚くべき効果から、GoogleやApple、Microsoftといった世界のトップ企業では、社員のために仮眠スペースを設けるなど、パワーナップを積極的に導入しています。日本でも、厚生労働省がその有効性を認め、推奨しているほどです。
◆パワーナップを成功させる5つのコツ
【コツ1】時間は「15〜20分」がベスト
30分以上眠ってしまうと、脳が深い睡眠(ノンレム睡眠)に入ってしまい、起きた時に頭がボーッとする「睡眠慣性」が働いてしまいます。スッキリと目覚め、すぐに活動を再開するためには、深い眠りに入る直前の15〜20分が黄金の時間です。
【コツ2】「昼寝の前に、コーヒーを飲む」
少し意外に思えるかもしれませんが、これは非常に効果的なテクニックです。
コーヒーなどに含まれるカフェインの覚醒効果は、摂取してから20〜30分後に現れます。つまり、昼寝をする直前にコーヒーを飲んでおくと、ちょうど目覚めるタイミングでカフェインが効き始め、最高の目覚めをサポートしてくれるのです。
【コツ3】時間は「午後3時まで」
あまり遅い時間に昼寝をすると、夜の睡眠に悪影響を及ぼしてしまいます。パワーナップをとるなら、ランチ後の午後1時〜3時の間が最適です。
【コツ4】「横にならず」に眠る
ベッドやソファで本格的に横になってしまうと、深い眠りに落ちやすくなります。机に突っ伏したり、椅子の背もたれに寄りかかったりする姿勢の方が、短時間でスッキリと目覚めることができます。
【コツ5】「光」と「音」を遮断する
昼間でも、脳を効率よく休ませるためには、できるだけ暗くて静かな環境をつくることが大切です。アイマスクや耳栓を活用したり、心地よい雑音(ホワイトノイズ)を流すアプリなどを使ったりするのも良いでしょう。
◆治療家としての視点
午後に眠くなるのは、意志が弱いからではありません。それは、ランチで摂取した糖質による血糖値の変動や、人間の体に備わっている生体リズム(サーカディアンリズム)による、ごく自然な生理現象です。
この眠気に無理に逆らって、気合で仕事を続けようとしても、生産性は上がらず、ミスが増えるだけです。
それならば、いっそ15分だけ、戦略的に脳を休ませてあげる。
その方が、残りの数時間を、何倍も高いパフォーマンスで乗り切ることができるのです。
私も、午後の診療の合間に、必ず15分程度のパワーナップをとるようにしています。これにより、頭がリフレッシュされ、最後の患者さんまで、最高の集中力で向き合うことができています。
パワーナップは、現代を生きるすべてのビジネスパーソンにとって、必須のスキルと言っても過言ではありません。
あなたも、この「攻めの休息」を習慣にして、午後の自分を劇的に変えてみませんか。
カラダ適正化 30. 腹八分目
〜「空腹」こそが、最強の若返りスイッチをONにする
「腹八分目に医者いらず」
昔から言い伝えられてきた、このことわざ。実は、最新の科学によって、その正しさが次々と証明されています。
むしろ、「腹八分目」どころか、意図的に「空腹」の時間をつくることこそが、私たちの体に眠る「若返りシステム」を起動させる、最強のスイッチであることがわかってきたのです。
2016年、日本の大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、一躍有名になった「オートファジー」という言葉を、聞いたことがあるでしょうか。
オートファジーとは、ギリシャ語で「自ら(オート)」「食べる(ファジー)」を意味する言葉で、細胞が、自分自身の内部にある古くなったり壊れたりしたタンパク質を分解し、新しいタンパク質をつくるための材料としてリサイクルするという、驚くべき仕組みのことです。
いわば、「細胞内の大掃除&リサイクルシステム」。
このオートファジーが活発に働くことで、私たちの細胞は常に新しく生まれ変わり、若々しく健康な状態を保つことができるのです。
そして、このオートファジーのスイッチをONにする、最も強力なきっかけ。
それが、「空腹」なのです。
体が飢餓状態になると、細胞は「このままでは栄養が足りなくなる!」と危機感を覚え、自分の中にある不要なものを分解して、エネルギー源や新しい材料として再利用しようと、オートファジーの働きを活発化させます。
◆カロリー制限がもたらす、驚くべき健康効果
オートファジーの活性化をはじめとして、摂取カロリーを適度に制限すること(腹八分目)には、数多くのメリットが報告されています。
・寿命の延長:様々な動物実験で、カロリー制限をした個体は、好きなだけ食べさせた個体に比べて、寿命が1.5倍〜2倍に延びることが確認されています。
・生活習慣病の予防・改善:血糖値、血圧、コレステロール値、中性脂肪値などが改善し、肥満、糖尿病、心疾患のリスクが低下します。
・脳機能の向上:脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が増え、記憶力や学習能力が高まることが示唆されています。
・若返り遺伝子の活性化:「サーチュイン遺伝子」と呼ばれる長寿遺伝子がONになり、細胞の老化を遅らせます。
◆腹八分目を実践するコツ
「でも、お腹いっぱい食べられないのは、ストレスが溜まる…」
そう感じる方もいるでしょう。腹八分目をストレスなく実践するには、いくつかのコツがあります。
【コツ1】よく噛んで、ゆっくり食べる
満腹中枢が刺激されるまでには、食べ始めてから20分ほどかかると言われています。早食いは、満腹感を得る前に食べ過ぎてしまう、最大の原因です。一口30回を目安に、よく噛んで、時間をかけて味わいましょう。
【コツ2】「ベジファースト」を徹底する
食事の最初に、野菜やきのこ、海藻といった食物繊維が豊富なものから食べることで、血糖値の急上昇を抑え、胃がカサ増しされて、その後の食べ過ぎを防ぐことができます。
【コツ3】「ながら食べ」をやめる
テレビやスマホを見ながら食事をすると、脳が「食べた」という満足感を得にくくなり、つい食べ過ぎてしまいます。食事の時間は、目の前の料理に集中しましょう。
【コツ4】小さな食器を使う
同じ量でも、大きな皿に盛るより、小さな皿に盛る方が、見た目の満足感が高まります。視覚的な効果をうまく利用しましょう。
◆治療家としての視点
飽食の時代に生きる現代人にとって、最大の敵は「栄養不足」ではなく、「食べ過ぎ」です。
私たちは、常に胃腸を酷使し、消化・吸収のために大量のエネルギーと酵素を浪費しています。そのエネルギーを、細胞の修復やデトックス、免疫機能の維持といった、より重要な生命活動に回すことができれば、私たちの体はもっと健康になれるはずです。
腹八分目は、そのための最もシンプルで、最も効果的な方法です。
満腹という快楽と引き換えに、老化と病気のリスクを高めるのか。
それとも、少しの空腹感と引き換えに、若さと健康寿命を手に入れるのか。
その選択は、あなた自身に委ねられています。
カラダ適正化 31. ファスティング(断続的断食)
〜「食べない時間」が、体を内側からリセットする
「腹八分目」から、さらに一歩進んだ健康法。
それが、意図的に「食べない時間」をつくる、「ファスティング(断食)」です。
ファスティングと聞くと、「何日も水だけで過ごす、過酷な修行」といったイメージがあるかもしれません。しかし、近年注目されているのは、日常生活の中で、誰でも無理なく実践できる「断続的ファスティング(インターミッテント・ファスティング)」です。
これは、1日24時間のうち、「食事をしても良い時間」を8時間程度に制限し、残りの16時間は何も食べないという、非常にシンプルな方法です。(「16時間断食」とも呼ばれます)
例えば、
・お昼の12時に最初の食事をとり、夜の8時までに最後の食事を終える。
・朝の8時に最初の食事をとり、夕方の4時までに最後の食事を終える。
といった具合です。
この「16時間の空腹時間」をつくることで、私たちの体には、驚くべきリセット効果がもたらされます。
◆断続的ファスティングの5大効果
【効果1】オートファジーの活性化
「腹八分目」の項でもお話しした、細胞の若返りシステム「オートファジー」は、12時間以上の空腹状態が続くことで、本格的にスイッチが入ると言われています。16時間断食は、このオートファジーの効果を最大限に引き出すための、最も効果的な方法です。
【効果2】内臓の休息と機能回復
食事をしない時間をつくることで、常に働き続けている胃や腸、肝臓といった消化器官を、ゆっくりと休ませることができます。これにより、消化・吸収能力が回復し、肝臓の解毒機能も高まります。
【効果3】脂肪燃焼の促進
空腹時間が続くと、体はエネルギー源である糖質を使い果たし、体脂肪を分解してエネルギーをつくる「脂肪燃焼モード」に切り替わります。これにより、効率的なダイエット効果が期待できます。
【効果4】インスリン感受性の改善
インスリンが分泌される機会が減ることで、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が改善します。これは、糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防に、極めて重要です。
【効果5】成長ホルモンの分泌促進
空腹時には、細胞の修復や新陳代謝を促す「成長ホルモン」の分泌が、通常の何倍にも高まることがわかっています。アンチエイジング効果や、筋肉量の維持にもつながります。
◆断続的ファスティングを成功させるには
・まずは週末など、時間に余裕のある日から試してみる。
・空腹時間は、水やお茶、ブラックコーヒーなど、カロリーのない水分は摂ってもOK。
・「食べても良い時間」に、ドカ食いをしない。栄養バランスの取れた、質の良い食事を心がける。
・自分のライフスタイルに合わせて、時間を調整する。例えば、夜に会食の予定がある日は、翌日の最初の食事を遅らせるなど、柔軟に対応しましょう。
◆治療家としての視点
「朝食を抜くと、体に悪いんじゃないの?」
そう心配される方もいるでしょう。確かに、「朝食は1日で最も重要な食事」と言われてきました。
しかし、それは、1日3食が当たり前という前提での話です。
私たちの祖先は、1日3食きっちり食べるような生活はしていませんでした。むしろ、狩りが成功した時だけ食事にありつけるという、空腹が当たり前の生活を送ってきたのです。人間の体は、そもそも長時間の空腹に耐えられるように設計されています。
ただし、人によっては、午前中に強い空腹感を感じて、仕事に集中できなくなる場合もあるでしょう。私自身も、そうでした。
その場合は、無理に16時間という数字にこだわる必要はありません。まずは12時間から始めてみて、徐々に時間を延ばしていく。あるいは、午前中は「完全無欠コーヒー」や「ボーンブロス」など、血糖値を上げない液体だけで過ごす、といった方法も有効です。
大切なのは、自分の体の声を聞き、無理なく続けられる「自分だけのファスティングスタイル」を見つけることです。
「食べること」と同じくらい、「食べないこと」を大切にする。
その新しい習慣が、あなたの体を内側から浄化し、生まれ変わらせてくれるはずです。
カラダ適正化 32. 朝の運動
〜 たった30分が、その日1日の質を決める
運動が体に良いことは、誰もが知っています。
しかし、「いつ運動するのが、最も効果的なのか?」と聞かれたら、どう答えるでしょうか。
もし、あなたが1日のパフォーマンスを最大化し、健康効果を最大限に引き出したいと考えるなら、その答えは、「朝」です。
欧米のビジネスエリートの間では、朝、ジムで汗を流してから出社するのは、もはや常識です。接待も、夜の会食ではなく、早朝に一緒にトレーニングをしてから朝食をとる、というスタイルが増えていると言います。
なぜ、彼らはそこまで「朝の運動」にこだわるのでしょうか。
それは、朝の運動が、心と体に、計り知れないほどの恩恵をもたらしてくれるからです。
◆朝の運動がもたらす、5つのメリット
【メリット1】脳が覚醒し、パフォーマンスが向上する
運動によって血流が良くなることで、脳に新鮮な酸素と栄養がたっぷりと送り込まれます。これにより、脳は睡眠モードから活動モードへとスムーズに切り替わり、午前中から高い集中力と判断力を発揮することができます。ある高校では、授業の前に運動の時間を取り入れたところ、生徒たちの成績が向上したという報告もあります。
【メリット2】1日の代謝が上がり、痩せやすくなる
朝に運動を行うと、交感神経が刺激され、その日1日の基礎代謝が約10%もアップすると言われています。つまり、同じ生活をしていても、朝運動するだけで、より多くのカロリーを消費できる、「痩せやすい体」になるのです。
【メリット3】ポジティブな気分で1日をスタートできる
朝日を浴びながら運動をすると、幸せホルモン「セロトニン」の分泌が促進されます。これにより、気分が前向きになり、ストレスに強い、安定した精神状態で1日を過ごすことができます。
【メリット4】夜の睡眠の質が高まる
日中に分泌されたセロトニンは、夜になると睡眠ホルモン「メラトニン」に変化します。朝の運動でセロトニンを十分に分泌させておくことが、夜の快眠へとつながる、最高の準備となるのです。
【メリット5】生活習慣病のリスクを下げる
朝のウォーキングなどの有酸素運動は、血圧や血糖値を安定させる効果があることが、多くの研究で示されています。高血圧や糖尿病といった、深刻な病気のリスクを遠ざけてくれます。
◆どんな運動をすればいい?
難しく考える必要はありません。まずは、「20〜30分のウォーキング」から始めてみましょう。
少し早足で、腕を大きく振って歩くことを意識するだけで、立派な有酸素運動になります。
慣れてきたら、
・軽いジョギング
・ヨガやストレッチ
・HIIT(高強度インターバルトレーニング)
など、自分の体力や好みに合わせて、色々な運動を組み合わせてみるのも良いでしょう。
◆治療家としての視点
私が特に朝の運動をお勧めする理由は、「習慣化しやすい」からです。
「夜、仕事から帰ってきてから運動しよう」と思っていても、急な残業や付き合い、あるいは単なる疲れで、挫折してしまった経験はありませんか?
その点、朝であれば、誰にも邪魔されることのない、自分だけの時間を確保しやすいのです。
私は、ほぼ毎日、早朝にジムに行くことを日課にしています。ヨガ、HIIT、筋力トレーニングなどを日替わりで行うことで、飽きずに続けることができています。この朝の運動が、私にとって1日のスイッチを入れる重要な儀式となり、終日ハイパフォーマンスを維持するための、エネルギーの源となっています。
たった30分、いつもより早く起きる。
その小さな投資が、あなたの1日の質を、そして人生の質をも、劇的に向上させてくれるはずです。
カラダ適正化 33. トランポリン
〜「跳ねるだけ」で、全身の細胞が喜ぶ究極の運動
「運動が大切なのはわかるけど、ジムに行く時間も、ジョギングする元気もない…」
そんな方に、ぜひお勧めしたい、究極の「おうちエクササイズ」があります。
それが、トランポリンです。
一見、子供の遊び道具のように思えるかもしれませんが、実は、トランポリンは、非常に効率的で、体に優しい、優れた全身運動なのです。
NASAの研究では、「トランポリンでの10分間の運動は、ジョギング30分間に匹敵する運動効果がある」と報告されています。しかも、関節への負担は、ジョギングに比べて80%以上も少ないという、驚くべき結果が出ています。
なぜ、ただピョンピョンと跳ねるだけで、これほどの効果が得られるのでしょうか。
その秘密は、「重力」と「無重力」の繰り返しにあります。
トランポリンでジャンプすると、体は一瞬、無重力状態になります。そして、着地する瞬間には、体重の何倍もの重力(G)が、全身の細胞にかかります。
この、重力による「加圧」と「減圧」が、全身約37兆個の細胞一つひとつにとって、最高のマッサージとなるのです。
◆トランポリンがもたらす、驚きの健康効果
【効果1】リンパの流れを劇的に改善し、デトックスを促進する
私たちの体には、血液を送り出すポンプ役の「心臓」がありますが、老廃物を運ぶ「リンパ液」を流すための、強力なポンプはありません。リンパ液は、主に筋肉の収縮によって、ゆっくりと流れています。
トランポリンの上下運動は、このリンパ液の流れを強力に促進する、最高のポンプの役割を果たします。体内に溜まった毒素や老廃物が効率よく排出され、むくみの解消や免疫力の向上につながります。
【効果2】体幹と全身の筋肉をバランス良く鍛える
不安定なトランポリンの上でバランスをとろうとすることで、体の軸となる「体幹(インナーマッスル)」が、自然と鍛えられます。また、ジャンプと着地を繰り返すことで、足腰はもちろん、腹筋や背筋など、全身の筋肉を効率よく使うことができます。
【効果3】骨密度を高め、骨粗しょう症を予防する
着地の際に骨にかかる適度な負荷が、骨をつくる細胞(骨芽細胞)を刺激し、骨を強く、丈夫にしてくれます。
【効果4】ストレス解消と、幸福感の向上
リズミカルに跳ねる運動は、セロトニンの分泌を促し、気分をリフレッシュさせてくれます。童心に帰ったような、純粋な楽しさも、大きな魅力です。
◆トランポリンの始め方
家庭用の小型トランポリン(直径1メートル程度)なら、1万円以下で購入できます。
まずは、テレビを見ながら、音楽を聴きながら、1日5分、軽くその場で跳ねることから始めてみましょう。膝を高く上げたり、腕を回したりと、動きに変化をつけることで、運動強度はさらに高まります。
◆治療家としての視点
トランポリンは、関節に負担をかけずに高い運動効果が得られるため、膝や腰に痛みを抱えている方や、体力に自信のない高齢者の方でも、安心して取り組むことができる、非常に優れたエクササイズです。
また、デスクワークで凝り固まった体をほぐし、全身の血流を良くするのにも、非常に効果的です。
私も、仕事の合間に、オフィスの片隅に置いたトランポリンで数分間跳ねることがあります。すると、頭がスッキリし、体も軽くなって、その後の仕事の効率が格段に上がるのを感じます。
「運動は、辛くて苦しいもの」という思い込みを、気持ちよく弾ませながら、吹き飛ばしてしまいましょう。
全身の細胞が喜ぶ、この楽しいジャンプ習慣が、あなたの健康レベルを、一段も二段も引き上げてくれるはずです。
カラダ適正化 34. スタンディングデスク
〜「座りすぎ」という現代病から、あなたの命を守る
「座ることは、新たな喫煙である(Sitting is the new smoking.)」
近年、健康意識の高い人々の間で、こんな衝撃的な言葉が常識となりつつあります。
これは、長時間座り続けるという行為が、タバコを吸うのと同じくらい、私たちの健康に深刻な悪影響を及ぼす、という警鐘です。
オーストラリアの研究では、成人は1時間座り続けるごとに、寿命が22分ずつ縮まるという、驚くべき結果が報告されています。
なぜ、ただ座っているだけで、これほどのリスクがあるのでしょうか。
・血流の悪化:下半身の筋肉が全く使われないため、全身の血流が滞ります。特に、「第二の心臓」とも呼ばれるふくらはぎのポンプ機能が停止することで、足のむくみや冷え、エコノミークラス症候群(血栓症)のリスクが高まります。
・代謝の低下:座っている間、脂肪を燃焼させる酵素「リパーゼ」の働きが、90%も低下すると言われています。これにより、肥満や糖尿病、高脂血症のリスクが著しく増大します。
・筋肉と骨の衰え:下半身や体幹の筋肉が衰え、姿勢が悪くなることで、腰痛や肩こりの原因となります。また、骨への刺激が減ることで、骨密度も低下します。
・がんリスクの上昇:長時間座る習慣のある人は、そうでない人に比べて、大腸がんや乳がんの発症リスクが高まることが、複数の研究で示されています。
普段、運動習慣がある人でも、日中の大半を座って過ごしている場合、その健康リスクはほとんど相殺されない、という厳しいデータもあります。
この、現代社会に蔓延する「座りすぎ」という病から、私たちを救ってくれるのが、「スタンディングデスク」、つまり、立ったまま仕事をするためのデスクです。
◆スタンディングデスクがもたらすメリット
スタンディングデスクを導入するメリットは、単に「座りすぎのリスクを回避できる」というだけではありません。
・集中力の向上:座っている時よりも眠くなりにくく、適度な緊張感が持続するため、仕事の生産性が向上します。
・姿勢の改善:背筋が自然と伸び、正しい姿勢を保ちやすくなるため、腰痛や肩こりの予防・改善につながります。
・消費カロリーの増加:座っている時と比べて、1時間あたり約50kcal多くカロリーを消費すると言われています。
・アイデアが生まれやすくなる:体を動かしながら作業することで、脳が活性化し、創造的な思考が促されるという報告もあります。
◆スタンディングデスクの上手な使い方
「一日中立ちっぱなし、というのも辛そう…」
その通りです。大切なのは、「座る」と「立つ」を、バランス良く繰り返すことです。
・まずは「1時間に15分」立つことから:タイマーなどを活用し、「45分座ったら、15分立つ」というサイクルを試してみましょう。
・高さを調節できるデスクを選ぶ:ボタン一つで、座る高さと立つ高さを簡単に切り替えられる、電動昇降式のデスクが理想的です。
・足元にマットを敷く:足裏への負担を和らげる、疲労軽減マットなどを活用すると、より快適に立つことができます。
◆治療家としての視点
私のオフィスにも、スタンディングデスクを導入しています。「1時間座って仕事をしたら、次の1時間は立って仕事をする」というように、交互に使うことで、長時間のデスクワークでも、体への負担を最小限に抑えることができています。
もし、職場の環境ですぐにデスクを導入するのが難しい場合は、
・1時間に1回は必ず立ち上がって、ストレッチや軽い屈伸をする。
・電話をする時は、立つようにする。
・エレベーターではなく、階段を使う。
といった、小さな工夫を積み重ねるだけでも、座りすぎのリスクを減らすことは可能です。
私たちの体は、そもそも、長時間座り続けるようには設計されていません。
1日の大半を過ごす、仕事中の姿勢を変えること。
それが、あなたのパフォーマンスを高め、将来の健康を守るための、最も賢明な選択の一つなのです。
カラダ適正化 35. ウェアラブルデバイス活用術
〜 自分の体を「見える化」し、健康をハックする
「なんとなく、よく眠れなかった気がする」
「今日は、あまり歩いていないかもしれない」
こうした、曖昧な「感覚」に頼った健康管理は、もう終わりにしましょう。
現代のテクノロジーは、私たちの体の状態を、客観的な「数値」として、24時間リアルタイムで「見える化」することを可能にしてくれました。
そのための最も強力なツールが、スマートウォッチに代表される「ウェアラブルデバイス」です。
Apple WatchやFitbitといったデバイスを手首につけるだけで、
・心拍数
・歩数、消費カロリー
・睡眠の質(深い睡眠、浅い睡眠の時間など)
・血中酸素濃度
・ストレスレベル
といった、これまで専門的な機器でしか測れなかったような生体データを、驚くほど手軽に、そして継続的に記録することができるのです。
◆ウェアラブルデバイスが、あなたの「専属コーチ」になる
これらのデータをただ眺めているだけでは、意味がありません。
大切なのは、その「数値」を基に、自分の行動を改善していくことです。
・睡眠スコアが低い日:「昨日は寝る前にスマホを見ていたからかな?」「カフェインを摂りすぎたかもしれない」と原因を分析し、次の日の行動を修正する。
・歩数が少ない日:「今日は意識して一駅分歩いて帰ろう」「エレベーターではなく階段を使おう」と、運動量を増やすきっかけにする。
・心拍数が高い状態が続いている時:「ストレスが溜まっているサインかもしれない。少し休憩して、深呼吸しよう」と、セルフケアのタイミングを知る。
このように、ウェアラブルデバイスは、あなたの健康状態を常に監視し、改善のための具体的なフィードバックを与えてくれる、24時間体制の「専属コーチ」となってくれるのです。
◆血糖値が気になるなら、「フリースタイルリブレ」
より一歩進んだ自己管理を目指すなら、「フリースタイルリブレ」のような、持続血糖測定器(CGM)も非常に有効です。
これは、上腕に小さなセンサーを貼り付けるだけで、24時間、血糖値の変動をリアルタイムでモニタリングできるという画期的なデバイスです。
「この食事をすると、血糖値がこれくらい上がるのか」
「食後にウォーキングをすると、血糖値の上昇が抑えられるな」
といったことが、面白いように「見える化」されます。
これにより、自分の体質に合った、最適な食事法や運動法を、科学的根拠に基づいて見つけ出すことができるのです。
◆治療家としての視点
「記録すること」は、行動変容を促す、最も強力なテクニックの一つです。
ただ漠然と「健康に気をつけよう」と思うだけでは、なかなか行動には移せません。しかし、自分の体の状態が、日々、具体的な数値として目の前に示されると、「もっとこの数値を良くしたい!」という、ゲームのような感覚で、楽しみながら健康管理に取り組むことができるようになります。
私自身も、ウェアラブルデバイスを活用して、日々の活動量や睡眠の質をチェックしています。データは嘘をつきません。数値が悪かった日は、必ずその原因となる行動があるはずです。その原因と結果のつながりを客観的に把握することが、継続的な改善への最短ルートなのです。
まずは、スマートフォンのヘルスケアアプリからでも構いません。
自分の体を「見える化」する習慣を身につけ、感覚頼りの健康管理から、データに基づいた戦略的な「カラダ適正化」へと、ステップアップしましょう。
カラダ適正化 36. ヨガ
〜「呼吸」と「動き」で、心と体の歪みをリセットする
ヨガは、単なるストレッチやエクササイズではありません。
それは、約5000年もの歴史を持つ、インド発祥の「心と体を整えるための、総合的な科学」です。
深い「呼吸」と、流れるような「動き(アーサナ)」、そして静かな「瞑想」を組み合わせることで、私たちの心と体に、驚くほど多くの恩恵をもたらしてくれます。
もはや女性だけのもの、というイメージは過去の話。ストレスフルな現代社会を生き抜くための、最高のセルフメンテナンス法として、性別や年齢を問わず、世界中の人々に実践されています。
◆ヨガがもたらす、心・体・脳への7つの効果
【効果1】自律神経のバランスを整える
ヨガの基本である、深く、ゆったりとした腹式呼吸は、興奮・緊張モードの「交感神経」を鎮め、リラックス・修復モードの「副交感神経」を優位にします。これにより、ストレスや不眠、慢性的な疲労感が改善されます。
【効果2】体の歪みを矯正し、痛みを解消する
様々なポーズ(アーサナ)をとることで、普段使われていない筋肉が刺激され、体の柔軟性が高まります。これにより、姿勢が改善され、肩こりや腰痛といった、体の歪みに起因する痛みが、根本から解消されていきます。
【効果3】しなやかで強い、インナーマッスルを鍛える
ポーズをキープする過程で、体の深層部にある「インナーマッスル」が効果的に鍛えられます。これは、美しい姿勢を保ち、内臓を正しい位置に支え、代謝を上げるために、非常に重要です。
【効果4】血流とリンパの流れを促進する
筋肉を伸ばしたり、ねじったり、逆転させたりすることで、全身の血流とリンパの流れが良くなります。これにより、冷えやむくみが改善され、デトックス効果も高まります。
【効果5】集中力が高まる
自分の呼吸や、体の感覚に意識を集中させる練習は、注意散漫になりがちな脳を鍛え、目の前の物事に深く没頭する力を養います。
【効果6】ストレスに強い、安定したメンタルをつくる
ヨガを行うと、脳内でリラックス効果のある神経伝達物質「GABA(ギャバ)」の分泌が増え、ストレスホルモン「コルチゾール」の分泌が低下することが、科学的に証明されています。これにより、不安感が和らぎ、心が穏やかになります。
【効果7】「今の自分」を受け入れることができる
ヨガでは、他人と比べる必要はありません。「今日は体が硬いな」「このポーズはまだ難しいな」という、その時々の自分の心と体の状態を、ありのままに観察し、受け入れることを大切にします。この練習が、自己肯定感を高め、日常生活における精神的な安定につながります。
◆治療家としての視点
私は、治療家として、様々な体の不調を抱える患者さんと日々接していますが、その不調の原因の多くは、「体の歪み」と「自律神経の乱れ」に集約されると感じています。
ヨガは、この二つの根本原因に、同時にアプローチできる、極めて優れたメソッドです。
私自身も、ヨガを5年以上続けていますが、始めてから、体の柔軟性が格段に高まり、以前は職業病だと諦めていた腰痛とも、完全に無縁になりました。何より、圧倒的に疲れにくくなったことを実感しています。
最初は体が硬くても、全く問題ありません。
大切なのは、完成されたポーズをとることではなく、呼吸に合わせて、気持ちよく体を動かすプロセスそのものを楽しむことです。
週に1回、スタジオに通うもよし。毎朝10分、自宅で動画を見ながら行うもよし。
この古代の知恵が、あなたの心と体を、本来あるべき、健やかで調和のとれた状態へと、優しく導いてくれるはずです。
カラダ適正化 37. アーシング(グラウンディング)
〜 大地とつながり、体内の「静電気」を放出する
突然ですが、あなたは最後に「裸足」で土や草の上に立ったのが、いつだったか覚えていますか?
靴や靴下を履き、アスファルトで舗装された道を歩き、絶縁された建物の中で暮らす。
現代人の多くは、母なる「大地」から、完全に切り離された生活を送っています。
実は、この「大地との断絶」が、私たちの体に、知らず知らずのうちに不調を蓄積させている、という考え方があります。それが、「アーシング(またはグラウンディング)」という健康法です。
アーシングの理論は、非常にシンプルです。
私たちの体は、スマホやPCなどの電化製品に囲まれ、化学繊維の衣服を身につけることで、常に「静電気」が溜まった、帯電状態にあります。
この体内に溜まった過剰な電気が、血流を悪化させたり、自律神経を乱したり、炎症を引き起こしたりして、様々な不調の原因となっている、というのです。
アーシングとは、この体に溜まった静電気を、裸足で直接、大地に触れることで、アース線のように地球に放出してあげるという行為です。
「そんなことで、本当に効果があるの?」
そう思われるかもしれませんが、海外では数多くの臨床実験が行われ、その驚くべき効果が報告されています。
◆アーシングがもたらす、科学的に確認された効果
・炎症の軽減:体内の電気的なバランスが整うことで、慢性的な炎症が鎮まる。関節痛や筋肉痛の緩和につながる。
・睡眠の質の向上:自律神経が安定し、ストレスホルモン「コルチゾール」のリズムが正常化することで、寝つきが良くなり、深く眠れるようになる。
・血液の粘度低下:赤血球の表面電位が正常化し、血液がサラサラになる。血流が改善され、心疾患のリスクが低下する可能性がある。
・ストレス、不安、うつ症状の軽減:リラックス効果により、精神的な安定がもたらされる。
◆今日からできる、アーシングの実践法
やり方は、これ以上ないほど簡単です。
「裸足になって、公園の芝生や、砂浜、土の上を歩く、あるいはただ座る」
これだけです。
理想は、1日に30分程度。
・朝の散歩の際に、公園で靴を脱いでみる。
・休日に、海の砂浜を裸足で歩いてみる。
・自宅の庭がある方は、庭仕事の際に裸足になってみる。
コンクリートやアスファルトは絶縁体なので、効果はありません。必ず、土、草、砂、水といった、自然の地面に直接触れることがポイントです。
◆治療家としての視点
アーシングは、特別な器具も、お金も一切必要ない、誰にでもできる、最も自然な健康法の一つです。
私自身も、晴れた日の朝には、近所の公園まで歩いていき、芝生の上でアーシングをすることを習慣にしています。
足の裏から、ひんやりとした土の感触や、草の柔らかさが伝わってくると、頭の中に溜まっていた雑念がすーっと消えていき、体と心が大地と一体になるような、深いリラックス感に包まれます。
現代人が忘れかけている、自然とのつながりを取り戻す、素晴らしい時間です。
また、最近では、室内でもアーシング効果が得られる、専用のマットやシーツなども販売されています。これらを活用すれば、寝ている間や、デスクワークをしながらでも、アーシングを実践することが可能です。
原因不明の不調や、慢性的なストレスに悩んでいる方は、ぜひ一度、試してみてください。
大地との再接続が、あなたの体に溜まった「電気のゴミ」を掃除し、本来の健やかなバランスを取り戻してくれるかもしれません。
カラダ適正化 38. アイスバス(交代浴)
〜「温冷刺激」で、疲労物質を洗い流す
1日の終わりに、熱いお風呂にゆっくり浸かるのは、至福の時間ですよね。
しかし、もしあなたが、その日の疲れを根こそぎ取り去り、翌日に最高のコンディションで臨みたいと考えるなら、その「常識」を一度、見直してみることをお勧めします。
トップアスリートたちが、激しいトレーニングの後に行う、究極の疲労回復法。
それが、「アイスバス(氷風呂)」です。
「体を冷やすなんて、とんでもない!」
そう悲鳴を上げた方もいるかもしれません。確かに、慢性的な「冷え」は万病のもとです。
しかし、これは「体の内側」の話。
意図的に、短時間だけ体の「外側」を冷やすことには、実は、素晴らしい疲労回復効果があるのです。
◆なぜ、アイスバスは疲労に効くのか?
激しい運動や、長時間のデスクワークで疲労した筋肉には、乳酸などの疲労物質が溜まり、微細な炎症が起きています。
この状態でアイスバスに浸かると、体温が急激に下がり、全身の血管が「収縮」します。
そして、アイスバスから上がると、今度はその反動で、血管が一気に「拡張」します。
この、血管の「収縮」と「拡張」という強力なポンプ作用によって、筋肉内に溜まっていた疲労物質や老廃物が、血流に乗って一気に洗い流されるのです。これにより、筋肉痛の軽減や、疲労回復が劇的に促進されます。
◆家庭でできる、アイスバス&交代浴
いきなり氷風呂はハードルが高い、という方は、まずは「交代浴」から試してみましょう。
【交代浴のやり方】
①まずは、熱めのシャワー(40〜42℃)を、1〜2分浴びて体を温める。
②次に、冷たいシャワー(15〜20℃)を、30秒〜1分、手足の先から、体の中心に向かって浴びる。
③これを、3〜5セット繰り返す。最後は、必ず冷たいシャワーで終えるのがポイントです。
これだけでも、血管のポンプ作用が働き、湯上りのスッキリ感は格別です。
【アイスバスへの挑戦】
交代浴に慣れてきて、さらに高い効果を求めるなら、アイスバスに挑戦してみましょう。
①バスタブに水を張り、コンビニなどで売っているロックアイスを1〜2袋入れる。(水温の目安は15℃前後)
②まずは足先から、ゆっくりと浸かっていく。全身浸かるのが辛ければ、半身浴でもOK。
③浸かる時間は、1〜3分が目安。無理は禁物です。
④上がった後は、タオルで体を拭き、自然に体温が戻るのを待ちます。急激に温め直さない方が、効果が高いと言われています。
【注意!】
心臓や血圧に不安のある方は、絶対に行わないでください。体温の急激な変化は、体に大きな負担をかけます。少しでも不安を感じたら、すぐに中止してください。
◆治療家としての視点
私自身も、長時間のセミナーで立ちっぱなしだった日や、特に体力を使ったと感じる日には、このアイスバスを実践しています。
最初は、息が止まるほどの冷たさに驚きますが、1分もすると、不思議と体が順応してきます。そして、お風呂から上がった後の、体の芯からポカポカと温まり、全身が軽くなる感覚は、一度味わうと病みつきになります。翌朝の目覚めの良さも、格段に違います。
「冷えは万病のもと」という言葉に縛られず、時には、あえて体に「温冷刺激」というショックを与えてあげる。
その積極的なアプローチが、あなたの体の回復力を最大限に引き出し、疲れ知らずの体をつくる、強力な武器となるのです。
カラダ適正化 39. コミュニティの力
〜「つながり」が、あなたの寿命を延ばす
健康について考える時、私たちはつい、食事や運動といった、個人的な努力ばかりに目を向けがちです。
しかし、私たちの健康、そして寿命に、極めて大きな影響を与える、もう一つの重要な要素があります。
それは、「人とのつながり」です。
意外に思われるかもしれませんが、「孤独」は、肥満や喫煙にも匹敵するほど、死亡リスクを高める健康因子であることが、多くの研究で明らかになっています。
社会から孤立し、信頼できる友人や家族がいない人は、そうでない人に比べて、
・心疾患や脳卒中のリスクが高い
・免疫力が低く、感染症にかかりやすい
・うつ病や認知症を発症しやすい
・死亡率が全体的に高い
という、衝撃的なデータがあるのです。
なぜ、「つながり」がこれほどまでに重要なのでしょうか。
・精神的な安定:喜びや悲しみを分かち合い、悩みを相談できる相手がいることは、ストレスを和らげ、安心感を与えてくれます。
・オキシトシンの分泌:家族や友人、ペットなどとのスキンシップや、信頼関係のあるコミュニケーションは、「愛情ホルモン」「絆ホルモン」とも呼ばれる「オキシトシン」の分泌を促します。オキシトシンには、ストレスを軽減し、血圧を下げ、幸福感を高める効果があります。
・健康的な行動の促進:家族や友人の存在は、「健康でいなければ」という良い意味でのプレッシャーとなり、暴飲暴食を控えたり、定期的に運動したりといった、健康的な行動を後押ししてくれます。
・生きがいと役割意識:社会やコミュニティの中で、自分が誰かの役に立っている、必要とされていると感じることは、人生にハリと目的を与え、生きる活力を生み出します。
◆「ブルーゾーン」に学ぶ、つながりの重要性
世界的な長寿地域である「ブルーゾーン」の研究でも、その共通点として、「家族や地域社会との強い絆」が挙げられています。
例えば、沖縄の伝統的な相互扶助の仕組みである「模合(もあい)」や、サルデーニャ島の高齢者を敬い、家族全員で支える文化。
彼らは、生涯を通じて、何らかのコミュニティに属し、強い社会的ネットワークの中で生きています。それが、彼らの驚異的な健康長寿を支える、最も大きな要因の一つだと考えられているのです。
◆あなたの「つながり」を豊かにするために
忙しい現代社会において、意識しなければ、人とのつながりは、どんどん希薄になっていきます。
・家族との時間を、もっと大切にする:1日にどれくらい、家族と顔を合わせて会話をしていますか? 食事の時間は、スマホを置いて、今日あった出来事を話し合ってみましょう。
・旧友に、連絡をとってみる:何年も会っていない友人に、「元気?」と、短いメッセージを送るだけでも構いません。
・共通の趣味を持つ、仲間を見つける:地域のサークルや、スポーツジム、習い事など、新しいコミュニティに飛び込んでみるのも良いでしょう。
・行きつけのお店をつくる:近所のカフェや定食屋で、店員さんや常連さんと、何気ない会話を交わす。それも、立派な社会とのつながりです。
◆治療家としての視点
私は、治療院という場所が、単に痛みを取るだけの場所ではなく、患者さんにとっての、一つの「コミュニティ」であってほしいと願っています。
施術中の何気ない会話や、待合室での患者さん同士の交流が、ほんの少しでも、彼らの心の支えになれば、これほど嬉しいことはありません。
「カラダ適正化」は、一人で黙々と行うものではありません。
家族や仲間と、健康に関する情報を交換したり、一緒にウォーキングに出かけたり、健康的な料理を作って楽しんだり。
そうやって、周りの人を巻き込みながら、楽しみながら実践することで、その効果は何倍にも膨れ上がります。
あなたの健康は、あなた一人のものではありません。
大切な誰かと、健やかな人生を分かち合うために。
今日、あなたの「つながり」を、見つめ直してみませんか。
カラダ適正化 40. ペットとのふれあい
〜 動物がくれる「無償の愛」が、最高の癒しになる
ストレス社会を生きる私たちにとって、心を癒し、リラックスする時間を持つことは、極めて重要です。
そのための、最も愛らしく、最も効果的な「セラピスト」が、私たちのすぐそばにいます。
それが、犬や猫といった「ペット」の存在です。
ペットを飼っている方は、日々、その存在にどれほど癒されているか、身をもって感じていることでしょう。
その「癒し」の効果は、単なる気のせいではなく、科学的にも証明されています。
◆ペットがもたらす、心と体への素晴らしい効果
【効果1】ストレスホルモンを減少させ、愛情ホルモンを増加させる
犬や猫とふれあうと、私たちの脳内では、ストレスホルモン「コルチゾール」が減少し、愛情ホルモン「オキシトシン」が大量に分泌されることがわかっています。
オキシトシンは、血圧や心拍数を安定させ、不安を和らげ、幸福感を高めてくれる、最高の「癒しホルモン」です。わずか5〜10分、ペットを撫でるだけで、この効果が得られると言います。
【効果2】孤独感を和らげ、うつ病を予防する
ペットは、私たちに「無条件の愛」を注いでくれる、かけがえのない家族の一員です。その存在は、孤独感を強力に和らげ、自己肯定感を高めてくれます。高齢者を対象とした研究では、ペットを飼っている人は、飼っていない人に比べて、抑うつ傾向が著しく低いことが報告されています。
【効果3】身体活動量を自然に増やしてくれる
特に犬を飼っている場合、毎日の散歩が必須となります。これにより、飼い主は半ば強制的に、しかし楽しみながら、定期的な運動習慣を身につけることができます。研究によると、犬の飼い主は、そうでない人に比べて、心疾患による死亡リスクが低いというデータもあります。
【効果4】コミュニケーションのきっかけをつくる
散歩中に出会う他の飼い主との会話や、ペットを介した新しい人間関係の構築など、ペットは、社会的なつながりを広げる、素晴らしいきっかけにもなってくれます。
◆治療家としての視点
ペットがもたらす恩恵は、計り知れません。
彼らは、言葉を話すことはできませんが、その温もりや、まっすぐな眼差し、純粋な愛情表現によって、人間のセラピストにはできない形で、私たちの凝り固まった心を、優しくほぐしてくれます。
私自身は、今は家を空ける時間が多いため、ペットを飼っていませんが、たまにドッグカフェや猫カフェに行って動物と触れ合うだけでも、心が洗われるような、深い癒しを感じます。もう少し生活が落ち着いたら、保護犬か保護猫を迎えたいな、と常々考えているところです。
もちろん、ペットを飼うということは、一つの「いのち」を預かる、大きな責任を伴います。安易に決断すべきではありません。
もし、飼うのが難しい環境であれば、
・地域の保護猫活動などに、ボランティアとして参加してみる
・動物とふれあえる施設に、足を運んでみる
といった方法でも、その癒し効果の一端に触れることはできるでしょう。
テクノロジーがどれだけ進化しても、この動物たちが与えてくれる、温かく、原始的な癒しに勝るものはありません。
あなたの人生に、愛らしい毛皮のセラピストを招き入れてみる、という選択肢も、ぜひ考えてみてはいかがでしょうか。
カラダ適正化 41. カビ対策
〜 見えない脅威「マイコトキシン」から、家族を守る
高温多湿な日本の住環境において、私たちが常に向き合わなければならない、厄介な敵。
それが、「カビ」です。
お風呂場やキッチン、窓のサッシなどに発生する黒いカビを見て、「見た目が悪いな」「掃除が面倒だな」くらいにしか思っていないとしたら、それは非常に危険なサインです。
カビの本当の恐ろしさは、その見た目ではありません。
カビが生成し、空気中に放出する「マイコトキシン(カビ毒)」という、目に見えない有害物質にあるのです。
このマイコトキシンは、現時点で300種類以上が確認されており、その多くは、非常に強力な毒性を持っています。
私たちが、このカビ胞子やマイコトキシンを吸い込んだり、カビの生えた食品を口にしたりすることで、体には様々な不調が引き起こされます。
◆カビが引き起こす、深刻な健康被害
・アレルギー疾患:アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などを引き起こしたり、悪化させたりする。夏風邪だと思っていた症状が、実はエアコン内部のカビが原因の「夏型過敏性肺炎」だった、というケースも少なくありません。
・呼吸器系疾患:肺炎や気管支炎など。
・免疫機能の低下:免疫システムを撹乱し、感染症にかかりやすくなる。
・神経系へのダメージ:頭痛、めまい、倦怠感、集中力低下などを引き起こす。
・深刻な病気のリスク:一部のマイコトキシンには、肝臓がんや腎臓がんなどを引き起こす、強力な発がん性が確認されています。
このように、カビは、私たちの健康を静かに、しかし確実に蝕む、住環境における最大の脅威の一つなのです。
◆家庭でできる、徹底カビ対策
カビは、「温度」「湿度」「栄養」の3つの条件が揃うと、爆発的に増殖します。
この条件を、一つでも断ち切ることが、カビ対策の基本です。
【対策1】湿度を制する
・換気:最も重要です。1日に最低2回、家中の窓を開けて、空気の流れをつくりましょう。特に、湿気がこもりやすい、クローゼットや押入れ、下駄箱なども、定期的に扉を開け放って換気します。
・除湿:お風呂から上がった後は、必ず換気扇を回し、壁や床の水滴を拭き取る習慣を。梅雨の時期などは、除湿機やエアコンのドライ機能を積極的に活用しましょう。
【対策2】栄養源を断つ
・こまめな掃除:ホコリ、髪の毛、食べカス、石鹸カスなどは、すべてカビの栄養源になります。特に、水回りを中心に、こまめに掃除をすることが大切です。
・エアコンの定期的なクリーニング:エアコンの内部は、ホコリと湿気の温床です。フィルター掃除はもちろん、年に1〜2回は、専門業者による内部のクリーニングを行うことを強くお勧めします。
◆「体内」のカビにもご用心!
カビのリスクは、住環境だけではありません。
私たちの「体内」、特に「腸」も、温度と湿度が高く、カビ(特にカンジダ菌)にとっては、格好の棲み処となり得ます。
抗生物質の乱用や、糖質の多い食生活によって腸内環境が悪化すると、腸内でカンジダ菌が異常増殖し、リーキーガットや、原因不明の疲労感、甘いものへの渇望といった不調を引き起こすことがあります。
【体内のカビ対策】
・糖質を控える:砂糖や精製された炭水化物は、カンジダ菌の大好物です。
・抗真菌作用のある食品を摂る:ニンニク、オレガノ、ココナッツオイル、シナモンなどには、カンジダ菌の増殖を抑える働きがあると言われています。
・プロバイオティクスを摂る:善玉菌を増やし、腸内フローラのバランスを整えることが、最大の予防策です。
◆治療家としての視点
原因不明のアレルギーや、慢性的な不調に悩む患者さんのお話を聞くと、住環境にカビの問題を抱えているケースが、驚くほど多く見受けられます。
どんなに優れた治療を施しても、毎日カビ毒を吸い込み続けていては、体は一向に良くなりません。
まずは、あなたの家の中を、隅々まで見渡してみてください。
目に見えない脅威から、あなたと、あなたの大切な家族の健康を守るための戦いは、日々の換気と掃除という、地道な習慣から始まるのです。
IV. 賢く医療と付き合う 〜 他人任せにしない体づくり
私たちは、体のどこかに不調を感じると、すぐに病院に行き、医師の診断を仰ぎ、薬を処方してもらうのが当たり前だと思っています。
もちろん、現代の西洋医学が、多くの命を救い、私たちの健康に大きく貢献してきたことは、紛れもない事実です。事故による大怪我や、急性の感染症など、緊急性を要する場面において、その恩恵は計り知れません。
しかし、その一方で、現代西洋医学にも限界がある、ということを、私たちは冷静に認識しておく必要があります。
特に、本書で繰り返し取り上げてきたような、「病気」と診断される手前の「未病」の状態や、原因不明の「慢性的な不調」に対して、西洋医学は、必ずしも最善の答えを提示してくれるわけではありません。
「検査では、特に異常ありませんね」
「ストレスが原因でしょう。少し休んでください」
そう言われて、対症療法としての薬を渡されるだけで、根本的な解決に至らず、途方に暮れた経験を持つ方も、少なくないのではないでしょうか。
この章では、現代西洋医学を正しく理解し、その恩恵を最大限に受けつつも、それに依存しすぎることなく、自分自身の健康の「主治医」になるための、賢い医療との付き合い方について、考えていきたいと思います。
カラダ適正化 42. 安易な薬に頼らない
〜 その一錠が、根本解決を遠ざけているかもしれない
頭が痛いから、頭痛薬。
胃がムカムカするから、胃薬。
熱が出たから、解熱剤。
風邪をひいたから、抗生物質。
私たちは、まるで自動販売機でジュースを買うかのように、手軽に薬を使いすぎてはいないでしょうか。
その、何気なく口にしている一錠が、実は、あなたの体の自然な治癒力を妨げ、根本的な問題解決を、かえって遠ざけている可能性があるとしたら…?
治療家として、また、健康を深く探求する者として、私は、「化学合成された薬は、できる限り体に入れたくない」と考えています。もちろん、命に関わる緊急時には、薬は必要不可欠です。しかし、日常的な不調に対して、安易に薬に頼ることには、いくつかの大きなリスクが伴います。
◆薬がもたらす、3つの健康リスク
【リスク1】「対症療法」であり、「根本治療」ではない
西洋薬の多くは、今出ている症状を、一時的に抑え込むための「対症療法」です。
頭痛薬は、痛みの原因を取り除くのではなく、痛みを感じる神経を麻痺させているだけ。
解熱剤は、ウイルスと戦うために体が発している「熱」という正常な免疫反応を、無理やり下げているだけ。
症状は楽になるかもしれませんが、その裏に隠れている根本的な原因(生活習慣の乱れ、栄養不足、体の歪みなど)は、何一つ解決されていません。
むしろ、薬によって症状がマスクされることで、体からの重要なサインを見逃し、根本原因を放置してしまう危険性すらあるのです。
【リスク2】「副作用」という、避けられない代償
薬は、体にとっては「異物」です。
目的の場所に届いて効果を発揮すれば「主作用」となりますが、それ以外の場所に作用すれば、すべて「副作用」となります。
胃薬を飲んだら便秘になったり、血圧の薬を飲んだらめまいがしたり。一つの症状を抑えるために、新たな不調を生み出してしまう。これは、薬である以上、避けられない宿命です。
【リスク3】「解毒臓器」である、肝臓への負担
体内に入った薬は、最終的に、肝臓で解毒・分解されます。
つまり、薬を飲めば飲むほど、肝臓は休みなく働き続け、疲弊していくのです。
ひどい場合には、「薬物性肝障害」という、薬が原因の肝臓の病気を引き起こすことさえあります。
◆特に注意したい「抗生物質」の乱用
風邪をひいて病院に行くと、決まって処方される「抗生物質」。
しかし、風邪の原因のほとんどは「ウイルス」であり、細菌を殺すための抗生物質は、そもそも効果がありません。
それどころか、抗生物質は、敵である悪玉菌だけでなく、私たちの健康を支えてくれている腸内の善玉菌まで、見境なく攻撃してしまいます。
その結果、腸内フローラのバランスが大きく崩れ、免疫力が低下したり、下痢になったり、さらには薬が効かない「耐性菌」を生み出してしまったりと、百害あって一利なし、と言っても過言ではないのです。
◆治療家としての視点
医師の中にも、「自分や家族には、極力薬を飲ませない」と公言している方は、少なくありません。それは、専門家であるほど、薬の本当の怖さを知っているからです。
もちろん、今、医師の指示で飲んでいる薬を、自己判断で勝手にやめるのは危険です。
まずは、担当の医師に、「薬を減らしていきたい、将来的にはやめたい」という、あなたの意志を、正直に伝えてみてください。
その上で、なぜその薬が必要なのか、他に選択肢はないのかを、一緒に考えてくれる医師こそが、あなたが本当に信頼すべきパートナーです。
薬は、あなたの体を「治してくれる」ものではありません。
あなたの体を治せるのは、あなた自身の体に備わった「自然治癒力」だけです。
薬は、その治癒力が追いつかない、緊急事態の時にだけ助けを借りる、最後の切り札。
そう考え、日頃から、薬に頼らなくても済む「強い体」を、食事や運動、生活習慣によってつくっていくこと。
それこそが、真の健康への、王道なのです。
カラダ適正化 43. サプリメント・ハーブ活用術
〜「お守り」としての栄養で、健康レベルを底上げする
「薬には頼りたくない。でも、食事だけでは、どうしても補いきれない栄養素がある…」
そんな時に、私たちの心強い味方となってくれるのが、「サプリメント」や「ハーブ(薬草)」です。
サプリメントやハーブは、薬のように、特定の症状を無理やり抑え込むものではありません。
私たちの体に、本来必要な「栄養素」や、植物が持つ「癒しの力」を補給することで、体全体の機能を底上げし、自然治癒力を高める手助けをしてくれる、いわば「お守り」のような存在です。
しかし、その「お守り」も、正しく選んで、正しく使わなければ、効果がないどころか、かえって体に害をなすことさえあります。
◆サプリメント選びの3つの鉄則
【鉄則1】やみくもに飲まない。まずは「自分の不足」を知る
テレビや雑誌で「○○が体にいい!」と紹介されているからといって、安易に飛びつくのはやめましょう。
大切なのは、第3部の冒頭でお話ししたような「栄養分析プログラム」などによって、今の自分の体に、本当に何が足りていないのかを、客観的に把握することです。
不足している栄養素を、ピンポイントで補う。それが、最も賢く、最も効果的なサプリメントの活用法です。
【鉄則2】「安かろう悪かろう」を肝に銘じる
サプリメントの品質は、価格に正直に比例します。
安価なサプリメントは、
・栄養素の含有量が少ない
・体に吸収されにくい、質の低い原材料を使っている
・添加物(賦形剤、着色料、甘味料など)が多く含まれている
といった問題を抱えていることが少なくありません。
多少値段は高くても、信頼できるメーカーの、医療機関で扱われているような、高品質なものを選ぶことを、強くお勧めします。
【鉄則3】基本は「食事」。サプリはあくまで「補助」
サプリメントは、魔法の薬ではありません。
日々の食生活が乱れたままで、サプリメントだけを飲んでも、その効果は限定的です。
栄養バランスの取れた、質の良い食事を摂ること。これが揺るぎない「土台」です。サプリメントは、その土台の上に、どうしても不足してしまう部分を補うための、「補助的な柱」であると理解してください。
◆治療家としてお勧めする「基本のサプリメント」
何から始めればいいかわからない、という方は、現代人に不足しがちな、以下の基本的な栄養素から補うことをお勧めします。
・マルチビタミン・ミネラル:全ての代謝の潤滑油となる、最も基本的なサプリメント。まずはここから始めましょう。
・ビタミンD:日光を浴びることで生成されるビタミンですが、現代人の多くが不足しています。免疫機能の維持や、骨の健康、メンタルの安定に不可欠です。
・オメガ3系脂肪酸(フィッシュオイル):体内の炎症を抑え、血液をサラサラにし、脳の働きをサポートする必須脂肪酸。魚を食べる習慣が少ない方は、積極的に補いましょう。
・マグネシウム:ストレスで大量に消費されるミネラル。「天然の精神安定剤」とも呼ばれ、筋肉の弛緩や、睡眠の質の向上に役立ちます。
◆ハーブ(薬草)の力を借りる
ハーブは、何千年もの昔から、世界中の伝統医学で「薬」として用いられてきた、植物の力です。漢方や、インドのアーユルヴェーダも、このハーブの力を体系化したものと言えます。
病気になってから飲む、というよりも、日々の健康レベルを底上げし、「未病(病気になる手前の不調)」の段階で体を整えるために、サプリメントと同じような感覚で、ハーブティーなどを取り入れるのも素晴らしい習慣です。
・リラックスしたい時:カモミール、ラベンダー、パッションフラワー
・消化を助けたい時:ペパーミント、ジンジャー
・免疫力を高めたい時:エキナセア、エルダーフラワー
◆治療家としての視点
私は、漢方やアーユルヴェーダで使われる複数のハーブが配合された、マルチサプリメントを日常的に摂取しています。朝鮮人参やアシュワガンダといったハーブは、ストレスへの抵抗力を高め、体のエネルギー産生を助ける「アダプトゲン」として知られ、私の日々のパフォーマンスを支える、力強い味方となってくれています。
ただし、ハーブの中には、薬と同じように強い作用を持つものもあります。妊娠中の方や、持病のある方、薬を服用中の方は、必ず専門家(医師や薬剤師、専門のハーバリストなど)に相談の上で、使用するようにしてください。
薬に頼る前に、まずは自然界に存在する、優しくも力強い「お守り」の力を借りてみる。
その賢い選択が、あなたの自己治癒力を、最大限に引き出してくれるはずです。
カラダ適正化 44. アーユルヴェーダ
〜 5000年の知恵が教える、自分だけの「健康の法則」
「カラダ適正化」とは、自分にとっての「健康の正解」を見つけていく旅である、と私は考えています。
その旅路において、非常に強力な羅針盤となってくれるのが、インド・スリランカで5000年以上も前から受け継がれてきた、世界最古の伝統医学「アーユルヴェーダ」です。
アーユルヴェーダは、サンスクリット語で「生命(アーユル)」と「科学・知恵(ヴェーダ)」を組み合わせた言葉で、「生命の科学」と訳されます。
病気の治療だけでなく、病気にならないための予防、そして、より良く、幸福に生きていくための、総合的なライフサイエンスなのです。
◆あなたは何タイプ?「ドーシャ」という体質論
アーユルヴェーダの最大の特徴は、「一人ひとりの体質は、生まれながらに違う」という考え方を、全ての基本としている点です。
アーユルヴェーダでは、自然界のすべてのものは「空・風・火・水・地」という5つの元素から構成されると考えます。そして、私たちの体内にも、この元素のエネルギーが存在し、その組み合わせによって、「ヴァータ(風・空)」「ピッタ(火・水)」「カパ(水・地)」という、3つの生命エネルギー「ドーシャ」がつくられる、としています。
私たちは、この3つのドーシャを全て持っていますが、そのバランスは、生まれながらに一人ひとり異なり、それが、その人の体質や気質を決定づけているのです。
・ヴァータ体質:風のように、軽やかで、変化しやすい。創造的だが、冷えやすく、乾燥しがち。
・ピッタ体質:火のように、情熱的で、知的。リーダータイプだが、イライラしやすく、体に熱がこもりやすい。
・カパ体質:水や地のように、穏やかで、安定している。愛情深いが、物事を溜め込みやすく、むくみやすい。
アーユルヴェーダでは、この生まれ持ったドーシャのバランスが崩れた時に、「不調」や「病気」が起こると考えます。
したがって、その治療法も、画一的なものではありません。
専門家が、その人のドーシャのバランスを診断し、乱れたドーシャを鎮め、本来のバランスを取り戻すための、完全オーダーメイドの処方(食事法、ハーブ、オイルマッサージなど)を施すのです。
◆アーユルヴェーダの主なアプローチ
・食事療法:ドーシャのバランスを整えるための、食材の選び方や調理法。
・ハーブ療法:何千種類もの薬草の中から、体質に合わせて処方される。
・オイルマッサージ(アビヤンガ):体質に合った温かいハーブオイルを、全身に浸透させ、体内の毒素を排出する。
・浄化療法(パンチャカルマ):体内に溜まった毒素を、徹底的に排出するための、専門的なデトックスプログラム。
・ヨガ・瞑想:心のドーシャを整え、精神的なバランスを取り戻す。
◆治療家としての視点
私は、治療家として、そして健康の探求者として、このアーユルヴェーダの奥深さに魅了され、年に一度は、本場スリランカに滞在し、専門施設で集中的なトリートメントを受けています。
そこでは、医師の診断のもと、毎日2〜3時間の施術を受け、体質に合った食事が提供され、ヨガや瞑想を行う。そんな、完全にアーユルヴェーダ漬けの日々を過ごします。
この期間は、私にとって、1年間の心と体の汚れを、根こそぎリセットするための、最も重要な時間となっています。施術を終えた後の、体が生まれ変わったかのような軽さと、頭のクリアさは、他では決して味わうことのできない、格別なものです。
日本でも、アーユルヴェーダの施術を受けられるサロンは増えてきました。しかし、そのクオリティは様々です。もし興味を持たれたなら、事前にしっかりと情報を集め、本場で学んだ、信頼できる施術者を見つけることをお勧めします。
アーユルヴェーダの知恵は、私たちに教えてくれます。
健康に対する答えは、一つではない。大切なのは、外にある流行りの健康法に振り回されることではなく、自分自身の内なる声に耳を澄まし、自分だけの「取扱説明書」を知ることなのだと。
カラダ適正化 45. 整体・マッサージ・ストレッチ
〜 プロの手を借りて、体の「定期メンテナンス」を
車が、定期的な点検やオイル交換を必要とするように、私たちの体もまた、日々のセルフケアだけでは取りきれない歪みや疲労をリセットするための、プロによる「定期メンテナンス」を必要としています。
私は治療家として、患者さんの体を治す立場にありますが、同時に、自分自身の体を最高の状態に保つために、週に数回は、信頼する他の専門家の施術を受けることを、欠かさないようにしています。
それは、単に「気持ちがいいから」という理由だけではありません。
定期的な体のメンテナンスが、日々のパフォーマンスを維持・向上させ、将来的な怪我や病気を予防するための、最も確実で、最も効果的な投資であることを、誰よりも知っているからです。
世の中には、数多くの施術法がありますが、ここでは、私が実際に受け、その効果を実感しているものをいくつかご紹介します。
◆目的別・おすすめボディメンテナンス
【体の歪みを根本から整えたいなら】
・カイロプラクティック:背骨や骨盤の歪みを、手技によってミリ単位で矯正し、神経の圧迫を取り除くことで、体の機能を正常化させる。自然治癒力を最大限に引き出すことを目的とします。(※日本では国家資格ではないため、海外(特にアメリカ)の国家資格を持つ、信頼できる施術者を選ぶことが重要です。
【深層部の筋肉のコリをほぐしたいなら】
・ドクターストレッチ:専門のトレーナーが、一人では伸ばしきれない深層部の筋肉(インナーマッスル)を、マンツーマンで伸ばしてくれる。柔軟性を高め、可動域を広げることで、疲れにくい、しなやかな体をつくります。
【むくみを取り、デトックスしたいなら】
・リンパマッサージ:全身に張り巡らされたリンパ管の流れを、優しい圧で促進し、体内に溜まった老廃物や余分な水分の排出を促す。免疫力の向上や、セルライトの改善にも効果が期待できます。
【究極のリラックスと、脳の疲労回復を求めるなら】
・頭蓋仙骨療法(クラニオセイクラル・セラピー):ごくごく軽いタッチで、頭蓋骨や仙骨に触れ、脳と脊髄を循環する「脳脊髄液」の流れを整える。自律神経のバランスを深く調整し、心身を究極のリラックス状態へと導きます。
【足の裏から、全身の不調を改善したいなら】
・若石健康法(台湾式リフレクソロジー):足の裏にある、全身の臓器や器官に対応した「反射区」を、強く刺激することで、対応する部位の血行を促進し、機能を活性化させる。痛みは伴いますが、施術後のスッキリ感は格別です。
◆自宅でできる、セルフメンテナンス
プロの施術と合わせて、日々のセルフケアを取り入れることで、メンテナンスの効果はさらに高まります。
・フォームローラー、ストレッチポール:筒状のツールの上に乗り、自重をかけて体を動かすことで、筋肉を包む「筋膜」の癒着を剥がし(筋膜リリース)、筋肉のコリや張りを解消することができます。一家に一本、備えておくことをお勧めします。
◆治療家としての視点
どの施術法を選ぶか、ということ以上に重要なのが、「誰にやってもらうか」ということです。
私たちの体は、非常に繊細です。未熟な施術者の手にかかると、かえって体を痛めてしまう危険性さえあります。
口コミやウェブサイトの情報を鵜呑みにせず、
・施術者が、どのような資格を持っているか
・解剖学や生理学の、確かな知識に基づいているか
・あなたの話を、親身になって聞いてくれるか
といった点を、冷静に見極めてください。
一度、心から信頼できる「体のパートナー」を見つけることができれば、それは、あなたの人生100年時代を、健康に、そして快適に走り抜くための、何物にも代えがたい財産となるはずです。
おわりに
「今の自分にできること」から、始めよう
ここまで、本当に長い道のりでしたね。
この本を、最後まで読み通してくださったことに、心から感謝します。ありがとうございます。
45項目にも及ぶ「カラダ適正化」の実践法を読んで、「こんなにたくさん、全部やるのはとても無理だ…」と、少し圧倒されてしまったかもしれません。
もしそう感じたとしても、どうか、自分を責めないでください。
それは、ごく自然な反応です。
かつての私も、そうでしたから。
治療家として、健康に関する情報を学べば学ぶほど、そのあまりの奥深さと、やるべきことの多さに、途方に暮れそうになった時期がありました。
しかし、ある時、私はふと、こう開き直ることができたのです。
「完璧じゃなくていい。今の自分にできることから、一つずつ、面白そうなことから、試していけばいいじゃないか」と。
その瞬間から、私の体は、そして人生は、変わり始めました。
少し勇気を出して、オーガニックの野菜を買ってみる。
友人から勧められたサプリメントを、ネットで注文してみる。
夜、寝る前のスマホの時間を、ストレッチの時間に変えてみる。
一つひとつの行動は、本当に些細なことです。
しかし、その小さな一歩を積み重ねるうちに、私の体は、目に見えて健康になり、日々のパフォーマンスも、嘘のように向上していきました。
何もやらなければ、結果はゼロのままです。
しかし、たった一つでも、行動を変えれば、そこから未来は、確実に変わり始めるのです。
この本でお伝えしたかったことは、突き詰めれば、非常にシンプルです。
それは、あなたの体には、あなたを健康にするための、素晴らしい力が、もともと備わっている、ということです。
その力を邪魔している、いくつかの「悪い習慣」を取り除き、
その力を最大限に引き出すための、いくつかの「良い習慣」を加えてあげる。
カラダ適正化とは、結局のところ、その繰り返しに他なりません。
この本を閉じた後、あなたが最初に踏み出す「小さな一歩」として、私は3つのことを提案したいと思います。
【最初の一歩①】食習慣を、一つだけ変えてみる
まずは、外食やコンビニ食を、週に1回でもいいから減らしてみましょう。
それだけで、本書で有害性を指摘した、砂糖、悪い油、グルテン、食品添加物を、無意識のうちに大量摂取してしまうリスクを、大きく減らすことができます。
その代わりに、天然の魚と、山盛りの野菜、そして納豆や味噌汁といった発酵食品を、食卓に乗せてみてください。
ランチ後の猛烈な眠気や、夕方の疲労感が、少しずつ軽くなっていくのを感じられるはずです。
【最初の一歩②】運動習慣を、1日15分だけつくってみる
まずは、1日5000歩を目安に、いつもより少しだけ多く歩くことから始めてみましょう。
一駅手前で降りて歩く。エスカレーターを階段に変える。それだけで、十分な運動になります。
体が軽くなるだけでなく、気分も前向きになるのを、きっと実感できるでしょう。
【最初の一’歩③】生体検査を、一つだけでも受けてみる
もし、あなたが本気で自分を変えたいと願うなら、この一歩が、最も効果的かもしれません。
遺伝子検査でも、遅延型フードアレルギー検査でも、オリゴスキャンでも、何でも構いません。
自分の体の状態を、客観的な「数値」として知ることで、この本に書かれていることへの理解は、何倍にも深まるはずです。そして、その深い理解が、行動を継続するための、最も強力なモチベーションとなってくれるのです。
最後に
「はじめに」で、私は、父と母のがん闘病の経験をお話ししました。
父は、がんを宣告された日、死を覚悟し、私たち家族に遺書まで書きました。
しかし、幸いにも手術が成功し、今も元気に暮らしてくれている父が、先日、ポツリとこう漏らしたのです。
「本当は、もっと生きたい。生きて、みんなと、また旅行にでも行きたいな」
「自分は好きなものを、好きなだけ食べて死ぬからいい」
「そこまでして、長生きしたくはない」
私も、かつてはそう嘯(うそぶ)いていた時期がありました。
しかし、いざ、自分や、かけがえのない家族が、死の淵に立たされた時、心の底から湧き上がってくるのは、「もっと生きたい」という、純粋で、切実な願いではないでしょうか。
「病気になってから、病院に行けばいい」
「忙しくて、健康にお金や時間をかけていられない」
その気持ちは、痛いほどわかります。
しかし、病気になってからでは、本当に、遅いのです。
だからこそ、今、この瞬間から、あなたの健康に、意識を向けてほしい。
予防という、最高の医療を、あなた自身の手で、始めてほしいのです。
結局のところ、あなたの体を、あなたの人生を守れるのは、あなたしかいません。
この本が、そのための、信頼できる「地図」となり、「羅針盤」となることができたなら、著者として、そして一人の治療家として、これ以上の喜びはありません。
ぜひ、この本を何度も読み返し、あなたの「お守り」として、そばに置いてください。
そして、あなただけの「カラ-ダ適正化」の道を見つけ出し、
仕事でも、家庭でも、最高のパフォーマンスを発揮し、
あなたと、あなたの大切な人のために、心から笑える、自由なカラダで、元気で長生きしていきましょう。
あなたと、あなたのご家族の、輝ける健康と、幸せな未来を、心より祈っています。
新保直人
